「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」に勇気をもらった
タイトルにもある通り、野口憲一さん著の「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」を読んだ。最初に感想を言うと「めちゃわかりやすく面白い」。すべての生産者さんに手にとってほしい1冊だ。
いち農家のレンコンが1本5000円で取引されるまでの変遷が紹介されているのだが、これがとても面白かった。私が常日頃感じていたことが、言語化されていたことも、読み進めるスピードを早めた。
やり甲斐搾取が農業を潰す
まず、目次にもなっているこの言葉が私の心を捉えた。
「やり甲斐搾取」。これは農業だけの世界で起こっているわけではない。
社会性のある取り組みをしている人なら感じたことがあるかもしれないモヤモヤ。
「いいことをしているんだから無料で手伝ってもらって当然だろう」「イベントを開催するが交通費は出さなくてもいいだろう。そもそも儲からないし」「地方移住は年収はガクッと下がるけど、精神的には豊かになるよね」「儲からなくても社会のためになるのなら仕方がないよね」こういった考えがあることで成り立つ活動は山ほどある。世の中には、金銭的な対価は得られないけど、誰かがやらなくちゃいけないことが沢山あるから。
でも、自分自身のこれまでの活動からの反省も含めてこう思う、そんな考えに甘えていてはいけない、と。それが私が仕事を進める上で意識していること。
「お金」を稼ぐことが地方を変えると感じたHoliday時代
自分自身日本中に足を運び、たくさんの人に話を聞いてきた。Uターンした若者や、その土地で長く商売を続ける人、儲けてる人もいるし厳しいと話してくれる人もいた。私は、当時、「会社として取り組まなければいけない課題」と自身が現場で感じる生の課題の間で苦しんでいた。
私が出張に行けるのは、会社の事業があるから。ましてや大学時代に友人と創業したサービスである。思い入れもとっても強い。そして、Holidayがあれば、旅の仕方が変わると信じて取り組みを続けていた。
しかし、私が実際にお会いし、人々から聞く課題は、Holidayだけで解決できるような話ではなかった。自分の仕事が誰かの役に立っている実感はあった。でも目の前の人の課題を本当に解決しているのか、と思った。そして、地方にはびこる多くの問題の多くは、お金があれば解決できるんじゃないかと思うようになった。お金があれば人を雇うことができる、お金があれば設備投資ができる、お金があれば、視察に行ける。
地方を変えるのは「お金」だ!と。その時は自分がまさか東京暮らしを手放して、地方で生活するようになるなんて想像もしていなかったのだが、この時から私はこのての問題があると本やらネットやらで情報収集をしていた。(どうすれば解決できるのか、具体的な考えは持っていなかったけれど)
*ちなみに、大学時代に友人たちと始めたHolidayというWEBサービスはこちら。このサービスを使った情報発信WSを全国で100回以上行い、その全ての企画・運営に関わったことから沢山の地方のいいところ・問題点をこの目で見てきた
https://haveagood.holiday
仕事になった生産者支援
転機は突然訪れた。結婚で東京から熊本に移住することが決まったのだ。
それまでも、出張が多く東京に常にいるわけではなかったから、最初は移住についてあまり深く考えていなかった。「まあ飛行機1本だしな」くらいに考えていた。
仕事も東京のものを「リモートワーク」で続けていた。そのことについて、取材を受けたりもしたが個人的にリモートワークというのはいくつかの条件が揃って初めて機能するものであり、その当時の私の環境ではなかなか難しいものだった。「いま東京にいれば・・・」「なぜ私はここに住んでいるんだっけ」とか超ポジティブと夫から日々言われる私も枕を濡らした日々だった。
「これはまずい!このままじゃダメだ!」と社長(友達でもある)ともたくさん話した上で、「せっかくだったら、ここでした出来ない好きなことをしてみよう!」と今まで築き上げたものを全て捨てて、以前から自分が抱いていた課題に向き合ってみることにしたのだ。
WEBサービスを作っていたいわゆるITスタートアップ系から、生産者支援の道を歩き始める。初心者である。しかも実績もない。今思えばよおやった自分。そして言ってんの曇りもない笑顔で応援してくれた家族には感謝しかない。
日本の食材を世界へ、は簡単ではない
今、お手伝いさせていただいているのは、もともと知り合いだった有明海の海苔漁師さん3名だ。海苔に特別関心があるわけでは正直なかったが、自分の身の回りに海苔について関心の高い人たちがたまたまたくさんいた。 そして、本当に本当に縁が重なり、「海苔の販売」を手伝わせてもらうことになったのだ。
海苔というものはとても面白い。産地によって、養育方法によって、加工方法によって味が全然違う。きちんと勉強すると、その違いは海苔を食べただけでもわかるようになる。そして、海苔漁師さんたちのあつい想いには胸があつくなる。口下手だけれど、すごく素敵な考えを持って仕事をしているのだ。かっこいいなと思う。
そんなかっこいい3人の漁師さんの海苔を海外で売っている。
なぜ、海外で売っているのか、色々な理由があるがとにかく海外で売っている。
ニューヨークで、オーストラリアで、ロンドンで、ベルギーで、台湾で、有明漁師海苔が使われている。1年足らずでここまで来れたのはみんなの頑張りがあったからだと思う。
これだけ聞くと「めちゃくちゃ成功してるじゃん」と思われるかもしれないがことはそんなに簡単ではない。海外に営業に行くのはめちゃくちゃ経費がかかる。しかも海苔含め、1枚あたりの金額は大きくないので、量を売って初めて利益が見えるのだ。価格が5分の1の中国産が出回っている国々で販路を切り開いて行くのはそう簡単ではないと実感している。
これをやれば即成功というような方程式などない
本でもあったように、これさえすればすぐに成功するといった特効薬は存在しない。私も野口さんがこれまで行ってきたような取り組みを行ってきて、「絶対行ける」と思っていた商談がまとまらなかったり、いろいろある。少しずつ、海外の取引先は増えてきたとはいえまだまだこれからだ。そういった意味でも諦めずに前かがみに既存の枠にとらわれない取り組みを行う野口さんの姿勢に感銘を受けた、勇気をもらった!
今回は、自分自身が行ってきた(いる)取り組みについての紹介は割愛するが
この本は、すべての生産者こそが手にとるべきものだと思う。
伝統を創るための情熱が湧いてくると思うから。
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