沢渡あまねさんの「推される部署になろう」を読んでイケてない情シスを何とかしようとした話
はじめに
沢渡あまねさんの最新作「推される部署になろう」を読みました。
この本、全国の情シスをはじめとした管理部門、サポート部門、企画部門のマネージャー全員に読んで欲しいと思います。そしてこの本の中の一つでもいいから、実践して欲しいのです。
IT部門をはじめとしたバックオフィス部門にとって「インナーブランディング(組織の中のブランディング)」は、今後ますます重要になります。
しかしその重要性に気付かず、閉鎖的で、情報発信しない組織になってしまっている部署は、経営層や事業部門からこう思われてしまうでしょう。
「情シスは何考えてるかわからんw」
「あの部署は言ってることに一貫性がない」
「あの部署の人とは一緒に仕事したくない」
「一緒に仕事しても上手くいく気がしない」
本当にそれで良いのでしょうか?
本書「推される部署になろう」は、単に人気がある部署になろうという意味ではなく、組織のマネージャのための「組織変革の実践本」なのです。
著者である沢渡あまねさんはこう述べています。
部署が持つ本来価値や存在意義を言語化し、社内に対して情報公開や情報発信をする事が、組織を活性化し最終的には会社全体の生産性向上や組織変革につながる
▶お前の本部はまるで伏魔殿だ
今の会社に転職した5年前、当時の上司が入社したばかりの僕に耳打ちしてきました。
「俺たち情シス含めた本社部門は、事業部からこう呼ばれているんだ。
本社部門はまるで伏魔殿(ふくまでん)だ
正直ショックでした。
当時、僕はIT企業から事業会社のIT部門に転職したばかり。IT部門は、全社のシステムの企画から運用を一手に引き受けている花形部署だと思っていたからです。
ところが実際は「何をしているのか分からない、イケてない部署」だったとは…
▶入社1週間後の決意表明
入社してしばらくは、当然ヒマなのでメンバーと一緒に事業部門のキーマンに挨拶回りをしました。
相手の名前と顔を忘れまいと、社内なのに名刺交換をして「何か困り事があったら相談してくださいね」と変なアピールをしたことを思い出しました。「変な奴が来たなあ」と思われながらもとにかく顔を売りました。
そして1週間後、まだ会社の業務も課題も分からないままの状態で、課長と部長と本部長に対して「自分がやりたいこと」を宣言したのです。
そこには「この部署を何とかしないと」という危機感があったのです。
もちろん実施内容にも言及し、守りのITでやるべき事と、攻めのITでやるべき内容を時系列に図式化して説明しました。
流石に「組織の課題や雰囲気を変ええてみせる」という事までは書けませんでしたが、上司からは組織を変えてほしいという期待を感じたことも事実です。
(同時に「お手並み拝見」という厳しめの視線を浴びたことも事実です!)
▶信頼残高マイナスからの出発
「このままではダメだ。自部門の信頼残高を上げないと、会社や部門に対して何も貢献できない」
この感情は入社して日が経つにつれて大きくなり、さらに現実的な課題となってしまいました
具体的に「マイナスの信頼残高」とはどういう状態だったのでしょうか?
▷マインド:SDTの蔓延
S(説教):とにかく説教が多く、メンバーの横に立ってマネージャが延々と持論を展開する場面をよく見かけました。
D(ダメ出し):とにかくまずダメ出しから始まり、褒めない文化を感じました。
T(他責):「部門の人間にやらされている」「上から降ってきたことだから仕方なくやっている」。とにかく受け身で自分の意志や部門の方針はいつの間にかどこかに置き去りにされているようでした。
▷行動:3ナシ
発信ナシ
情報発信をしていませんでした。掲示板と文書管理だけの昭和のようなイントラネットで通達だけが流されていたました。
社員に向かって「会社をこうしていこう!」とか「こんなことがあったよ!すごいね!」という社内への広報活動は月1回の「かわら版」という手作りの社内報だけでした。アイデアなし
本社部門は、会社全体の企画機能であるにもかかわらず、アイデア出しやブレストがとにかく苦手な印象を受けました。
その理由はすぐに分かりました。上位下達・上司絶対のヒエラルキー構造」がそこにあったからです。
会議の場で何か言おうものなら「お前に何がわかる」「俺のやり方に従え」言葉には発しないが、そんな同調圧力をメンバーは常に感じていたに違いありません。共有ナシ/共創ナシ
「One Team」という言葉がありますが、当時は「No Team」。言い換えると「情報共有を全くしない一人親方状態」で仕事をしていました。
毎朝儀式のように行られる朝礼はあるものの、実際のタスクは共有されておらず、誰が何をいつまでにやらないといけないかは把握されていません。
だから何かあると、当時のマネージャが火が付いたように騒ぎ出して「どうなってる?誰がやってる?なんでやってないの?」いつもどこかでこんな騒動が沸き起っていたのです。
▶「推される部署」になるために
▷人事とコラボ : 社内FA制度
IT部門のメンバーのマインド面を変えるために色々やりましたが、残念ながら昔から染みついた考え方や思考は半年や1年では変わることはありませんでした。
そこで考えたのが「新メンバーの受け入れ」と「外部との交流」です。
中途採用で新たにメンバーを迎え入れた事をきっかけに、部署の雰囲気が良い方向に変わることがあるります。
新メンバーの明るいキャラクターを利用して職場の雰囲気を良い方向に持っていくのが狙いです。
その中で、人事とコラボした「社内FA制度」では、他部門の若手人材を受け入れて、その新しいメンバーと一緒に職場の雰囲気を変えていく取り組みに着手しました。
この「社内FA制度」の取り組み、最初から計画していたことではなく、雑談から生まれたアイデアがたまたま人事側の思惑と合致したことがきっかけで実現したのです。
やりたいことや想いを普段から発信することは本当に大事なことだと思った出来事でした。
▷外部交流 : 越境学習を取り入れた
また「外部企業との交流」を積極的に行い「うちの会社の常識は、外の世界では非常識」を肌で感じてもらいました。
具体的には「システムの内製化からの脱却」を図り、「システム開発の外注化、サービス利用」へと方向転換をしたのです。
ITサービス企業と接点を持ち最先端のSaaSサービスの紹介を受けたり、システム開発会社と一緒に仕事を進めるやり方に変えたことで情シスらしく「越境思考」を身につけていくことができました。
現実は色々な課題が噴出しましたが💦
▷3ナシ行動を変えよう!
「発信ナシ」について、まず最初に着手したのは昭和のイントラネットのリニューアルでした。
ShareaPointOnlineを使いとにかく「情報発信をしたくなる・社員が見たくなる社内ポータル」に仕立てました。
最初は発信するニュースが少なかったのですが、広報機能を立ち上げ、情報発信量を増やすすことで確実に「顔が見えない部署」から脱却するきっかけになったと思います。
情報を発信することで「情報発信するところに人は集まり」「顔が見える部署になる」ようになっていきました。
「社内広報」や「情報発信」は、本書にも書かれている通り、推される部署になるための重要なキーワードなのです。
「アイデアなし」については、とにかくIT部門内では役職や在籍年数関係なくフラットに意見を言える雰囲気作りを心掛けました。
具体的には「SCRUM」というアジャイル開発手法を使って情シスで実験プロジェクトをやってみることで、メンバーが自ら考え、アイデアを出し、それを議論するという行動を経験してもらったのです。
あくまで「SCRUM」は手法であり、本当の狙いは「推される部署」に必要な「良い対話ができる人たちになる」ための経験を積んでもらう事こそが大切なことなのです。
「共有ナシ」については、情シスメンバー全員に対して「我々のお客様は誰?」ということを意識させることからスタートしました。
「事業部の人たちはお客様なので、ITが詳しくないことは当然。自分たちが情報共有できていないために、問い合わせを放置したり、人によって対応が違うのは自分たちの存在価値を下げている。だから情報共有は大事なんだ」と言い続けました。
具体的には、Backlogというツールを導入し情シスが受けた問い合わせや依頼事項、クレームを登録して毎日メンバーで対応状況を確認するよう習慣付けたのです。
この情報共有と助け合い(ヘルプシーキング)は、僕が一番こだわってやり続けたことで、その後、Teamsを使った情報共有、さらにはヘルプデスクチームの立ち上げへと発展しています。
おわりに
沢渡あまねさんの「推される部署」になろうには、「どうせ俺らは変われないよ」という組織に蔓延する自虐的でネガティブな思考を払拭するための具体的な手法と事例が詰め込まれています。
一言で表すと「組織変革のためのブランドマネジメントの教科書」です。
この言葉でピンとこない人は、本書の第5章から読んで欲しいです。インナーブランディングを成功させた企業や部門の事例が紹介されているので、是非参考にして下さい!
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