みるなよ、ぜったいみるなよ!:『ミッドサマー』感想
公開当初、SNSで話題になった『ミッドサマー』。
みなさん、見たことありますか?とんでもなかったですよね。
私は元々、ホラーが本当に苦手で避けてきたのですが。
お化けとかが出てくるわけではないと聞き、なら見てみようかと鑑賞したものの。
『ミッドサマー』を見た人生と見ていない人生を選べるなら、見ていない人生のほうがいくぶん幸せだろうと思います。
それくらい、狂っていた。
とても素敵な作品だと思って涙まで流した『君たちはどう生きるか』の内容は悲しいくらい何も思い出せないのに、
『ミッドサマー』は作中の出来事を何となく覚えているし、場面なんかも悔しいほど鮮明に思い出すことができるのです。
さらに質の悪いことに『シャイニング』同様、映画としてはそれはもう素晴らしい作品でした。
単に「怖いよね?ほら!」と怖いものをいきなり見せられるのではなく、画面に映り込む小物が示唆する内容から悪いことをどんどん想像してしまって、恐怖感を増幅させられます。
なんとなく先が想像できるのに、それでいて毎回、想像を超えてくるようなことが起こる。
画面もあまりにも綺麗で色鮮やかで、そのちぐはぐさによって自分の感情すらもだんだん分からなくなり、狂気の世界に引き込まれていく感覚を味わうことになる。
また、私たちの感覚からすれば「狂っている」と感じてしまうことばかりが起こるのですが、なんだかんだ筋が通っていて、物語としては納得感もある。
そういう点からも、素直に良い映画だった、と感じました。
これがグロテスクなだけの映画だったら「いやぁ~最悪だったね!」で済む話なのですが、細部まで凝られた作品を見たという実感があるだけに後を引いて心に残ってしまっていて、それがよりトラウマの根を深くしている感じがします。
ここまで言われると、見ていない方も、ちょっと見たくなってきたんじゃないですか?
本当に見ないほうがいいですよ。
ミッドサマー、「悪いことが起こりそう」みたいな雰囲気はちゃんと出してくれるのですが、実際に悪いことが起こった際の映像としてのフォローというか、クッションが基本的にありません。
手で顔を覆う間も無く、しっかり見たくないシーンを見せてきます。
たいていの映画では直接映さず、カメラカットで「こんな酷いことが起こったんだろうな」みたいに匂わせるような場面も、絵としてしっかり作り込んでくる。
しかも舞台が「白夜」ですから、大抵の悪いことが起こるシーンはそれなりにちゃんと画面が明るいんですよ。
白昼にしっかり光を受けて細部まで映り込む、グロテスク。
すすめる気がないならなんでこんな記事を書いているのか、といえば、あれをついうっかり見てしまったひとと「やばかったよね」というのを分かち合いたいだけです。
間違っても、「あのシーンの意味はどう」とかそんな具体的な感想やら考察を話したいわけではない。
ちなみに、映画好きの友人におそるおそるミッドサマー、みた?と聞いてみたことがあります。
「みた!ヤバすぎて、周りに見た?って聞いて回ったよ」と。
見て!と勧めて回ったわけではないところが、ミソですね。