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[怪談]軍曹と一等兵
本日、連投で恐縮ですが、この日に予定していた原稿なので上げさせてください。
一等兵
「少尉どの。○○村では、竹槍の訓練に身を入れずに、旗を振っております」
少尉
「なんだ、旗というのは?」
一等兵
「白旗であります」
軍曹
「なんだと! 不謹慎にもほどがあるではないか!
キサマは、それを止めなかったのか!」
一等兵
「やめさせようとしたのですが、校長がこう言ったのであります。
キチクは、子どもが白旗を振って出て行くと攻撃しないと」
軍曹
「本土決戦に備えて少しでも時間を稼ぐというのが我らの務めだぞ。降伏などもってのほかだ!」
一等兵
「もちろん自分もわかっております。しかし、校長は続けて、こう云ったのです。
子どもに白旗を持たせますから、その後ろから突撃して下さいと」
軍曹
「…………」
一等兵
「少尉殿、どうすればよろしいでしょう?」
少尉
「白旗を掲げて攻撃するのは、戦争犯罪だ。もしそんな真似をすれば、後世まで非難され続けることになる。それに一度や二度、成功しても、その後は問答無用で攻撃されるだろう」
軍曹
「そ、そうだ! その校長の横っ面を張り飛ばして、白旗の訓練などすぐにやめさせろ。わか軍は、これまで通り戦う。さっさと行ってこい!」
少尉
「いや、待て。オレが行く。校長に聞きたいことがある。子どもが白旗を掲げれば攻撃しないという話をどこで聞いたのか。どれだけ広まっているのか、それを確かめる必要がある。さもないと、いくら禁止しても、やる者が後を絶たないだろう」
軍曹
「白い布をすべて焼き捨てさせますか?」
少尉
「そんなことが出来ると思うか?」
軍曹
「じゃあ、子どもをやりますか? 子どもなら簡単に学校に集められますよ」
*********
この後、うざいこと云ってます。ご縁のある方はご覧ください。
軍曹のモデルは、ナチスのアイヒマン。ハンナ・アーレントにいわせると、どこにでもいそうな気の小さそうなおじさん。しかし、徹底的に上司におもねる。その結果が悪魔もびっくりするような大量殺人。
一方、上等兵は一般大衆。賢くはないがバランス感覚はある。おかしいことがあれば、おかしいと思う。しかし、思うだけで権威に従う。
少尉は、ここでは中立に描きましたが、権力者。もし権力者が権力欲に取り憑かれると、全体主義に走ります。危機を煽って、非常時の特権を握り、危機を連続して煽ることで、その特権を永続化しようとする。
終わらないパンデミック、終わらない戦争、終わらない食糧危機、終わらないエネルギー不足、ひどくなる一方の環境、多発する病気…… 大多数の人にとっては受難ですが、そうでない立場もある。
それを誰かが計画的にやってると云えば、陰謀論。ホワイト・パワーがちゃんと助けてくれると考えるのも同じです。
ホロコーストを経験し、アイヒマン裁判を傍聴したハンナ・アーレントは、次のような意味のことを云ったそうです。
悪 魔などいない。人が自分で考えることをやめた時に悪を行うと。
アーレントによると、「処理」と「考えること」は別物。近現代のシステムは、多くの人に「処理」を求めた。「処理」は、マニュアルや前例や空気を読んで判断すること。権威の発言に盲従すること。
たいていの仕事では「処理」が求められます。決められた通りに動いてくれる部下が重宝され出世する。というか、考える者は、少しずつ浮き上がり、排除されかねません。
しかし、社会や政治の問題について、考えずに「処理」する人が多くなれば、それは破滅への道。
「軍曹」は、どこの世界にもいるんです。超優秀なはずのエリートの中にもいる。悲しいかな彼らは変わりません。アイヒマンなどどれだけ大勢の人の死に関わったのか。それでも変わらなかった。
まだしも期待出来るのは、「一等兵」の目覚め。
自分で考えて、おかしいと思った時に、「おかしい!」と云えるかどうか。自分はやらないと、踏みとどまれるかどうか。
一説によると、自分で考える人が二割いれば、社会は大きな犠牲を払わずに済むそうです……。
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軍曹
「じゃあ、○○減らしますか? ○○減らせば、今のやり方でも、まだまだやっていけますよ……」