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「四畳半神話体系」は瀑布。
ぼくは本を読むのが遅い。この間は一ヶ月もの間一冊の小説を読んでいた。世には1日に何冊もの本を読む強者もいるという。ぼくも根性と気合いを駆使して、心と体を無視すれば、脳の働きで、一日に一冊くらいならいけるだろう。昔はそんな風に読んでいたし、本はそうやって読みたいと思って読んでいた。だが、今は違う。味わって読みたい。味わいきりたいのだ。時間が掛かっても1日に2ページも読めなくてもいいと思っている。その世界をいかに潤沢に想像し、丁寧に体の底から感じ取り、満たされるか。そして、しんどくなった瞬間やめる。しんどくなりそうと思った瞬間やめる。あわやと思ったらやめる。何しろもったいないのだ、世界が、作者の思いが、主人公たちの生きている様が。もったいない。読むことに疲れながらなどもったいない。ゆっくりと知りたい。多くの作品に触れることよりも、一つの作品にのめり込みたい。そんな人生を送ろうと思っている。
そこで一ヶ月かかった、小説をお伝えしたい。
森見登美彦作 「四畳半神話大系」 である。
この作品は、すごい。水が流れていくかのような文章。言葉は古風なところもありながら、一切の引っ掛かりなしに流れていく。止めどない。読んでいてここまで気持ちの良いリズム、流れを作り、その上個性的。目が勝手に進むような文章なのです。読むという行為自体の面白さを体感できる作品であると思うのです。この作品の魅力、それは主人公の、自信があるようでないような、無いようであるような(きっと無い。)実に人間味のある性格、それでいてとても紳士でありたいとする毅然とした態度。そしてそれ取り巻く個性的で魅力的な人々、小津に明石さん、樋口師匠に羽貫さん。一人一人が強力な個性を放ちながらそれでいて、調和し、楽しそうに生きている(当人にとってそれはそうとは限らないのだが)。何だか笑みが口の端から漏れてくるような小説です。読んでいくのが少しもったいなく、それでも先が気になり、立て板に水のごとく文章は頭の中に流れていく。気持ちが良い。それに尽きるのです。物語にも文章にも一切の嫌な感情が芽生えず、清々しく紳士的であったのです。最高かっ!!
これをぼくは一ヶ月掛けてゆっくり読み、最高だったと断言しております。
今も森見さんの作品を読んでいるのですが、それはまた今度。
読んでくれて、ありがとう。
また。
とまお
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