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作詞講座 第四回 「五感」

小学校で作文指導をするとき「五感を意識して書きなさい」。これはよくやる指導方法。

たとえば運動会の作文。
そのとき、どんな音が聞こえた?だれかの声がきこえた?
地面を踏んだかんじはどんなだった?
温度はどうだった?体は熱かった?風は吹いてた?
匂いはしなかった?
終った後の水の味は?

五感の表現は、簡単にリアリティを出すいい方法だ。視覚は、まあ普通に表現されるけど、聴覚、嗅覚、触覚、そのあたりを歌詞に表現することで、よりいっそうリアリティが出る。

聴覚

小さな石鹸カタカタなった

<神田川 かぐや姫(作詞:喜多條忠)>

火玉が落ちてジュ

<線香花火 さだまさし>

街頭では学生たちがマイクを持って声を上げる

<N.S.P 歌は世につれ(作詞:天野滋)>

嗅覚

最後のキスはタバコのflavorがした
苦くてせつない香り

<First Love 宇多田ヒカル>

味覚

冷めたコーヒー口にした
苦く酸っぱい味がした

<とおくはなれて 高野寛>

触覚

だれも君の髪さわらせたくない

<キャンディ 原田真二(作詞:松本隆)>

どうです?「カタカタ」「ジュ」擬音で臨場感が出ませんか。香りや味を歌詞に入れると、視覚だけの表現より、具体性が増すのがわかると思う。
しかし、探してみると、視覚以外の五感を表現してる歌詞は、案外、少ない。すぐに思いつきますか?

五感表現は、作詞講座第二回でやった遠近法にもつながる話だ。五感の表現することで臨場感をつくり、状況を鮮明にしてオーディエンスに近づく。
ただし、とくに味覚は、比喩表現で使われることが多く、その場合は、リアリティのための五感表現という今回の趣旨からは離れる。

甘いですか 酸っぱいですか
ちょっと青い フルーツみたい

<夏のヒロイン 河合奈保子(作詞:竜真知子)

最後に、自作の例で、私が野田マユミに書いた「この海をあなたに」を挙げる。
これは意図的に五感を意識した歌詞作りをした。
視覚を表現した後で、聴覚、嗅覚、触覚をそれぞれ表現。なんとか味覚も入れたかったのだが、結局、断念(笑)。

今透き通ったコバルトブルーの海を見ても
大きな雲がゆっくり空に動くのを見ても
珊瑚の海に色とりどりの魚が泳ぐのを見ても

幾重にも重なり響く波の音を聴いても
風の中に微かな潮の香りを感じても
みんなあなたに教えたいと思っているんだよ
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今波打ち際サイダーみたいな波を見ても
コケティッシュなヤドカリのフォークダンスを見ても
大きな葉っぱの南の草木が揺れるのを見ても

背中の木々から色んな鳥の声を聴いても
さらさらした宝石のような砂の感触も
みんなあなたに教えたいと思っているんだよ

<この海をあなたに 頭慢>

作詞講座第四回のまとめ
「五感を表現してリアリティを出そう」

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