井原西鶴著 杉田穆 校注「好色一代女」を読んで
「好色一代女」は「好色一代男」と趣向が異なる。そもそも「好色一代男」とは好色を好みその道をまっしぐらに進む男の話である。行く付き先は「女護の島」なる宇宙である。限りなく好色を尽くすことができる理想の地にたどり着かんとする。楽観的な希望に溢れる結末が待ち構えている。それに比較して「好色一代女」は、性に目覚めた女が身を売る女郎へと転落する話である。この女郎も位は天と地の差がある。一夜の代金も雲泥の差がある。それに、素人女の色恋沙汰が混じり合わせている。いわば、希望に代わって、悲哀