ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ著 工藤幸雄訳「東欧の文学Ⅵから コスモス」および「ゴンブロヴィッチ短編集」を読んで
不思議な小説である。不思議というのはシーニュ(意味しているもの)が言語ではなくて首吊りという現象による。そして、シニフィアン(意味されているもの)が、この現象の内に表されていても、その現象の確かな意味、シニフィアンが何かは良く分からない。次から次へと吊るされ死んでいき、不気味さだけがある。固定的ではない、吊るされていく生き物の種類は移り変わっていくのである。ただ、最後に作者の意図が明確になる。読んでいる途中に、フランツ・カフカの「流刑地にて」という小説を思い出したが、拷問し処