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文学本紹介(海外)

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海外の詩や小説などを紹介しています。
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記事一覧

J-P・サルトル著 白井浩司訳 「嘔吐」を読んで

時々、以前に読んだ本を読み返している。でも、当時は非常に感激した作品でも色褪せてみえるこ…

歩く魚
5か月前
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イアン・ブレマー著 有賀裕子訳 「自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか」を読…

国際政治や経済にも関心を持っている。ずっと以前には、ハイオクの「隷属への道」やケインズの…

歩く魚
7か月前
7

ダンテ・アリギエリ著 原基晶訳 神曲「地獄篇 煉獄編 天国編」を読んで

本書は厚い、三巻もあって長い。従って少しずつ眺めただけである。叙事詩だけに詩形式の記述で…

歩く魚
8か月前
16

矢島文夫訳 「ギルガメシュ叙事詩 (付)イシュタルの冥界下り」を読んで

ずっと前に買っていてやっと読めた本である。読んだ感想はやはり叙事詩は良くて、楔形文字が完…

歩く魚
1年前
10

伊藤整著 「小説の方法」と「小説の認識」と「近代日本人の発想の諸形式」を読んで

半年以上前に読んでいて、感想文を一つ一つ書こうと思ったが、余り思い出すことがない。内容に…

歩く魚
1年前
12

アインシュタイン著 中村誠太郎・南部陽一・市井三郎訳 「晩年に想う」を読んで

稀に科学本を読むことがある。このアインシュタイン著「晩年に想う」もそうである。彼が量子力…

歩く魚
1年前
10

ヴィトルド・ゴンブロヴィッチ著 工藤幸雄訳「東欧の文学Ⅵから コスモス」および「ゴンブロヴィッチ短編集」を読んで

不思議な小説である。不思議というのはシーニュ(意味しているもの)が言語ではなくて首吊りという現象による。そして、シニフィアン(意味されているもの)が、この現象の内に表されていても、その現象の確かな意味、シニフィアンが何かは良く分からない。次から次へと吊るされ死んでいき、不気味さだけがある。固定的ではない、吊るされていく生き物の種類は移り変わっていくのである。ただ、最後に作者の意図が明確になる。読んでいる途中に、フランツ・カフカの「流刑地にて」という小説を思い出したが、拷問し処

題:レーモン・ルーセル著 岡谷公二訳「アフリカの印象」を読んで

少しずつ一ケ月以上かけて小刻みに読んで、読む終えたらこの小説の内容が良く分からなかった。…

歩く魚
1年前
9

題:D.H.ロレンス 伊藤整訳「チャタレイ夫人の恋人」

ずっと前から読もうと思っていて、やっと読むことができた。最初は古臭くてあたりまえの文章で…

歩く魚
2年前
8

ジョー・ブスケ著 谷口清彦・右崎有希訳「傷と出来事」を読んで 

読み始めると、キーになる言葉がでてくる。生と死、出来事。声に光、死者に実存、言語、形象、…

歩く魚
2年前
3

題:ヘンリー・ジェイムズ著 西川正身訳「デイジ-・ミラー」を読んで 

ヘンリー・ジェイムズの作品は「ねじの回転」を読んでいる。既に、感想文に書いているが、確か…

歩く魚
2年前
4

題:ポー著 佐々木直次郎訳「黒猫・黄金虫」を読んで

白石かずこの詩集「浮遊する母、都市」を読んでいたら、ポーの詩「大鴉」の題名が記載されてい…

歩く魚
2年前
10

題:ゲーテ著 木村直司訳「色彩論」を読んで

ゲーテとは多彩な才能を持つ人であって、本書は科学的な箴言形式の色彩に関する著書である。結…

歩く魚
3年前
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題:鎧淳訳「マハーバーラタ ナラ王物語 ダマヤンティ姫の数奇な生涯」を読んで

古代インドの長編叙事詩「マハーバーラタ」の中の麗しい愛の物語である。美しい、腰くびれるダマヤンティ姫は神々よりも美しいナラ王を婿に選ぶ。ただ、嫉妬する魔神カリ王にとりつかれて、子供もできたというのに、ナラ王は弟との賭けに負け国も取られるのである。そして城を出て行く。獣たちがダマヤンティ姫を狙う密林の深くに入ると、自らの身に纏うために姫の衣服の一部を剥ぎ取り、姫を捨て去る。こうしてダマヤンティ姫の苦難が始まる。密林での姫の嘆きが一番の読みどころで詩的でさえある。ナラ王は蛇王カル