棒アイドル【毎週ショートショートnote】
某アイドル。
私はいつもそう呼ばれてきた。
人気俳優・高川太一、某アイドルと熱愛!
この某アイドル、私。
「ねえ知ってる?この前某アイドルのチャンネル登録者数1000人突破したんだって」
この某アイドルも、私。
私は顔も名前も覚えてもらえず、私のことが話題にあがるときはいつも「某アイドル」と言われるようになった。
ならいっそのこと「棒アイドル」になってやる、と私はふと思いついた。
私は懸命にダイエットに取り組み、ついに体は棒のようにガリガリになった。はたから見れば、私は動く棒と化した。
「今大人気の棒アイドルの登場でーす!」
私のその独特な見た目からみるみる話題になり、チャンネル登録者数も10万人を突破した。私の目論見どおり、「棒アイドル」は一躍スターとなった。
しかしながら、その人気も長くは続かず、ついに私は引退を決意した。
棒
ア
イ
ド
ル
年
末
に
引
退
私の記事、これだけ。まるで棒。
「ほっそぉ」
私はひとりごち、新聞を閉じた。