いかんともし難く
今日は一日中、パジャマでいた。
夕方になってざあ、という音を聞き、窓外に目をやると雨が降っていた。
夏が洗い流されてゆく。
それを見るためにベランダに小さい椅子を二つ並べた。
背後から漏れる部屋の明かりが寂しい。
向こうのほうの電線ではカラスたちが羽を濡らしながらじっとしている。
南の空から流れてくる 台風の切れ端と目が合ったような気がする。
南、というと自然に家族が住む横須賀を思い出してしまう。
うちの方では特に被害はなかったと、つい数時間前に電話で母から聞いた。
山形はもう、朝夕は涼しい。今日のように雨が降る夕方は少し肌寒いくらいだ。
ここは長袖の季節が早足でやってくる。
それに比べて私ときたら、今年の夏はあのカラスたちのように時間が流れてゆくのをじっと見ていた。
そのことを恋人に話したら、そんなことができるのは学生のうちだから、ぼーっとしときなさい、社会人になったら休めなくて、三角形の目をしたピーナッツみたいな顔になるよ、と言われた。
私はこの人のピーナッツ顔を見たことがあり、確かにあれにはなりたくないな、と思う。今もって、隣でピーナッツみたいなシワを眉間に刻んでいる恋人の目線の先を辿ったらクモがいた。
数を数えたら、見えるだけで6匹もいる。
中でも大きいやつがせっせこ巣を作っていて、感心する。
プリッとしたお尻を振りながら上下に忙しなく移動しており、まるで空に浮いているように見える。透明な高層ビルの建設現場が、うちのベランダにはあるわけだ。
そして私は布団を干すときにその全てをぶち壊す破壊神となるわけだ。
破壊神、シャー!!
先日23歳になったばかりの人間の、人生であと何回あるかわからない夏休みが暮れてゆく。人生は如何ともし難く、と手元の文庫本。
そんなことはずっと昔から知っている。
だからと言って流れは止まらず、掬い切れぬほどの瞬間を眺めて、たまに絵に描いたりこうして駄文をしたためたりする。
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