Story of Kanoso#58「重石屋さんのネーミング」
「ねぇ綾、僕ね、重石屋さんを始めようと思うんだ!」
イタリアから日本に移住した美青年のロイが繰り出した一言に、ホットコーヒーをすする友人の綾の動きが止まった。
「え?何で重石屋さんなの?」コーヒーの入ったマグカップを口から離すと、綾は不思議そうな目付きでロイに質問した。
「元々は漬物石屋さんにしたかったのだけど、大切な友のアンドレに相談したら、『漬物石では使い道が狭すぎるから、重石に取り扱い範囲を広げてみたらどうだろう』って言われたから、重石屋さんをやることに決めたのさ!」
「ふ~ん、でもさ、何でこの彼礎って町でやろうと思ったの?」コーヒーを再び口に含んだ綾は問いかけを続ける。
「そんなの決まってるじゃないか!彼礎は石の名産地、トゴウラを抱えるほどの石の町なのだから!」
トゴウラという聞き慣れないワードに綾は苦戦するも、すぐに答えを導きだした。
隣県の有岡県にある「研浦」という町の事だと。
しかし研浦から彼礎までは70~80キロメートル離れている。
いまいち、彼女はロイの真意を掴めなかった。
「なるほど……そのトゴウラってのは彼礎とほぼ無関係の町だけどね。それで、何であたしに聞いてきたの?」
「君に新しい店のネーミングを決めて欲しいからさ!」
綾は驚いた。
まさか友人の店の名付け親になるとは、夢にも思っていなかった。
「さぁ、綾。君ならできるさ!素晴らしい名前をつけてくれ!」ロイが後押しをかける。
コーヒーをすすりながら、名前を考える綾。
みるみるカップの中のコーヒーは減っていく。
気づけばコーヒーを全て飲み干していた。
カップ一杯のコーヒーで腹のあたりまで暖まった時、彼女の脳内に新店舗の名前が浮かんだ。
「ロイ、決めたよ。新しい重石屋さんの名前」
「本当!?早く教えて!」
「うん。"重石"を"ロイ"が売っているから、"オモシロイ"。イタリア語で"interessante"」
(了)(835文字)
あとがき
「オモシロイ」…「くすりの佐藤」みたいな名付け方ですが、果たして大丈夫でしょうか。
重石屋の進出地として彼礎市を選んでくれた事は嬉しく思いますが、漬物石は確かに用途が狭い。
せめて重石にすれば重石や庭石として買っていく人もいるでしょうから大丈夫だと思います。
最初に浮かんだのは終わりの「オモシロイ」という部分。
そこから「重石屋さんのロイくん」という事になってこの作品ができました。
「インタレッサント」の発音はGoogle翻訳からのものです。
ジブンの聞こえ方を元にしているので、不自然な点もあるかもしれませんが、その際は是非お知らせください。
待ってます。
Writen in the commuter train“2762“(Operated by Kintetsu Railway)