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Chet Bakerの憂鬱

彼の音を聴くとモノクロの世界に引き込まれる。

アイデンティティを探し続ける思春期のように複雑な感情が高濃度で混ざり合うことで出来上がる、究極にシンプルな音。

どこかセンチメンタルな雰囲気を纏うトランペットの音色は、全ての感情を肯定するような不思議な柔らかさを持つ。

彼ほど(色ではなく、感情的な意味で)"Blue"という単語が似合う人を知らない。

今までもこれからもこの音を出せるのは彼だけであり、この音は彼だけのものであるべきだと思う。

私にとって"Chet Bakerの音"とは、それほど独特な世界観を持つ特別な音。

どんな音でも同じ世界を見せられるのは彼の才能だと思うし、彼の生きてきた中で抱いてきた感情の全てがそこに詰まっている気がする。

全ての人間が持つ弱い部分をさらけ出しながら生きた彼の生涯を辿るように、今日もChet Bakerの奏でる白と黒の世界に浸る。

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