模倣と独自性(発展編4)
西洋の芸術はミメーシスの模倣を中心にした文学であるとされている。西洋では古典を中心として教養形成が行われ、芸術家は時代精神に平仄を合わせ当代の流儀を取り入れて理想の芸術家を体現するために、それぞれが自然や神や模範となる物を見出して来ていた。その過程で様々な技術や創作論上の課題が発生し、西洋芸術の本質は変貌しなかったが様式は様々に変化した。西洋では、模倣という芸術様式の本質はそれこそが共通時的に模倣が模倣を生み出し伝播していった。西洋芸術社会の歴史では模倣でない芸術はなかった。模倣は文化的正統性と非正統性という形而上学的差異を根拠としており、正確に模倣を行えること、すなわちオリジナルのモデルに近接していることが、芸術家の地位を定めていたも同然である。西洋芸術は模倣の芸術と言われるが、模倣にするためのオリジナルの根拠こそが芸術作品の価値を決めていたのであり、模倣は単なるテクニック論に過ぎないだろう。西洋芸術の模倣のための自然、神、模範というオリジナルの根拠は何かを理解することが芸術家の修養では重要だったのである。本稿では、模倣理論の虚実を現代哲学的に検証していく。
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