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「ロジカルシンキング」の実践
はじめに
この記事では、論理的思考力と文章作成力を高めるための実践的な方法について述べています。日本人特有の思考や文化的背景を考慮しながら、論理的に考え、伝える技術を体系的に身につけることを目的としています。以下にその概要を説明します。
目的と背景
日本では、学校教育や社会での慣習的な影響により、感覚的な表現や曖昧なコミュニケーションが重視されがちです。そのため、論理的な思考や明確な文章構成を求められるビジネスの場面で、苦労する人が多いと指摘されています。ここでは、こうした日本人の課題を踏まえ、誰でも実践できる「ロジカルシンキング」と「ロジカルライティング」の技術について述べることにします。
ロジカルシンキングの基礎
ロジカルシンキングとは「筋の通った考え方」として定義しています。
その要点は、以下の3つです。
1. 根拠に基づいた主張を行うこと
2. 物事の関係性を整理して把握すること
3. 一貫性のある結論を導くこと
これらを実現するために「MECE(漏れなく、重複なく)」や「ピラミッド構造」といった基本的なフレームワークについて解説します。
MECEの活用
MECEとは、物事を整理・分析する際の基本的な考え方で、以下の2つの条件を満たすように分類することです。
1.Mutually Exclusive(相互排他的)
それぞれの要素が重複しない
明確な境界線がある
「あれかこれか」という関係
2.Collectively Exhaustive(全体網羅的)
すべての可能性を漏れなくカバーする
「その他」という曖昧な分類を避ける
全体を100%説明できる
MECEにすることの利点は以下の通り
分析の正確性向上:抜け漏れや重複のない分析ができ、より確実な結論が導けます
コミュニケーションの円滑化:チーム内での共通理解が深まり、議論が効率的になります
意思決定の質向上:全ての選択肢を網羅的に検討でき、より良い判断ができます
以下に具体例を挙げて説明します。
【良いMECEの例】 商品の購入者を「新規顧客」と「既存顧客」に分類
重複がなく(ME)
全ての顧客をカバーできる(CE)
【悪いMECEの例】 商品の購入者を「20代の顧客」「女性顧客」「関東在住の顧客」で分類
20代の女性顧客が重複する(MEではない)
30代以上の男性顧客などがカバーされない(CEではない)
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ピラミッド構造
ピラミッド構造は、ビジネスコミュニケーションの基本的な考え方で、以下の特徴があります。
1.トップダウン型の情報構造
最上部(頂点)に全体の結論を置く
中段に主要なポイントを配置
下部に具体的な根拠やデータを展開
2.各階層の関係性
上位層は下位層の要約となる
下位層は上位層の根拠となる
同じ階層の要素はMECEの関係を保つ
ピラミッド構造の利点は以下の通り。
読み手・聞き手が結論を素早く理解できる
論理的な思考プロセスを明確に示せる
情報の優先順位が明確になる
議論や検討のポイントが絞りやすい
ピラミッド構造の具体例を示します。
【頂点】今期の営業戦略を改定すべき
↓
【中段】
・既存戦略では売上目標未達が確実
・競合他社の攻勢が激化
・顧客ニーズが変化
↓
【下部】
・直近3四半期の売上実績データ
・競合他社の新製品投入状況
・顧客満足度調査の結果
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ロジカルライティングの技術
ロジカルライティングは、論理的に思考した内容を分かりやすく文章に落とし込む技術です。ここでは、以下のポイントに焦点を当てています。
主張と根拠の明確化
文章を書く際には、主張(結論)を明確にし、それを支える根拠を示すことが求められます。
これを解決するには「PREP法」(Point → Reason → Example → Point)を用いることで、簡潔で説得力のある文章を作成することができます。
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簡潔で分かりやすい表現
多くの人は、長い文章や抽象的な表現を使いがちです。「一文一義」の原則や、具体的な言葉を選ぶことが重要です。また、「冗長な表現を削る」「読み手に負担をかけない書き方」を徹底することで、読み手の理解を助けることができます。
文法的・構造的な工夫
論理的な文章を作るためには、文法や構造にも注意を払う必要があります。
注意するポイントは以下の通り。
• 接続詞や段落構成の活用:話の流れを分かりやすくする。
• 箇条書きや図表の使用:情報を視覚的に整理する。
実践的なトレーニング方法
ここでは、トレーニング方法も提供しています。これにより、実際の場面でロジカルシンキングを活用できるようになります。
思考力を鍛える練習
• 日常生活や職場での課題に対し、「Why?(なぜ)」を繰り返して原因を深掘りする。
• 他者の意見や資料を分析し、「主張と根拠」を明確にする。
文章力を高める練習
• 書いた文章を見直し、「無駄な部分を削る」「一文を簡潔にする」トレーニングを行う。
• 他者の文章を分析し、「どのように改善できるか」を考える。
最後に
「論理的に考え、伝える力」を身につけることは非常に重要です。
この力は一朝一夕に身につくものではなく、日々の努力と練習が必要です。
しかし、難しく考える必要はなく、基本的なフレームワークを活用し、少しずつ改善していくことが重要だと考えます。