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【TOLOPANの真髄に迫るvol.41】パン特化型オーブンUNOXで熱を巧みに操る

vol.40に続く、「焼く」話の後編。
今回も前回同様ベイカー向けの話である。



あえて最初に言っておきたい。

UNOX「ベーカーズトップ」は、
完全にパンに特化したオーブンだ。

僕は他の多くの製品を見て研究してきた。だから、パン特化型オーブンとして自信を持ってお薦めしたい。パンとは別のカテゴリになる「調理」においては、その実用性についてまだ自分自身で探っている段階だが、使い勝手の良さは十分に感じている。
 


さて、今回書きたいのはこんな内容だ。

①平窯とコンベクションによる「熱の種類」の使い方と見方

②UNOXでのステップにおける「熱の種類」とその効果

③蓄熱板とスチームの関係性について



①についてだが、まずパンを焼くことで大切なのは、優れたメーカーのオーブンを選ぶことではない。どの部分でどの熱の種類を使うかが大切なのだ。

パンの上面部は輻射熱、脇全体照射は対流熱、底部、芯部は伝導熱と固定窯というのは定説。

「平窯」での輻射熱はニクロム線と鉄の壁からくる遠近赤外線によるもの。対流熱は炉床からの上昇熱気流による対流を起こす。伝導熱は炉床下の熱源から炉床を通して熱を伝えている。

「コンベクション」では、輻射熱はシルバー部分とサンによる遠・近赤外線になる。対流熱はファンからの熱風によるもの。伝導熱は天板に蓄熱されて発生する。

平窯では対流が弱く、起こす時には下火を上げる分伝導での底部の焦げを気にしながら間を開ける。詰めて焼く時には下火が重要なポイントで熱量と底が焦げない対策をとれば脇も色がしっかりと入ると思う。

コンベクションでは、輻射と伝導が弱く対流が強いので、一定温度で焼くとクチャつきが出やすい。だから予熱をしっかりと上げ、輻射と伝導の確保が大切。そして最後に昇温させることで熱の種類を3つ上手く使える。簡単にいうと「上げ→下げ→上げ」を作るのだ。


②について、上記の内容を踏まえ、前回の投稿で解説したUNOXのステップと照らし合わせたい。各ステップでの熱の目的とは、主にこのようなものだ。

(ステップ1)
少しの伝導と輻射の確保

(ステップ2)
対流を止め、焼き固めなくステップ1の少しの伝導と輻射の確保

(ステップ3)
対流をメインとし穴あき天板での底からの熱風でのカマ伸び

(ステップ4)
対流がメインで全体照射に移行

(ステップ5・6)
対流がメインで伝導と輻射を確保し、上面部、芯部、脇部と仕上げ


③について。ハード系を焼く上で大切なスチーム、そして蓄熱板(スチームブースト)は字の如く、蒸気を押し上げるということ。蓄熱板のないオーブンでは排水口に流れていく様子が見られる。UNOXの220°C以上での、特に260°Cの予熱の時の蒸気の細かさは感動ものだ。最初は霧状で見えるか見えないかぐらいで、少し熱量が下がると底のシルバーに雫の玉になって踊っている様子が見られる。

ハード系にとっては、濡らさずに湿らすという絶妙な蒸気の質が重要だ。ファンを止めてから蒸気余韻が残るのが大切。ステップ4,5,6で使う絞った蒸気量を出しながら昇温させ、表面温度を下げながらメイラード反応とキャラメル化の時間を操れるのも蒸気の質と量が選べるおかげだ。(UNOXコンベクション状態)




オーブンの特色を知り、熱の種類を工夫することで弱点を克服し、UNOXの機能を最大限利用することが良い焼成反応をし、香りの良いパンを焼くことになると思う。

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