【TOLOPANの真髄に迫るvol.31】口溶け、歯切れ、しっとりの幸せの生ドーナツ
ハンバーガーといえば「マクドナルド」
ドーナツといえば「ミスタードーナツ」
1970年代に生まれた僕は、ハンバーガーやドーナツの存在をこのアメリカ発祥のチェーン店で知ることになった。ロゴであったり、キャラクターであったり、ふとした色々なものが子供心に刺さった。なんてことない日常に、小さなクリスマスがやってきたように映っていた。
それと同時に、ハンバーガーやドーナツにはいつも「家族」がセットだった。ハンバーガーの豪華さ。ドーナツの柔らかさ、甘い香り。そこには、どこかおとぎの話の「お菓子の家」の匂いを感じたものだ。何かこういう食べ物には「幸せ」と「家族」がいつもセットメニューであった気がする。
では美味しいドーナツの条件とは何か。
ここからはあくまでも僕の主観での話である。
まずは揚げ油が劣化していないこと。
酸化しにくい油を利用していること。
揚げたときの窯伸びが著しいこと。
クラストとクラムに食感の違いがあること。
(全てが柔らかいのだけども外側一枚がカシュッとした所があり、クラムの柔かく口溶けの中に少しのモチ感があること)
今回は「生」と謳っている。
口溶け、歯切れ、しっとり感すべてを意識しなくては「生」として成立しない。しっとりしてるけど歯切れは良くないとか、口溶けではなく口に残るなとか。そんなケースはよくあることだと思う。こうした問題が起きてしまうのは、ミキシングや発酵、揚げ方によるものが多い。
そもそも生ドーナツを作るきっかけになったのは、J-オイルミルズの営業の方だった。自分の店でデモをやってくれた際に、すごくわかりやすい説明をしてくれた。そのときサンプルの「ネオトラスト」を置いていってくれたのが始まりだった。「ネオトラスト」とは増粘多糖類、アルファ化でん粉でコーンスターチのような「加工でん粉」ではなく「でんぷん」表記されたものだ。
主な特徴は2つある。
1つは水を吸ってベタつかない効果。
この効果のおかげで付着しないことから、生地の中に綺麗に分散される。
もう1つは、液油を固形油脂と水をあわせても分離することなくしっかりと保持してくれる効果。それはエマルジョン(乳化)にすることが簡単になり、油脂量、水分量を更に上げることができる。1つ目の効果を踏まえると、歯切れや食感につながる気泡(セル)の部分に影響がでて、油と水の分量を上げて保持されていることから、しっとりとした口溶けの良いものに仕上がる。さらに劣化を遅らせることにも繋がっている。
大まかな配合は日清のカメリヤが100%、塩1.8%、上白糖8%、トレハ8%、卵黄30%にバニラペーストを1.2%、酵母、ルヴァンリキッド、エマルジョンで固形脂30%、水15%、ネオトラスト3%で吸水が牛乳を含めて35%、エマルジョンとあわせると50%になる。
日清カメリヤの使用理由としてはやはり、グルテンネットワークだ。それと他の副素材を生かすために、香りは弱く旨みは出したいというところだった。椿酵母(生イースト)を使い、プロテアーゼで分解されたアミノ酸を生イーストの体内にある液胞で貯蔵するためにたんぱくの多い粉を選んでいる。
トレハは卵黄の凝固抑制による「ス」が入るのを防ぐため。これで硫黄臭も抑制される。油脂も30%と多めであるために脂質変敗抑制にもなる。
揚げ油は竹本油脂の太白胡麻油とグレープシードオイル。どちらも熱による酸化を防ぐ効果がある。
揚げ方は高温短時間で。窯と同じで伸びている間にひっくり返し、伸びきったところを焼き固めるという揚げの焼成。揚げたら都度グラニュー糖をまぶす。
そのまま食べて、未体験の食感を楽しんでもらうのもよし。オーダーを受けてから絞る、マスカルポーネ入りのカスタードクリームで温度差を楽しんでもらうのもよし。
ドーナツリングの窓から覗く
その世界は平和の象徴である。
コーヒーとのペアリングとして、
誰でも差別なく口に出来る
ラブ&ピースカルチャーを作っている。
と、小さな声で本気で言いたい。
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