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飛ぶ小鳥を撮る方法
野鳥撮影をするようになってまず心掛けたのは、綺麗に撮ること。
枝などに遮られることなく全身が見られ、羽毛は一本一本が精細に再現され、ばっちりと目にピントが合った写真。
さらに背景もすっきりしていればいうことなし。
そんな写真を目指して撮影してきた。
しかし一年半前にミラーレス一眼を使うようになってから、意識して動きのある写真を撮るようになってきた。
だが、試してみると思ったよりも難しい。
予想はしていたが、カラ類などの小さな鳥になるほど難易度は高くなる。
今のミラーレス一眼はトラッキング機能があり、一度鳥を捉えると鳥の動きに合わせてある程度はAFで追従することができる。
それを利用して一眼レフカメラを使っていた時よりも楽に野鳥撮影をすることができるようになっている。
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上の写真はヒヨドリ。
ヒヨドリを小鳥と言っていいのか迷うところだが、被写体としてはカラ類などよりも大きいので捕捉しやすいため撮りやすい。
練習するのにちょうどいいと思う。
撮影設定はシャッタースピードは1/4000秒、焦点距離は600mm、F6.3、ISOは普段はオートにしており、明るさによってISO100〜12800までをカメラが勝手に選択する。
ヒヨドリや次に出すツグミなどは比較的大きく、カラ類よりも動きがゆっくりなのでシャッタースピードは1/2000〜1/3200秒でもいけると思う。
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ツグミと同じくらいの大きさ。こちらも比較的楽。
次は本命の小鳥。カラ類やエナガなど。
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この写真はちょうど真横に飛んでいく瞬間。まだ脚が木に触れている。
次のコマはもう画面の端に行きすぎて使えなかった。秒間20枚撮ることのできるソニーα9でもこの一枚しか残らなかった。
撮影設定は1/4000秒、焦点距離は547mmとちょっと引いているが、もっとズームアウトして400mmくらいで画面に余裕を持たせればあと1〜2枚は残せたかもしれない。
どうしても大きく撮ることに気が行ってしまうと、飛び出しから速度の速い小鳥はすぐに画面から外れてしまう。
小鳥の場合、飛ぶ方向に合わせてカメラを振るのは私には無理である。
飛ぶ瞬間すらシャッターを押すのが遅れがちなのでプリ連写機能が欲しいのだが、ソニーではα9IIIというとても高額なカメラしかない。
あと、どの写真もそうだが物凄い数の無駄なカットが量産される。
うまく飛ぶ瞬間にシャッターを押しても、向こう側に行けば後ろ姿で絵にならないし、こちら側だとピントが追従できずにボケた写真になってしまう。
左右どちらかに飛んでくれると助かるのだが、これはもう運である。
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こちらもハシブトガラ。焦点距離は500mmにしてどちらへ飛んでもある程度は画面に入るようにして撮影した。それでも使えるのは数枚である。
次はエナガ。この鳥も難しいのだがホバリングをよくしてくれるので、チャンスがある。
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上の2枚は続き物で、1枚目と2枚目は連続している。
これはホバリングのようにあまり大きく動かなかったので、撮影できた。
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下のエナガの写真は正面に向かってくるところだが移動量が少なかったためか、AFでピントが追従してくれた。
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一枚目は止まっている枝にもピントが来ているが、2枚目はエナガがこちら側に飛んできた。
ばっちりエナガにピントが合って、止まっていた枝はボケている。
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上の写真は飛ぶ瞬間というよりも跳んだ瞬間。
羽を広げず、枝から枝に跳び移るところ。
次はエゾビタキの飛び出し
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エゾビタキは体の大きさに対して、羽が大きく見える。
特に1枚目のナイフの様な形になっているのはこの写真を撮って初めて知った。
双眼鏡で飛んでいるところを見ても、こういう形として認識はできなかったので、写真に残して初めて発見することも多い。
野鳥図鑑でも羽を閉じた写真ばかりなので、これらの写真は新鮮に感じた。
次は同じヒタキの仲間のコサメビタキの連続写真。
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こちらはしばらく双眼鏡で観察していて、だいたい決まった枝に止まって飛んでる虫をキャッチし、また同じ枝に戻って来るのを繰り返していた。
背景はできるだけ白い空ではなく、樹木の緑になる様に撮影場所を設定した。
そこで飛びそうになる瞬間にシャッターを切った。
ピントはコサメビタキではなく、枝に合っている状態だが、撮影距離が20メートル以上離れていたので、コサメビタキにもピントがきていると判断して撮影した。
シャッタースピードはこれまでと同じ1/4000秒にしている。
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上の写真はヒガラが飛び上がる瞬間。
雨の日で、葉についていた水滴が落ちて来るところが一緒に撮れた。
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シメが枝に止まる瞬間。広げた羽が綺麗だ。
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虫を咥えたモズが飛ぶところ。
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ゴジュウカラの飛び出しの瞬間。
とにかくどこへ行くかわからない森の小鳥はどうしても枝から近い所までしかカメラでは追えない。
カワセミの様に飛翔が直線的で広々とした場所であればドットサイトが有効なのかも知れない。
おそらく止まりもの、もしくは枝や地面を動く程度なら使えると思うが、飛翔では役に立たないのではないかと思っている。
どちらにしろドットサイトは興味がないので、使うことはないだろう。
次はコゲラ。
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1枚目と2枚目はほとんど同じで羽を閉じたままだが、3枚目で羽を広げてくれた。
しかし、かなり画面の端に行ってしまったので、作品にするのはちょっと苦しい。
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ちなみにトリミングする前の画像が下。
左に飛ぶことがわかっていれば、枝をもっと右側に持っていくのだが、できなかった。
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飛翔写真をとるのにはまず早いシャッタースピードが必要になる。
これはフィルムの頃でも同じで、被写体をブレずにとるのには必要なことだ。
ピントはMFでもAFでもどちらでも構わない。私の常用レンズはAF時に瞬間的にMFへの変更が難しいのですべてAFで撮影している。
シャッタースピードは1/4000秒に設定している。明るさが十分ならもっと早い1/6400秒にすることもあるが、なかなか条件に恵まれることは少ない。
すると犠牲になるのがISOで、どうしても感度が高くなり画質はざらつきがひどくなる。
以下はひどいざらつきを消す方法で、これを使うようになってからはISOが10000を超えてもあまり気にしなくなった。
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写真は上が撮って出し。下が現像したもの。
わかりづらいので次は拡大画像。
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比べるとわかると思うが、下の現像処理したものはかなりざらつきが抑えられている。
元画像はISO12800で、シャッタースピードは1/2000秒。
時間は午前6時過ぎなので、晴天であったが条件はかなり厳しい。
現像はLightroom Classicを使っていて、最近AIを使ったノイズ除去ができるようになり、重宝している。
これまでは手動でノイズ除去をしていたが、雲泥の差である。
試しに手動で同じような写真に現像できるかやってみたが、どうしても無理であった。
というわけで、このツールは今ではなくてはならないものになっており、RAWで撮影する必要はあるものの、野鳥写真においては表現の幅が広がるものになると思う。
最後にまとめ。
カメラのドライブ設定は連写。
シャッタースピードはできれば1/3200秒以上の高速シャッター。
フォーカスはマニュアルでもオートでも可。
もしマニュアルなら自分の方に飛んでくると予想するなら、フォーカスを手前に置きピンで。
ISOは高くても構わない。ISO20000でもRAWで撮ればソフトウェアで何とかなる。
でも一番はよく鳥を観察して、止まる場所や飛ぶ方向、飛び立つ寸前に見られる仕草などを覚える事が大切。
闇雲に撮影してたまたま撮れたとしても、後に続かない。
野鳥のこと、カメラ操作、写真のテクニックは積み重ねが肝心であることを忘れてはならないと思う。