他人が求める自分ではなく、なりたい自分になるんだ。
2016年6月。ケンタッキー州のルイビルで、モハメド・アリの葬儀が執り行われた。享年74歳。アリの娘、ラシェダ・アリは亡き父に向けてスピーチをした。
英語でそのまま台詞を書くならこうなる。
I don't have to be what you want me to be. I'm free to be what I want.
数ある英文のなかでも、最も美しい英文の一つだと思う。
ベトナム戦争に反対して、兵役を拒否した。アメリカ中から非難されても、信念を曲げなかった。32歳の時、全盛期を過ぎたと見られていたアリが史上最高のハードパンチャーと目されたフォアマンを破った。「キンシャサの奇跡」とも呼ばれ、のちにオバマ大統領は、あの勇姿が強い励みとなったと語っていた。
勇気の言葉と行動は、世代を超えて影響を与えていく。
サッカー日本代表。クロアチア戦で惜しくもPKで負けた時、試合後のインタビューで吉田麻也キャプテンはこう語った。
数ある試合後インタビューのなかでも、最も美しいインタビューの一つだと思う。
言葉だけじゃない。プレーの1つ1つ。
日本代表が与えてくれた勇気は計り知れない。
いずれ、あの試合を見て悔し涙を流し、吉田麻也選手の言葉を受け止めた子供たちが、いつかピッチに立ち、僕らの夢を叶えてくれるかもしれない。その夢のバトンを託せるのって、なんて素敵なことなんだろう。
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昨日、音楽家の友人であるしんちゃん(未音制作所)と下北沢で焼き鳥を食べに行った。彼もまた人にいろいろ言われながらも、自分の信念にだけ忠実に従って、地道に音楽をつくりつづけきた1人だ。今もなお純粋な野心をもって制作活動に取り組んでいる。結局、続けている人だけが、たどり着ける景色があるのだと思うし、自分がなりたい自分になる人だけが見える景色があるのだと信じたい。
僕だって、人からいろんなことを言われ続けてきた。無防備のまま受け入れては人生に悩み、迷う時期もあった。でも、今は、だいぶ気にしなくなった。どう言われようと、自分のなりたい自分になりたいだけなのだ。ましてや職種や肩書きなんて鼻くそみたいなもんだ。
また時は変わって、友人と先日、表参道でオムライスを食べた。僕はおもむろにライカを取り出して、写真を撮っていたので笑っていたが、すぐにこのコラム用だと察知してくれて嬉しかった。オムライスをわざわざライカで撮ろうとする40代男性を僕は見たことがないが、美味しそうだったので撮りたかったから撮った。読者に少しでもこの感動をシェアしたいから。そのためなら、もう、いちいち人目なんか気にしない自分になりつつあった。(興味あるかたはぜひ!little pool coffee(リトルプールコーヒー)というお店です。とっても美味しかったです)
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また今日も、とあるハプニングがあった。
僕が事業支援で関わっているVookキャリアのTwitterスペースイベントが今夜開催されていたのだが、途中でMCをやっていた2人が通信トラブルに見舞われてしまい、会話が進まなくなっていた。
リスナーとして普通に聴いていた僕は思わず咄嗟に「スピーカーリクエスト」ボタンを押して、スピーカーとして場をつないだ。もはや終盤でもあったし、何の準備もしていなかったので、たいしたトークはできなかったけど、少しでも役に立てて嬉しかった。
勇気が必要なタイミングはいつだって一瞬だ。
その一瞬を逃すか、逃さないかは自分次第だ。
モハメド・アリでも吉田麻也でもないけれど、僕なりの小さな勇気を踏み出し続けてみたい。臆病風を追い払って、少しでもそういう瞬間を自ら掴みに行きたい。たぶん、それが僕のなりたい本当の自分だ。