腐女子が読む呪術廻戦 本誌 第236話 感想
注意:ネタバレを含みます。
予想していても受け入れられない
初めてそのことを知ったのは、X(旧Twitter)で「来週の本誌のネタバレが出回っているので注意してください」という善意あるポストを目にした時だった。
同時に、私がフォローしている方が「ネタバレだけでこんなに騒ぎになる展開って…」とポストされているのを見て、私はすべてを察した。
五条先生が死ぬのだと。
五条先生と宿儺の新宿決戦が始まった時から、多くのファンが心配していたことだろう。
私も、戦況を見つめる仲間の誰かが、「五条(先生)の勝ちだ」と言う度に、「変なフラグ立てないで!」と気が気ではなかった。
毎週、月曜日ごとに五条先生の生存確認をしながら、ヒリヒリして本誌を見守っていた。
第235話のラストで日下部が「五条の勝ちだ」と言った1コマは、むしろ最悪な展開の予告にしか見えなかった。
9月21日に放送されたアニメ「渋谷事変 開門」における五条先生があまりにもかっこよかったので、新しいグッズでも買おうかとうっかり検索エンジンに「五条」などと入力したら「五条 死亡?」と出てきてしまって、私は覚悟を決めた。
土曜日にはついに五条先生が胴体を真っ二つに切断され、口から血を吐いて倒れている画像をXで見てしまい、居ても立ってもいられなくなった。
地下鉄のホームで涙を溜めながら必死で感情を抑えていた。
そして今、公式の本誌を読み終え、すべてが夢でないことを知った。
正直、「五条悟の敗北と死」という事実だけを知った時よりも、236話全体を読んだ後の方が気持ちは落ち着いた。
だって、五条先生、夏油に再会できて幸せそうだったから。
口では「ざけんな。最悪だよ」と悪態をつきながらも、高専時代の姿に戻った悟はリラックスして楽しそうだ。
宿儺戦を振り返り、「あっちに恵の十種がなかったとしても、勝てたか怪しい」と悟は言うけれど、どう見ても宿儺は十種影法術頼りだったような…。無量空処も恵に肩代わりさせてたし。
正直、宿儺本来の強さを感じることができなかった。
高専の先輩・後輩や生徒たちに囲まれ慕われて、五条は寂しくはなかったのかもしれないが、彼らとの間には無意識に線を引いていた。
自分がすべてをぶつけられる同格の生き物は、宿儺だけということだろうか…?
悟のこういう考えがわかったから、高専時代の傑は一人で最強になった悟に疎外感や劣等感を感じてしまい、悩みを共有できず、二人が決別する原因になったのでは、と改めて思った。
でも、
悟と傑のこのやり取りと、悟が大声で夜蛾センに話しかけた後の二人の屈託ない笑顔だけで、私の魂は救われた。
公式でこんな会話を読むことができるなんて…と、感極まった。
五条悟が幸せなら、もうこれでいいかとすら思った。
やはり悟にとって夏油傑と高専時代の思い出は一番大切なものだったのだ。
五条先生が本当に背中を叩いてほしかったのは、教祖の夏油じゃなくて、高専時代の傑だったんじゃないかな…。
(と、初見の私は感じたのですが、悟は傑の選んだ道や生き方を肯定しているからこそ、この場面の傑は五条袈裟姿なのだという私などよりずっと深く傑と悟を愛している方々の感想を読んで、自分の浅はかさが恥ずかしくなりました)
七海や灰原と話して、悟が「これが僕の妄想じゃないことを祈るよ」と言った後には、一転、受け入れがたいほどつらい現実が描かれる。
生気を失った六眼、口から溢れ出るおびただしい血、切断された上半身…。
美しい顔が保たれていたことが、ファンにとっての救いだったかもしれない。
宿儺が五条悟をどのように殺したかは、ただ宿儺のセリフによってのみ語られていて直接の描写はない。
ここまで読んで、私は確信した。
五条悟ほどの人間が、こんなにあっさり死ぬはずはない。必ず復活するだろうと。
五条悟が復活すると考える理由
① 五条悟ほどの主要キャラがこんなにあっけなく死ぬはずがない
ストーリーの本筋には無関係なキャラ、例えば伏黒と戦っただけのレジィやぽっと出の万でさえ死ぬ前の描写はもっと丁寧で、今際の際に呪いの言葉を残している。
たとえ死ぬことが避けられない運命だとしても、五条先生ほどの主要キャラがこの世を去る時には、少なくとも何かしらのメッセージを残すはずだ。
そうでなければストーリー構成のバランスが悪すぎる。
② 悟のいる死後の世界には高専時代の人物しかいない
死後の世界で悟は高専時代の姿に戻り、空港の待合に座っている。
隣には傑、後ろの席には七海と灰原、少し離れたところに夜蛾セン、テーブル席に天内理子と黒井、売店の前の後姿はおそらく禪院甚爾だ。
全員、「懐玉・玉折」時代に五条が出会い、かつ作中ですでに亡くなった人々で、原作中で死亡したとされる釘崎や禪院真依、メカ丸、伏黒津美紀、九十九由基、禪院直哉らの姿はない。
ここが本当に死後の世界ならば、こんな選別が行われるだろうか。
五条が「妄想」と二度も言うように、五条がいる場所はまだこの世とあの世の境で、まだこの世に戻ってくる可能性が残されているはずだ。
③ 五条の目的は、羂索を倒して傑の肉体を弔うことだった
五条にとって真に倒したい相手は、夏油傑の肉体を利用し、渋谷事変・死滅回游の元凶となった羂索であって宿儺ではない。
だから、獄門疆から解放されてすぐ羂索のもとに直行したし、決戦の日を12月24日に指定して夏油の命日に揃えたのだ。
羂索に指一本も触れることなくこのまま五条が退場するのは展開としておかしい。
④ カカシ先生の前例
かねてから似ていると言われている「NARUTO」のカカシ先生も一度死亡して、死後の世界で亡くなった父親と焚火の前で話すというエピソードの後、蘇生されている。
「ドラゴンボール」でも主要人物が何度も死に、生き返っていることだし、ジャンプ作品なら胴体真っ二つになった人間が復活しても全く不思議ではない。
残された謎が多すぎる
① 11月19日から12月24日まで五条悟は何をしていたのか
「待て宿儺、彼と戦う前に私との約束を果たしてもらう」と羂索が止め、それに対して五条は≪僕としても宿儺と戦う前にやることをやっておきたい≫と考えて、決戦は12月24日に延期された。(221話)
続く222話ではあっという間に12月24日になって、双方、この間に一体何をしていたかは不明なままだ。
勝つ自信があっても、五条は賢い人だから、万が一自分が死んだ場合に備えて何かを残していただろう。
それが、復活のカギとなると信じたい。
② 七海のこと
222話で硝子が「七海のことで猪野から話があるそうだ」と言って、突然五条と伊地知の前に猪野が現れる。
七海は渋谷事変で死んでからかなり時間が経っているのに、今頃何だろう?
この先の戦いや五条の復活に関係があるのだろうか。
他にも、釘崎は果たして本当に死んだのかどうか、繰り返し出てくる「絶対的な強者、それ故の孤独、あなたに愛を教えるのは」の意味とは、宿儺が伏黒を選んだ理由は、五条なしで宿儺と羂索を倒すことが可能なのだろうか……と、まだまだ謎や疑問は多い。
「呪術廻戦」という物語の中で、主人公を凌ぐほどの人気と存在感を備えた最強の五条悟の最後がこんな形であっていいはずがない。
もしも、期待に反して五条がここで死亡したままならば、この物語は大きくバランスを欠いたまま失速することになるだろう。
五条悟は必ず復活する。私はそれを信じて続きを待つ。
二次創作者様に心から感謝
復活を固く信じているとはいえ、一時的に一切の感情がなくなるほど傷ついた私の心を癒してくれたのは二次創作作品でした。
pixiv、X、紙の本で夏油と五条の物語を発表してくださるすべての方に感謝しています。
おかげで私は今日も生きていられます。
追記:冷静になって考えると…
本誌読了直後は、動揺して悟の死を受け入れられず復活を強く望んでいた私だったのだが、ネットで様々な感想や考察を読むと、意外に「五条が満足しているからこれでよかった」「復活したらむしろ興醒め」という意見が多数で、だんだん冷静になってきた。
では、私は一体なぜこんなに納得できず、モヤモヤしているのだろうと改めて考えた。
宿儺に五条が敗北し、場合によっては死ぬことはバトル漫画の展開上予想していた。
私が納得できないのは「五条の死」ではなく、あまりにもあっけなかった死に様と五条が宿儺に対して「申し訳ない」などと思っていたことなのだ。
宿儺はずっと恵の十種影法術を使って戦っていたし、魔虚羅がいなければ五条の不可侵に適応できなかったはずだ。
「あっちに恵の十種がなかったとしても勝てたか怪しい」と五条は言うけれど、読者にはそんなことは全く伝わらなかった。
そして、五条の性格に一貫性がなかった。
五条自身がぶれているのではなく、作者が五条の内面をきちんと描いていない。
確かに悟には「自分を満足させるために呪力を行使している」一面があるとしても、宿儺が全力を出せなかったことを「申し訳ない」などと思う理由がない。
五条が戦うことにのみ充足感を見出すただの戦闘狂なら、教師になって「強く聡い仲間を育てる」という目的は持たなかったのではないだろうか。
最近の「呪術廻戦」では、作者の意図と作品で表現されている内容とに乖離があって、物語が破綻している。
Xのトレンドに「解釈違い」というワードが入っていて、「原作に対して解釈違いなどと言うのは受け取る側の読解力不足」と辛辣な意見も見かけたけれど、作者が読者にわかるように描写してくれなければ、こちらにも読解する余地がない。
提示された作品をどう理解するかは読者に委ねられているとはいえ、作者がストーリーや登場人物をある程度明確な表現と一貫性を持って描いてくれるからこそ、こちらは作者のメッセージを受容できる。
こんな形で五条が死ぬなら、「渋谷事変」以降、封印された五条を開放するために虎杖たちが積み重ねた努力や苦労は一体何だったのだろう。
「呪術廻戦」が果たしてこの先どのような展開を見せるかわからないが、できれば今回ほどの凄まじいショックを受けないように、心の安全をぎりぎり保てる距離を置いて物語の行く末を見守りたい。
感想その2・考察編はこちら
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