見出し画像

北参道に迷い、コーヒーに辿り着く | 東京ソロ活男子 vol.1

思ったより予定が早く終わってしまったな。
この辺は北参道というんだ、こんな場所があったのか。脇道に一本入るだけで喫茶店や雑貨屋、奥まったところに居酒屋など、まるで世界が違う。面白い街だ。
ふと目をやると、白い屋根とコーヒーの標識。いつもなら素通りしてしまうかもしれないその小さな看板が、今日はなぜか心に留まった。都会の喧騒からほんの一歩引くだけで、この静寂を手に入れることができるなんて。そう思うと、自然と足が向いていた。
そうだ、今日は「KITASANDO COFFEE」へ。

このカフェは、目立たない場所にある。まさに”中途半端な立地”といったところだ。でも、だからこそここが絶妙で特別なんだ。駅から少し歩いたところにある、静かなテラス席。周囲を取り囲むビルの影に守られたように、都会の騒音が届かない。そこでコーヒーを飲むという贅沢。それが、どれだけ日常からの脱出なのか、ここに来るまでは気づかない。

「テラスにベンチもある。風も気持ち良さそうだな。」

心の中でそう思いながら、ふと立ち寄る。
コーヒーの焙煎の香りに誘われながら店内へ。ここはキャッシュレス決済にも対応してるのか。手ぶらでも来られるのがまたいい。ポケットに手を入れて、スマホで注文を済ませると、あとはただ待つだけ。人々が行き交う街の雑踏とはまったく違う、ここだけが時間の流れを忘れているように感じる。歩道を行く人々は、僕がこの場所で休息を取っていることなど知らないのだろう。

「こういう場所を探してたんだ。やるな、北参道。」

テラス席に座り、コーヒーが運ばれてくるのを待つ間、ただぼんやりと目の前の景色を見つめる。ここに流れる空気は、静かで、柔らかく、心地よい。街のど真ん中でこれほどの静けさを感じられるとは思わなかった。
カップから立ち上る湯気が、風に乗ってはふわりと消える。その瞬間、ふと心が落ち着くのがわかる。コーヒーを一口、舌に広がる深い味わいが、今の自分にちょうどいい。何も考えず、ただこの一瞬に浸る。コーヒーの苦味が、忙しない日常を一瞬でかき消してくれる。

「途中下車してでも、来る価値があるな。」

目的地はあるが、そこに急ぐ必要はない。たまにはこうして、寄り道してもいいじゃないか。30分だけの休憩で、心がどれだけ軽くなるか。この一杯のコーヒーが、僕の心にささやく。

もっと、こういう時間を大切にしよう。
思わずそんな言葉が心に浮かんでくる。北参道という場所自体、中途半端と言えばそうだが、この中途半端さが逆に自分を呼び寄せたのかもしれない。どこにも急がず、ただ自分だけの時間を過ごす場所として、ここはうってつけだ。
都会の喧騒から少しだけ離れる。そのためにわざわざ足を運ぶ価値が、この「KITASANDO COFFEE」にはある。人々が流れる街の中で、僕だけが時間を止める。この場所が、それを許してくれる。

カップの底が見えた時、ふと再び現実に戻る。そしてまた歩き出す。その先に待つ目的地へと向かいながら、少しだけ軽くなった心が、今日という日を特別なものにしてくれる気がした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【今回の体験ができる場所】


ヒント :コーヒの標識
営業時間:8:00~18:00(土日祝:10:00~18:00)
席数  :テラス席は5~6席、店内は15席ほど
価格帯 :¥500〜¥1,000、¥1,000〜¥2,000
滞在時間:10~30分を推奨


スキ、コメントお待ちしております。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集