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くらりぶらり旅「小市民たるもの人様の鮎をうらやむニャかれ」編――『小市民シリーズ』モデル地レポート――

こんにちは編集部のKMです。

こちらは蝶ネクタイをなくした弊社マスコットのくらり氏です。

Before
After

差し色の赤がないだけで妙な威圧感が生まれます。去る三連休、このくらり氏と名古屋市・東山動物園を訪ねました。東山動物園といえば国内有数の大型動物園で、特にコアラが有名です。浮かれて記念撮影に及んだのですが……

喪服?

どうも周囲の楽しさから浮いていました。アンドレイ・クルコフ『ペンギンの憂鬱』では黒白の体色ゆえにペンギンが葬儀に雇われていましたが、当然ペンギンは動物園にも馴染んでいます。同じ白黒のくらり氏はなぜこうも馴染まないのか。

ペンギン(ねむい)

この日は暖かく、動物たちはうららかな午後にうとうとしていました。彼らのほんの一部を紹介して、旅の主たる目的地に移動しましょう。

アザラシ(ねむい)
カンガルー(ねむい)
コアラ(ねむい)
(されど腹は減る)

―――― 夜 ――――

名古屋駅から電車にゆられて20分、アニメ『小市民シリーズ』のモデル地である岐阜県岐阜市にやってきました。

米澤穂信先生の『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『巴里マカロンの謎』(創元推理文庫)を原作としたテレビアニメが放送され、忘れがたい余韻を残したのがこの夏のこと。25年春には第2期も放送されます。うれし。そして物語の舞台・木良きら市のモデルとなったのが、なにを隠そうこの岐阜市なのです。

AnimeJapan 2024での一枚。まだネクタイがある

謎解きの面白さ、小鳩くんのさかしさ、小佐内さんの見目麗しさなど、アニメにはたくさんの見どころがありましたが、特に印象に残ったのは瑞々しく描き込まれた岐阜の風景です。春の雨、夏の街並みの美しさたるや! とりわけ心象風景で描かれる川の流れには心惹かれました。

なので来ました。
日本三大清流がひとつ、長良川です。くらり氏には昨夜のうちにリボンを買い、勘の玉結びと玉留めで胸にくっつけました。買い物も勘だったので元々のネクタイよりも派手ですが、晴天に映えるのでよしとします。

空にはトンビ。くらり氏の写真を撮るときに「今こいつがトンビにさらわれればいいが撮れるぞ」と考えていたせいか、子猫の青く冷たい視線を感じつつ、河川敷を下ることにしました。目指すは作中で存在感を示したアーチ橋、忠節橋ちゅうせつばしです。

鮎(撮影、掲載許可をいただきました)

道中、鮎釣りをしている人たちに会いました。今年の鮎は数が多いそうで、お話を聞くあいだにもひょいひょい釣り上がります。大きいのは塩焼きに、小さいのは唐揚げになるとのこと。くらり氏も一匹の猫ですから鮎の調理法に興味津々と思いきや、むしろ掛け釣りという独特の釣法に興味があるようでした。

そんなこんなで忠節橋に着きました。作中で小鳩くんたちが渡ったり、橋脚を眺めたりするアーチ橋です。橋に上がり、遠く金華山きんかざんの山頂に見えるのは岐阜城。この橋を北へ渡れば小鳩くんたちの通う船戸高校(のモデル校)があり、南へ戻れば洋菓子店が多く構える中心街があります。ひと息つきたい一人と一匹はふたたび南へ。

お洒落な喫茶店に入るには勇気がいりますが、今日はくらり氏の先導なので百にゃん力です。〈ナチュラルカフェ〉さんにやってきました。『夏期限定トロピカルパフェ事件』で小佐内さんが小鳩くんにパフェをご馳走する〈セシリア〉のモデル店です。折よくふたりの掛けた席があき、店員さんのご厚意で写真を撮らせていただきました。

『夏期』キービジュアル。画像左端は編集部に無限増殖する宝塚布教フライヤー

注文した「トロピカルパフェ」は『小市民シリーズ』とのコラボ商品で、スプーンを口へ運ぶたび「この値段でこの品質のフルーツが食べられるなんて……」という小佐内さんのたえなる呟きが脳内に響きます。バニラアイスが嬉しいこの日の暑さもあいまって、つい小鳩くんと小佐内さんの夏に思いを馳せるのでした。

旅の終わりは高いところへゆきたくなるもの。ロープウェーで金華山をのぼり、山頂駅からひいこら汗をかいて岐阜城の天守へやってきました。旅でお城を訪れるたび「なぜこんな疲れる場所に築くのか……」と恨み節をいいたくなりますが、この疲れこそ要害としての証左、真に体験的な観光といえます。天守に着くころには「おれの汗は、つわものも流した汗だ……!」と感じ入っていましたが、そういえば戦国時代にロープウェーはなかったでしょう。勝手な共感して御免。

街を遠望するくらり氏。小佐内さんもアニメEDでこうしています

岐阜市はとても居心地のよいところでした。長良川を眺めれば頭が澄みわたりますし、整然とした街並みを歩けば心が癒されます。生まれ変わったらハクトウワシ(天敵がいない超強い鳥)になるつもりでしたが、トンビになって川と街を飛びまわるのもよいかもしれません。くらり氏はやはりうさぎになりたいのでしょうか。今度の旅できいてみます。

冬の足音がぐんぐん近づくこの頃ですが、寒さを越えれば『小市民シリーズ』第2期という名の甘美なる雪解けが待っています。ひとまずは皆さまもよい秋をお過ごしください。



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