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日本推理作家協会賞受賞作家が新境地を切り開いた、傑作長編ミステリが新装版で登場! 加納朋子『コッペリア』

去年2024年は、1月に『ななつのこ』から始まる〈駒子〉シリーズ最新作、『1(ONE)』が刊行されました。久々の駒子との再会を喜ぶ読者の皆様の、温かなご感想が励みになりました。その節は大変ありがとうございました!

装画:十日町たけひろ/装幀:柳川貴代

現在、書籍『1(ONE)』をご購入の方限定で、期間限定のスペシャル掌編を公開中です。公開は2025年1月31日までですので、未読の方はお見逃しなく!

さて、加納かのう朋子ともこさんの作品は〈駒子〉シリーズや『掌の中の小鳥』に代表されるように、温かく優しい〈日常の謎〉を描くものが多いです。ただ、第48回日本推理作家協会賞受賞作を収録した『ガラスの麒麟』のように、シリアスな作品もいくつかあります。その中でも最もダークな、異色とも呼べるミステリがあるのをご存じでしょうか?

この度、2025年1月に創元推理文庫から新装版として刊行された『コッペリア』は、かつて講談社にて刊行され、当時「新境地を切り開いた」と大きな話題を呼んだ、隠れた傑作長編なのです。

装画:河合真維/装幀:柳川貴代

孤独を抱えていた了はある日、人形作家邸の敷地内に捨てられた人形に心を奪われる。だが、人形はその場で、エキセントリックな人形作家・如月まゆら自らの手で壊されてしまう。諦めきれず修復した了の目の前に、人形に生き写しの女優・ひじりが現れ……。天才的な人形作家、人形を溺愛する青年、人形になりきろうとする女優、彼女のパトロン。彼女らが邂逅するとき、何が起きるのか。

本書のテーマは人形。タイトル『コッペリア』は、動く人形を題材としたバレエ作品などを元にしていますが、本書ではエキセントリックな人形作家・如月まゆらが作る、蠱惑的な人形に執着する人々のドラマが描かれます。まゆらが作る人形は「まゆらドール」と呼ばれ、退廃的で死を連想させるダークなもの。見る人の心を不安にさせると同時、唯一無二の怪しさと美しさが込められているので、強烈な魅力が備わっています。

そのため、了をはじめとしたまゆらドールに魅了された人々は、人形を手に入れようと、思いも寄らぬ行動を取ってしまいます。そしてまゆらドールをめぐり、了や聖たちの思惑は絡み合い、ある事件へと向かって突き進んでいきます。そこで目にする光景は、読者の皆様に衝撃をもたらすことでしょう。

このように、『コッペリア』は加納さんの作品としては異色の、ダークでゴシックな雰囲気に包まれています。事件の真相は切ないものの、しかしエンディングには光が灯るような救いが描かれているので、加納さんらしい温かさも味わえます。また、本書では新装版特別書き下ろしとして、あとがきを収録しています。執筆当時の思い出や本書に込めた想いを、ぜひお読みいただけますと幸いです。

カバーイラスト&デザインは、河合かわい真維まいさんと柳川やながわ貴代たかよさん。河合さんには、人形のドレスをモチーフとした布の花やレースのカーテンを繊細に描いていただき、また講談社版から引き続き担当いただいた柳川さんには、新たに美しく荘厳なデザインをしていただきました。
加えて、解説は千街せんがい晶之あきゆきさん。講談社文庫版のものを再録・加筆修正いただいた内容で、更にパワーアップしています。

怪しく美しい傑作ミステリを、どうぞよろしくお願いいたします!


■加納朋子(かのう・ともこ)
1966年福岡県生まれ。文教大学女子短期大学部卒。92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。95年「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞を、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。主な著書に〈駒子〉シリーズのほか『掌の中の小鳥』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』『空をこえて七星のかなた』などがある。