【新年特別企画】2025年 東京創元社 翻訳ミステリ&文芸&ノンフィクション ラインナップのご案内
あけましておめでとうございます。
昨年2024年は東京創元社の創立70周年に当たる年でした。さまざまな刊行物や催しを通して記念イヤーを盛り上げましたが、今年2025年もそんな昨年にもひけを取らない充実のラインナップを用意しております。それら刊行予定の書籍を、2日にわたりお知らせします。
初日の本日は「翻訳ミステリ」「文芸」「ノンフィクション」のラインナップ、あす2日は「SF」と「ファンタジイ」の予定をご案内いたします。
本年も東京創元社は引きつづき、読者の皆さまに良質な作品をご紹介していきます。変わらぬご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。
(特記のない本はすべて【創元推理文庫】より刊行。日本語タイトルは一部を除き仮題です)
◇翻訳ミステリ
【強烈プッシュ作品】
『マーブル館殺人事件』 Marble Hall Murders
アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭訳
クレタ島での生活に区切りをつけて、ロンドンに帰ってきたわたし、スーザン・ライランドは、あのなつかしいクラウチ・エンドで新たなスタートを切ることにする。フリーランスとして北欧ミステリの編集をしていたところ、思いもよらない仕事が舞い込んできた。《アティカス・ピュント》シリーズの続編を出すことが決まり、若手小説家に執筆を依頼したので、かつてシリーズを担当していたわたしにぜひ編集を頼みたいというのだ。かくしてわたしは、またしても《アティカス・ピュント》シリーズの続編を読みはじめる……。『カササギ殺人事件』『ヨルガオ殺人事件』に続く、シリーズ第三弾!
『17の鍵』 Schlüssel 17
マルク・ラーベ/酒寄進一【2025年1月刊】
早朝のベルリン大聖堂に、深紅の血が降り注いでいた。丸天井の下、頭上10メートルほどの位置に、女性牧師が吊り下げられていたのだ。通報を受けて殺人現場に駆けつけたトム・バビロン刑事は、信じがたい光景を目撃する。被害者の首には、カバーに「17」と刻まれた鍵がかけられていた。それはかつて、トムが少年の頃に川で見つけた死体のそばにあった物と同じだった。鍵は10歳で失踪した妹が持ちだしていたのだが、なぜそれが今、現れたのか。謎を追ううちに、トムは恐るべき真相をえぐりだす。圧倒的スピードで疾走するドイツ・ミステリ!
『19号室』 Zimmer 19
マルク・ラーベ/酒寄進一訳【2025年2月刊】
ベルリン国際映画祭の開会式場に悲鳴が響き渡った。予定外の映像が上映されたのだ。女性が何者かに襲われ、心臓を大きな釘でひと突きされていた。しかもその女性は市長の娘で、女優だと判明。この映像は本物か偽物か? トム・バビロン刑事は捜査を始めるが、警察の協力者である臨床心理士ジータは、映像内の壁に残されていた「19」の文字に戦慄する。殺されたかもしれない女性と自分には共通点がある――。圧倒的リーダビリティのドイツ・ミステリ2ヶ月連続刊行第2弾!
Nine Lives
ピーター・スワンソン/務台夏子訳
ある日、アメリカ各地の9人に、自分の名を含む9つの名前だけが記されたリストが郵送されてくる。差出人も意図も不明。受け取った人々は、さして気にもとめない。まず、メイン州でホテルを経営する老人が溺死した。そして翌日、マサチューセッツ州郊外でランニング中の男性が背中を撃たれる。ニューヨーク州のFBI捜査官であるジェシカはリストに掲載されている人々の特定にかかる。自分も、死んだ老人と同じリストを受け取っていたのだ。次は誰が殺されるのか? 職業も居住地も違う9人のつながりは何なのか? 『そして誰もいなくなった』に捧げる、驚愕の展開の連続で読者を翻弄する極上のミステリ!
Five Survive
ホリー・ジャクソン/服部京子訳
アメリカの18歳の高校生レッドは、キャンピングカーで友人3人、お目付け役の大学生2人と春休みの旅行に出かけていた。だが人里離れた場所で車がパンク。携帯の電波も届かず、誰も助けてくれない。なんとかスペアタイヤに交換した矢先、いきなり何者かに狙撃されて残りのタイヤとガソリンタンクを撃ち抜かれてしまう。午前零時を過ぎたころ、知らぬ間に車のサイドミラーにかけられたトランシーバーで、スナイパーが交信を始めた。その男は6人全員を知っており、そのうちのひとりがある秘密を握っていると主張し、それが誰か特定しろと要求してきた。タイムリミットは午前6時。レッドたちは必死で助けを求めつつ、誰がターゲットなのかを探り始める。車という閉ざされた空間で秘密が明らかになるとき、何が起こるのか……? 『自由研究には向かない殺人』の著者が放つ、本国で初版50万部の超絶サスペンス!
『薔薇の名前[完全版]』 Il Nome della Rosa
ウンベルト・エーコ/河島英昭・河島思朗訳(単行本)
『薔薇の名前』の初版以降に著者自身が入れた訂正版に、覚書としてあとから刊行された小冊子を巻末に収録、さらに、執筆時に著者が描いていた登場人物や文書館のイメージスケッチなどを収録した完全版。
【名匠・大家たちの最新作】
Svörtuloft
アーナルデュル・インドリダソン/柳沢由実子訳(単行本)
レイキャヴィク警察の犯罪捜査官シュグルデュル=オーリは高校時代の友人にある相談を持ちかけられた。義理の兄夫妻がパートナー交換パーティに参加し、その写真をとられて脅迫されているので助けて欲しいというのだ。頼みを聞いて脅迫者である女性のもとを訪れたシュグルデュル=オーリだったが、そこには頭から血を流している女性の遺体が……。シリーズ第8弾。
The Disappeared(猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ)
C・J・ボックス/野口百合子訳
ワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケットは、アレン州知事から空港に呼び出された。アレンはジョーに、サラトガ地区に赴いてある事件を解決しろと命じる。昨年7月に、英国の大手広告会社の取締役社長である女性がサラトガ近辺で行方不明になっていた。彼女はジョーの娘シェリダンが働く高級リゾート牧場に滞在し、帰国するためにレンタカーで空港へと向かっていたが、忽然と姿を消した。彼女の行方を探るためにジョーが現地へ向かうと、そこに盟友の鷹匠ネイトが現れる。彼はジョーにタカ狩りの絡んだある問題を解決してほしいらしい。その代わり、ネイトはジョーの任務を手伝うと言うが……。手に汗握る大人気冒険サスペンス・シリーズ新作!
【期待の新人・新作登場!】
The Bones of the Story
キャロル・グッドマン/栗木さつき訳
著名な作家でもあった大学教授が悲劇的な死を遂げてから25年。その追悼式典が開かれる前日、教授の教え子たちが大学の施設に一泊することになった。かつて作家を志し、教授の下で創作に鎬を削った彼らが旧交を温めるなか、激しくなっていく吹雪。ある部屋のベッドではカラスの死骸が発見され、ベストセラーを生んだ同級生のひとりは姿を見せようとしない。そしてその翌朝、階段の下で首の骨を折ったひとりの死体が発見される――。ベテラン作家が贈る、どんでん返しの連続が待つ、練達の傑作ミステリ!
『銃と助手席の歌』 No Country for Girls
エマ・スタイルズ/圷香織訳【2025年2月刊】
高校を退学になったばかりの少女チャーリーは、ある盗みをきっかけに姉の恋人と争いになり、抵抗の果てに彼を殺してしまう。その場に居合わせた見ず知らずの大学生ナオの協力により、死体を湖に捨て、死体の車でハイウェイを北へ走りだす。しかし道中、謎は尽きない。ナオはなぜ警察を呼ばなかったのか? 背後に迫るのは何者か? そして、車に積まれた十キロの黄金はどこからきたのか――。やがて響く銃声。炎天下のオーストラリアを舞台に帰る家なき少女たちの闘いを描く、ノンストップのクライムサスペンス!
『ボニーとクライドにはなれないけれど』 On the Road with Del & Louise
アート・テイラー/東野さやか訳
コンビニ店員のルイーズは、学費のためにその店へ強盗にやってきた青年デルと恋に落ちた。トレーラーハウスで暮らしていたが、デルの学位取得をきっかけに、不動産業を営むデルの姉を手伝うというまともな人生を始めることにする。だが旅に出たふたりには次々に事件や犯罪が降りかかり、そのたびにあらたな土地へ向かう羽目に。窃盗を疑われ、ワイン泥棒に加担し、結婚式を挙げようとした教会では強盗の人質となり……。果たして、デルとルイーズは安住の地を見つけられるのか? チャーミングな恋人たちを描く連作ミステリ短編集。
Döden går på visning
アンデシュ・デ・ラ・モッツ&モンス・ニルソン/久山葉子訳
スウェーデンで最も美しい場所のひとつとされる南部のエステリエン地方。古き良き雰囲気を残した小さな村の景観を潰すかのように、海岸ぞいにコンクリートの巨大な物件が建つ。そのプロジェクトを手がけていたのはアメリカ帰りの気が強くて嫌われ者のインフルエンサー、イェシー・アンデションだった。そんな彼女が内覧の日に殺される。ストックホルムから来たお洒落なエリート中年警官と地元の駆け出しの若い女性警官がコンビを組んで事件の解明に挑む。スウェーデンを代表するミステリ作家のひとりアンデシュ・デ・ラ・モッツが共著者と組んだシリーズ第1弾。
The Red Palace
ジューン・ハー/安達眞弓訳
1758年2月、月夜の昌徳宮。難関試験を突破し、宮廷医女となったヒョンは、朝鮮国王の世継ぎ、荘献世子の診察に赴いていた。そのとき、恵民署で4人の女性が殺されたという情報が入る。恵民署は庶民を診察する施設で、ヒョンが医学を学んだ故郷も同然のところだ。慌てて恵民署に戻ると、中庭には4人の遺体が。3人は医女、最後のひとりは宮廷女官で、全員が鋭利な刃物で喉をかき切られていた。捕盗庁の役人は、要領を得ない供述をしたジョンスを容疑者と断定。ジョンスはヒョンが師と仰ぐ大切な存在で、彼女が犯人だとは信じられない。若き従事官のオジンは、都に出まわる怪文書をヒョンに見せ、捜査への協力を要請する。ふたりがたどりついた意外な真相とは――。朝鮮王朝時代を舞台に、18歳の聡明な男女が謎解きに挑む爽快なミステリ! アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
A Cruise to Murder
ドーン・ブルックス/田辺千幸訳
新人警察官のレイチェルは、婚約者に裏切られ、深く傷ついていた。豪華客船コーラル・クイーン号で看護師として働いている親友のサラからの誘いで、心を癒やすために2週間のクルーズ旅行に出かけることにした。船は快適で心地よかったが、3日目に寄港したリスボンで、同じ船の客人である老婦人がトラックの下敷きになって死亡してしまう。レイチェルは船で親しくなっていた男性カルロスが現場から走り去っていく姿を見かけたため、自分で事件を調べてみることに……。とびきりの謎解きと、素敵な船の旅。警察官と豪華客船付きの看護師、親友同士の女性ふたりが活躍するクルーズ船お仕事ミステリ始動!
How I Became a Spy
デボラ・ホプキンソン/服部京子訳(単行本)
1944年2月、第二次世界大戦中のロンドン。13歳のバーティは空襲警報を受け、民間防衛隊の伝令係として初の任務を果たすべく、街へ飛び出していった。相棒は救助犬としての訓練を受けたリトル・ルーだ。バーティは通りで一冊のノートを拾ったが、それはイギリスにやってきてスパイになるための訓練を受けたフランス人女性のもので、後半はすべて暗号化されていた。ノートの持ち主である失踪した女性を探していた少女エレノアに会ったバーティは、彼女と一緒にノートの暗号を解読し、スパイの女性の目的と行方を探ることに……。多数の受賞歴を持つYA作家が贈る、戦時下を生きる少年少女の謎解きと勇気の物語!
The Dog Park Detectives
ブレイク・マーラ/高橋恭美子訳
活気に満ちたイーストロンドンの街、運河と緑豊かな公園を舞台に、様々な犬種の犬たちと愛情溢れる飼い主たちが繰り広げられるコージーミステリ。パートリッジパークの草むらで男性の遺体が見つかった。発見者は公園に集まる飼い主グループのメンバー、正確にはその飼い犬たちだ。犬の飼い主ならきっと経験がある(かもしれない)ネタ満載のミステリ。
【人気シリーズ・著者の最新刊】
Playing It Safe(金庫破りときどきスパイ3)
アシュリー・ウィーヴァー/辻早苗訳
1940年10月のロンドン。金庫破りのエリーの前に、陸軍のラムゼイ少佐が現れた。イギリス北部の港湾都市サンダーランドに赴き、現地の人間と親しくなるように、という指示を受ける。サンダーランドに到着すると、往来の激しい通りで背後からぶつかられ、トラックに轢かれそうになる。親切な男性に助けられてことなきを得るが、少佐の手配してくれた宿に入った直後、先ほど助けてくれた男性が前の道路で倒れて亡くなる。これは偶然か、それとも? エリーは空軍パイロットを装った少佐と男性の死について探っていくが……。凄腕の金庫破りと堅物の青年少佐がふたたび活躍!
The Librarian Always Rings Twice(初版本図書館の事件簿3)
マーティ・ウィンゲイト/藤井美佐子訳
わたし、ヘイリー・バークがバースにある初版本協会のキュレーターに就任してから1年が経とうとしていた。協会はミステリ黄金時代の女性作家の初版本収集家だった故レディ・ジョージアナ・ファウリングが設立したもので、彼女の自宅だったミドルバンク館にある。わたしと一緒に協会の運営を担っているのが、レディの長年にわたる親友で、個人秘書を務めていたミセス・ウルガー。現在は協会の終身事務局長だ。このたび、協会の認知度アップや新たな会員の確保を狙い、〈初版本図書館〉である図書室を週に一度、水曜日の午後だけ一般に公開する運びとなった。一方、レディのろくでなしの甥チャールズ・ヘンリー・ディルがわたしのアシスタントとして協会で働きたいと申し出てくる。レディが亡くなってから4年間というもの、あの手この手で遺産をかすめ取ろうと策略を働いてきたディルをおとなしくさせることができるならと、理事会は採用を決定してしまう。そんな折、レディの孫だと名乗る男が現われる。レディに子はいなかったはずだが……。
Bleeding Heart Yard
エリー・グリフィス/上條ひろみ訳
ロンドンにある学校の同窓会で、下院議員の男性が死亡した。刑事ハービンダー・カーが現場に赴くと、部下の刑事キャシーが夫とともに出席していたことが判明する。被害者の死因はインスリン中毒で、ゴミ箱から発見された注射器からは、一型糖尿病であるキャシーの指紋が発見された。彼女は席を立った際に誰かに盗まれたかもしれないと言う。キャシーも容疑者に含めつつ、ハービンダーは捜査を始める。被害者と同じ学年で、彼が親しくしていたのは女優やミュージシャンなど個性的な有名人ばかり。彼らに事情聴取し、21年前に不可解な死があったことが明らかになるが……。巧みな伏線の妙を味わえる、端正な謎解きミステリ。『見知らぬ人』の著者最新長編!
Last Word to the Wise(クリスティ書店の事件簿2)
アン・クレア/谷泰子訳
美しい雪山の書店、ブック・シャレーを切り盛りするエリーと姉のメグは、いとこが始めた結婚仲介業のモニターをしぶしぶ務めることになった。本好きと本好きを、本の好みをもとに結びつける――そんな図書館ディナーの翌日、メグの見合い相手が殴殺体で発見される。前夜、被害者宅を訪ねたメグに疑いの目が注がれるなか、雪原の劇場では第二の事件が起きて……。手がかりは、現場から消えたクリスティの戯曲『ねずみとり』? 書店ミステリシリーズ第二弾!(『雪山書店と噓つきな死体』続編)
Finlay Donovan Jumps the Gun(サスペンス作家が人をうまく殺すには3)
エル・コシマノ/辻早苗訳
サスペンス作家のフィンレイは、またもや窮地に陥っていた。フィンレイがロシアン・マフィアに借りを作ったせいで、殺し屋Easy Cleanの正体を探り出せと脅されているのだ。期限はたったの2週間。殺し屋の正体は警察関係者らしいとしかつかめておらず、フィンレイは手がかりを得るために一週間の市民向け警察学校体験入学に参加することにする。同居人のヴェロと警察学校の授業を受けながら怪しげな人物のオフィスを探るが……。殺し屋の正体を暴かなければ自分や家族の命が危険に! 巻きこまれ系ジェットコースター・サスペンス・シリーズ第3弾!
Pane(P分署捜査班5)
マウリツィオ・デ・ジョバンニ/直良和美訳
ナポリの町で早朝、パン屋の店員が撃たれて殺された。店主の息子で、近所の人たちに愛された店をいずれ継ぐはずの、実直だが平凡な男がなぜ? P分署の面々が捜査を開始すると、被害者の父親である店主が、裁判中のマフィア一家に極めて不利な証言ができることが判明する。殺人は店主に証言させないための脅しと判断し、逆に一家を壊滅させるチャンスと見たマフィア対策班が介入してくるが、ロヤコーノ警部は犯人はマフィアではなく、別にいると推理していた。署の存続を賭け、捜査班はマフィア対策班と真っ向から対立することになる……21世紀の〈87分署〉シリーズ最新刊!
Later Gator(ワニ町シリーズ9)
ジャナ・デリオン/島村浩子訳
シンフルにワニの密猟者が横行。ただでさえ忙しい保安官助手カーターも取り締まりに追われている。少々暇を持て余し気味だったフォーチュンとアイダ・ベル、ガーティの三人も独自に(勝手に)調査を始めるが……。中毒者続出の痛快ミステリ〈ワニ町〉シリーズ第9弾。
修道女フィデルマ短編集6
ピーター・トレメイン/田村美佐子訳
法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが、アイルランド各地を巡り難事件を解決する人気シリーズの短編集。フィデルマが巡礼先で遭遇した聖人の亡骸をめぐる不可解な事件を描く「祝祭日の死体」など5編を収録。
Intrigue in Istanbul
エリカ・ルース・ノイバウアー/山田順子訳
歴史学者の父の足跡を辿ったジェーンとレドヴァースは、彼がオスマントルコの皇帝の宝の謎を追って向かったトルコのイスタンブールで謎の失踪を遂げていることを知る。ジェーンとレドヴァースは手掛かりを追ってイスタンブールからハンガリーのブダペストに向かうオリエント急行に。そこで殺人事件が……。旅情を誘うジェーン・ヴンダリー・シリーズ4巻目。
『死体はどこから?』 The Raven Thief
ジジ・パンディアン/鈴木美朋訳【2025年3月刊】
レバーを引くと現れる秘密の部屋――誰もが夢見たそんな仕掛けを得意とする〈秘密の階段建築社〉。元イリュージョニストのテンペストが働くこの家業の最新の仕事は、カフェ経営者の家の地下室を読書家好みに改造すること。そして今宵、改装相成った地下室で、インチキ交霊会がひらかれる。だが明かりが点滅するなか、8人が囲むテーブルの中央に死体が忽然と……。ミステリへの愛に満ちた、『壁から死体?』に続くシリーズ第2弾!
『悪人すぎて憎めない』 Angels in the Moonlight
クイーム・マクドネル/青木悦子訳【2025年3月刊】
バニー・マガリー刑事には、かつて最高の相棒がいた——1999年、ダブリンでは武装強盗が頻発していた。現金輸送車を襲う鮮やかな手口に、警察本部はカーター一味に目をつける。さらに、彼らが大量のコカイン密輸を計画しているという情報を得た。特捜班に配属されたバニーと相棒のグリンゴは、一味を監視する業務につくが、ジャズ・シンガーの黒人女性シモーンと出会ったことで、全員の運命が思わぬほうへ変わりはじめ……。ノンストップ・サスペンス『平凡すぎて殺される』に連なる衝撃のバニー過去編登場!
The Lady from Burma(ロンドン謎解き結婚相談所5)
アリスン・モントクレア/山田久美子訳
1946年11月。〈ライト・ソート結婚相談所〉にビルマ出身のアデラという既婚女性が訪れる。ビルマで英国人博物学者と結婚し、戦争で英国に逃れてきたが、がんで余命わずかとなってしまったという。彼女は、森で新種の昆虫を見つけることにしか興味がない夫が孤独な余生を送らずにすむよう、自分の死後に後添えをさがしてほしいと依頼する。ところが数日後、エセックス州の森で彼女の遺体が発見されてしまう。自殺と見なされたものの、地元警察の若い巡査だけが殺人を疑い、アイリスの協力を仰ぐが……。元スパイのアイリスと上流階級出身のグウェン、正反対のふたりの謎解き! 大人気シリーズ第5弾。
【名作復刻・クラシック新訳版】
『シャム双子の謎【新訳版】』 The Siamese Twin Mystery
エラリー・クイーン/中村有希訳
【名作ミステリ新訳プロジェクト】
旅行中に突然の山火事に襲われ、命からがら近くの山荘に逃げこんだエラリー・クイーンと父のクイーン警視。不安な一夜を過ごした翌朝、山荘の主が何者かに射殺されていた。刻一刻と火の手が迫る、警察や鑑識の応援も望めない孤絶した環境で、エラリー決死の推理が始まる。手がかりは被害者が握りしめていたトランプのカード――「スペードの6」! クローズドサークル×ダイイングメッセージの謎で読者に挑戦する、国名シリーズ第7弾!
『セヴン・ダイアルズ』 The Seven Dials Mystery
アガサ・クリスティ/山田順子訳
【名作ミステリ新訳プロジェクト】
鉄鋼王に貸し出し中のチムニーズ館に客として滞在していた若者の一人が死亡した。館の本来の主ケイタラム卿の娘で好奇心旺盛で行動的なバンドルは、若者の死に疑問を抱きバトル警部の忠告も聞かず勝手に調べ始める。そんな彼女の目の前で更なる死が。死の間際に被害者が残した「セヴン・ダイアルズ」という言葉は果たして何を意味するのか? 『チムニーズ館の秘密』に続くミステリの女王の冒険小説、バトル警部シリーズ。
『こわされた少年』 His Own Appointed Day
D・M・ディヴァイン/野中千恵子訳【2025年2月刊】
イアン・プラットは16歳の高校生。霧の濃い水曜の午後、自転車で学校を出たのを最後に消息を絶った。当初は単なる家出と思われたが、姉アイリーンの依頼で赴任間もないニコルソン警部の指揮のもと警察が捜索を開始する。かつて優等生だったが、ある時期から不良の仲間入りをし、不自然に金回りがよくなっていたイアン。いったい少年に何が起きたのか? 犯人当ての名手ディヴァインが読者の盲点を鮮やかに突く、傑作本格ミステリ!
『爬虫類館の殺人【新訳版】』 He Wouldn't Kill Patience
カーター・ディクスン/白須清美訳
【名作ミステリ新訳プロジェクト】
第二次世界大戦下、空襲の危機にさらされる首都ロンドンの一角に建つ大蛇、毒蛇、蜘蛛などを集めた施設――爬虫類館の一室で、館長と一匹の大蛇がガス中毒で死亡しているのが見つかる。部屋は内側から厳重に目張りされた密室で、状況は自殺としか思えない。だが、館長はかわいがっていた蛇を道連れになどするだろうか? 名探偵ヘンリ・メリヴェール卿が出馬し、ドタバタ騒ぎの果てに明かされる真相とは……? 巨匠カー中期の傑作、ヘビ年に新訳で登場。
『スケープゴート』 Scapegoat
ダフネ・デュ・モーリア/務台夏子訳【2025年1月刊】
【名作ミステリ新訳プロジェクト】
人生に絶望していた英国人ジョンは、旅先のフランスで自分と瓜ふたつの男ジャンに出会う。引っ張られるままに飲んだ翌朝目覚めるとジャンの姿はなく、持ち物すべてが消えていた。呆然とするジョンは、彼をジャンと信じて疑わない運転手に流されるまま家に連れていかれる。ジャンは伯爵だが所有する工場は経営が危うく、家族間はぎくしゃくしていた。手探りでジャンになりすますジョンだったが……。名手による予測不能なサスペンス。
『マルタの鷹【新訳版】』 The Maltese Falcon
ダシール・ハメット/田口俊樹訳
【名作ミステリ新訳プロジェクト】
私立探偵サム・スペードが謎めいた女から受けた依頼によって、相棒にある男の見張りをさせていると、相棒は射殺され、見張っていた男も殺されてしまう。女の依頼には何か裏がある……。スペードは、マルタ聖騎士団ゆかりの謎の鷹の像をめぐる欲にまみれた抗争に巻き込まれる。ハードボイルドの原点にして完成形と言われるハメットの名作を田口俊樹訳で贈ります。
『本好きに捧げる英国ミステリ傑作選』 Murder by the Book
クリスチアナ・ブランド他/マーティン・エドワーズ編/中村有希他訳
現代英国を代表するミステリ作家にして愛好家マーティン・エドワーズが、英国探偵小説の一時代を築いた巨匠たちの名品から精選した〈本にまつわる〉ミステリ傑作選。毒を盛られた愛書家が、死の直前に蔵書に書き残したアンダーラインの真相。ロンドン警視庁迷宮課レイソン警部が一冊の詩集から繰り広げた推理のゆくえ。作家クリスチアナ・ブランド宛ての原稿依頼書を誤って受け取った女性による奇妙な犯罪の顚末……。謎解き小説や犯罪小説、〈奇妙な味〉のショートショートまで様々なバリエーションで本好きに捧げる十六のミステリ。
◇文芸
The Dandelion Clock
ガイ・バート/山田蘭訳(単行本)
ロンドンでの大規模な展覧会を控える中、ほんの数日の猶予をもらって、ぼくは13歳の夏までの少年時代をすごしたイタリアの村へ帰ることにした。思い出の家を何かにとりつかれたように修理し、少年のころと同じ色に壁を塗りなおしながら、ぼくは展覧会のことも忘れ、これまで封じこめていた記憶が怒涛のように甦ってくるのに身をまかせていた。七歳のとき、近所に引っ越してきたジェイミーのこと。八歳の夏休みをともに過ごしたジェイミーの従妹アンナのこと。ここを離れてからの寄宿学校での生活、そして二十歳を過ぎてからの再会――。『ソフィー』のガイ・バートによる、透明なノスタルジーと哀しみに満ちた畢生の大作。
『ミスター・ミー』文庫版 Mr Mee
アンドルー・クルミー/青木純子訳(創元ライブラリ)【2025年2月刊】
書物に埋もれて暮らす八十代の独居老人、ミスター・ミー。ひょんなことから知った失われた謎の書物ロジエの『百科全書』の探究のため、彼はパソコンを導入しネットの海に乗り出し、読書する裸の女性のライブ映像に行き着く。彼女の読んでいる本のタイトルは『フェランとミナール――ジャン=ジャック・ルソーと失われた時の探究』。18世紀の二人の浄書屋フェランとミナールと謎めいた原稿の物語、ルソー専門の文学教授の教え子への恋情を綴った手記、ミスター・ミーのインターネット奮闘記、この三つの物語がロジエの『百科全書』を軸に縒り合わされ、結ぼれ、エッシャー的円環がそこに生まれる。文学界のエッシャーによる傑作。待望の文庫化。
『失われた手稿譜』文庫版 L'Affare Vivaldi
フェデリーコ・マリア・サルデッリ/関口英子、栗原俊秀訳(創元ライブラリ)
18世紀に消えたヴィヴァルディの自筆楽譜がたどった数奇な運命を、音楽家で音楽史研究家で、しかも画家でもある多彩な著者が、綿密な研究調査により明らかにした、謎解きと冒険譚の魅力を併せ持つ傑作小説。音楽ファンのみならず、歴史小説ファンも大いにに楽しめる一冊。
『不運な奴ら』 The Unfortunates
B・S・ジョンソン/若島正訳(箱入り特装本)
「ストーリーは小説の第一条件ではない。人生はストーリーを語らない。……人生は混沌として、流動的なもので、乱雑なままに終わる」というのがジョンソンの主張である。主人公のサッカー記者が、かつて親友夫妻と住んでいた、ある町に仕事で派遣された。そこで彼は病で29歳にして死んだ友人の記憶を再編成しようと試み、そして再びもといたところに帰っていくという物語。彼の現在と過去は対等に現前する。その同時性を表わすために、ジョンソンは全体を27の部分にわけて、「最初」と「最後」という二部以外はアトランダムに箱に入れて過去と現在の混じり合う混淆と欠落を表現した。実験的手法が人生を鮮やかに描き出す。
The Pavee and the Buffer Girl
シヴォーン・ダウド/エマ・ショード絵/宮坂宏美訳(単行本)
主人公の少年ジムは、両親や親族といっしょにトレーラーハウスで集団移動しながら暮らす〈パヴィー〉のひとり。アイルランドの小さな町で、地元に定住する〈バッファー〉たちの学校に通いはじめるが、好奇の目にさらされたり、不良グループから暴力を受けたりする。そんな中、ぶかぶかの制服を着て周囲から浮いているバッファーの少女、キットと親しくなる。しかし、おだやかな時もつかのま、ジムの病弱の従弟が不良グループにおそわれる事件が起きて――。カーネーギー賞受賞作家シヴォーン・ダウドが、アウトサイダーの少年と少女の出会いと揺れ動く気持ちを繊細に描いた一編に、気鋭の版画家としても活躍するエマ・ショードが挿絵をつけた忘れがたい物語。
Miss Morgan's Book Brigade
ジャネット・スケスリン・チャールズ/髙山祥子訳(単行本)
1918年の北フランス。ニューヨーク公共図書館の司書ジェシーは、〈荒廃したフランスのためのアメリカ委員会〉の招聘を受け、北フランスのブレランクールという村を訪れた。前線からわずか数キロ。戦争の爪痕が色濃く残る荒廃した村で、ジェシーは子供たちのために図書館再建に力を尽くそうと奮闘するが……。1987年のニューヨーク。ニューヨーク公共図書館に勤める28歳のウェンディは、図書館で働く傍ら、作家を夢見て大学の創作クラスに通っている。ある時、仕事中に扱った新聞記事でジェシーという司書が第一次大戦中にフランスへ派遣された記事が気になり、調べていくことに……。危険に直面し、それでも本の力を信じて闘った知られざる女性たち。『あの図書館の彼女たち』の著者が綿密なリサーチによって歴史を生き生きと甦らせた感動作!
Away with the Penguins
ヘイゼル・プライア/圷香織訳(単行本)
ヴェロニカ・マクリーディは気むずかしい八十五歳。スコットランドにひとりで暮らし、お茶をしたり野生動物のドキュメンタリー番組を見たりしながら、そろそろいなくなる自分の遺産をどこへやろうかと考えている。ある日、南極のペンギン研究に興味を惹かれた彼女は、遺産をゆずる相手としてペンギンがふさわしいかを見極めるべく、はるか南の大陸へと一世一代の旅に出た――。頑固でひたむきなおばあちゃんと、愛おしくもひと筋縄ではいかないペンギンたちとの交流を描き、世界20ヵ国以上で刊行されベストセラーとなった、心温まる再出発の物語。
『ナイフ投げ師』 The Knife Thrower and Other Stories
スティーヴン・ミルハウザー/柴田元幸訳(創元文芸文庫)
天才的な技量を誇るナイフ投げ師が、我らの町へやってきた。噂に違わずその腕前は見事なものだったが、彼の公演は徐々に趣向をエスカレートさせ、やがて……。О・ヘンリー賞受賞の表題作「ナイフ投げ師」ほか、自動人形、空飛ぶ絨毯、百貨店、伝説の遊園地など、魔法のごときモチーフを無二の語りで紡ぎだす、ミルハウザーの作品世界。柴田元幸の翻訳で贈る十二の傑作短編。
◇ノンフィクションその他
The Bookseller of Florence: Vespasiano da Bisticci and the Manuscripts that Illuminated the Renaissance
ロス・キング/杉田七重訳(単行本)
フィレンツェのルネッサンスというと、まず想起されるのは美しいフレスコ画や優美な建築だ。それらは素晴らしい画家や建築家の手によるものであるが、同じほど重要な存在――写本ハンター、写字生、学者、そして書籍商を忘れてはならない。彼らこそが、古代の知恵を発見して人々に広め、新しい世界へといざなったのだ。そして、その活動の中心に、ヴェスパシアーノ・ダ・ビスティッチという傑出した書籍商がいた――。写本から印刷へと本のかたちが移り行く時代と、長く忘れられたルネッサンス期の非凡な書籍商の姿を描く、すべての読書家に贈る傑作ノンフィクション!
Lovers in Auschwitz: A True Story
ケレン・ブランクフェルド/杉田七重訳(単行本)
スロバキアで生まれ育ったユダヤ人女性のツィッピ。23歳で後に第二アウシュヴィッツと呼ばれることになる収容所に収容された彼女は、グラフィックデザインの手腕を見こまれて、事務職に就く。そこにポーランド生まれのユダヤ人で、まだ少年の面影を残したダヴィドが到着。初めて目を合わせた瞬間から、ふたりは恋に落ちる。収容所内での恋愛は厳禁で、見つかればガス室送り。ふたりの逢瀬は月に一度、三十分から多くて一時間だった。やがて離れ離れになりつつも、ふたりは奇跡的に生きのびて終戦を迎えた。ツィッピはダヴィドと約束した再会の地に向かうが……。
『消えるヒッチハイカー』 The Vanishing Hitchhiker
ジャン・ハロルド・ブルンヴァン/満園真木訳(単行本)
自動車の運転手がヒッチハイカーを道中で拾うが、目的地だという家に辿り着くと、乗客はいつの間にか車内から消えている。不思議に思った運転手がその家を訪ねると、ヒッチハイカーは確かにその家の住人だったが、数年前に亡くなっていたことがわかる――現代アメリカ社会で「本当にあった」という前置きで語られる数々の噂。乾かすために電子レンジに放り込まれた猫の末路、テイクアウトのフライドチキンを食べたカップルを襲った衝撃、ニューヨークの下水に棲みつくトイレに流された元ペットの恐怖など、実際にあった事件や出来事に基づく、死や誘拐やアクシデント、スキャンダルを物語風に仕立てて流布される「都市伝説」。その研究における基本的文献が新訳にて復活。
このほかにもさまざまな書籍を紹介していきますのでどうぞお楽しみに。2025年の東京創元社もよろしくお願いいたします。