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【エピソードZERO】嗚呼、表現者

「読ませてもらいましたよ。同じような作品は過去にいくらでもあります。それに三流だ、あなたの作品は」
誰もが私にそう言うのだ。その度に溜息が私の心と頭に霧をかける。その霧が私の未来を曇らせ奪っていく。そこで私はその霧を振り払うように攻撃的になる。
「だからなんだと言うのですか」自分を守るための自己防衛だが、虚しさが広がっていく。
「これ以上の侮辱の言葉を私は知らないので、ここまででわかってもらえませんか。私もプロです。プロの判断です」
「いいや、わかるはずもない、あなたの言っていることは」
「そうですか。残念ですね。あなたは素人ですからね。業界のビジネスをわかっていないですから」
私はすでに諦めているが、残った最後の一滴、そんな気持ちを振り絞って反抗する。
「確かにあなたの言うことは正しいのでしょう。ただ、わたしは表現者だ。まだ技術は足りないし、発想も洗練されていないかもしれないが、表現者なんだ。今、自分のできる精一杯をぶつけるしかない。たとえ同じようなものが過去に存在しようが、下手糞だろうが、教養がなかろうが」
「では、もう時間ですので」彼はうんざりした表情で書類を見ていた。もはや私の顔も見ていない。
「ありがとうございました。また逢う日を楽しみにしています。私はすでに表現者としての一歩を歩んでいる。歩き続けるさ。いつかきっとあなたにもう一度逢うでしょう」
「その時にはよろしく」

 彼は私がここから出ていくのを書類を見つつ待っている。私は振り向くまいと部屋から去った。

◇◇東京ハバナの理屈の想定外のコーナー◇◇
脆く壊れやすければ壊れやすいほどいい。理想には程遠く、賛同者は誰もいない。まぁ、自己満足でいい、と自分に言い聞かせています。それは逆に振れれば、きっと熱狂へと変わるから。その可能性があるって信じるだけで諦めないでいられるから。帰り道にはいつでも気持ちを奮い立たせています。
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