CMディレクター中島信也が語る、「好かれる広告の本質」とは 〜下水道を若者へと発信する難題をどう解決するか〜
中島信也「CMを使ってできるのは、そのCMを見た人の気持ちを少しプラスに動かすことぐらいですよ。その積み重ねによって、やがてお気に入りになったり、ひいきになっていくんです。そのぐらいしか、できないんです。」
初めましてこんにちは。コールは基本全マシ、二郎系ラーメンを愛する明治大学2年生の桐生と申します。
中島信也さんのお話をする前に、少しだけ真面目な話をさせてください。”少しだけ”です!
ではいきます!↓↓
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みなさんは、”下水道”と聞いた時、どんな気持ちになりますか?
おそらく「臭い、汚い、よくわからない」といった、ポジティブではなく、ネガティブな印象を持っていると思います。
僕も同じです。
私たちだけでも十分わかるとおり、現代における若者の下水道に対する関心は、非常に低いのです。
それは、下水道が見えなかったり、あって当たり前のものだったりするからです。
これを、「クリエイティブの力で学生と一緒に解決しちゃおう!」と東京都下水道局さんが、クリエイティブと学生の可能性に気づき、あるプロジェクトを実行するに思い立ったのです!
それが、東京地下ラボ。
これって、とてもすごいことじゃないですか?
東京都下水道局×クリエイティブ×学生ってだけでパワーワードに感じたのは僕だけではないはずです。
そしてこのプロジェクトは今年で2年目がスタートしました。そして、今年の地下ラボでは“動画”がクリエイティブを担うのです!
(中島信也が語る「好かれる広告の本質」とは まで後少し!!↓)
映像に興味のある美大生や、都市を研究する学生など、このプロジェクトに興味を持った様々な学生が集い、今まさに進行中のこのプロジェクト!
そしてなんと、8月20日に首都大学東京で開催された第一回のワークショップで、有名CMディレクター中島信也さんが、特別講師に抜擢されたのです。さすが東京都さんとだけあって、豪華な講師でございます汗。
こういった経緯で、今回中島信也さんの貴重な講演を拝聴することができました。
僕は、このプロジェクトの広報チームとして、参加しています!
では、真面目な話はこれくらいにして、中島信也さんに学ぶ「好かれる広告の本質」について!↓↓
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CMディレクター中島信也が語る、「好かれる広告の本質」とは 〜下水道を若者へと発信する難題をどう解決するか〜
・CMができることは、見た人の気持ちを少しプラスに動かすぐらい。
中島信也:「CMを使ってできるのは、そのCMを見た人の気持ちを少しプラスに動かすことぐらいですよ。その積み重ねによって、やがてお気に入りになったり、ひいきになっていくんです。そのぐらいしか、できないんです。」
そう語るのは、有名CMディレクターの中島信也さん。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業し、日清食品カップヌードル「hungry ? シリーズ」のCMで、日本人初のカンヌ国際広告祭のグランプリを受賞し、その後も有名なCMを次々とディレクションしており、日本でも有数な敏腕CMディレクターです。
有名CMディレクターから、こんな言葉が出てくるのは、正直衝撃的でした。僕はてっきり、CMのすごさを語り具体的なノウハウを教えてくれる講義だと思っていました。ですが、中島信也さんは、「CMは、大したことはできない」というのです。中島さんによると、CMができることは限られていて、人の気持ちを少しプラスに動かしていく程度だというのです。
そのプラスを積み重ねてやっと、お気に入りやひいきにつながっていく。そして、それを実現するには、ある不思議な力が必要だというのです。
僕は、CMは何か特別な力を持っていると勘違いしていました。
確かに、クリエイティブに興味がある学生にとってのCMと、一般の方にとってのCMとでは全く別の存在ですよね。
制作側がこういった、関心の居場所に盲目的になってしまうのは、CMに限ったことではありませんよね。まずはこの意識を持つことが大事なのだそうです。
・「 想像心 」 を使って、「 喜んでもらイズム 」を実現する。
「CMという表現に接した人の心を少しプラスに動かすには、「想像心」が大切です。相手の心を想像し尽くし、なんかこのCM好きだなと思ってもらうためにはどうしたらいいのか。その上で、相手が少しでも嫌な気分になるものは、避けなければならない。」
中島信也さんによると、心をプラスに動かすには「想像心」が必要だそう。
どういう技法を使うのか、どういう構成にするのか、というのはあくまでも表現のパートで、根っこにあるのはその人が「このCM、好きだな」と思えるのかどうか。
それを考えていたら自然と人が傷ついたり、嫌な気持ちになるものは避けていけるというのです。それが達成されて初めて、理屈や知識を超えた”魅力”という不思議な力を施すことができる。
それはビジュアルであったり、音や言葉であったり、あらゆる芸術によるもの。これらはあくまで“表現”に過ぎないというのです。
中島信也さんは物事の本質を追い求め、ある姿勢を貫いているのです。
それは
「人に好きと思ってもらうために、考え抜く。」
僕を含めた会場の参加学生達が、中島信也さんの心に訴えかけ続けるプレゼンテーションに、自然と引き込まれていきました。
・広告とは自慢である。自慢する人は好かれない。嫌われないように自慢するためには魅力が必要。
「広告っていうのは、自慢なんです。自慢する人は人に好かれませんよね。CMも同じです。では嫌われないように自慢するにはどうするのか。それは、見る人の気持ちを想像して魅力のある自慢に変えるんです。」
確かに、何も想像せず工夫しなかったら、CMというのは自社の商品やサービス、キャンペーンをより多くの人に知ってもらうために”自慢”する行為ですよね。
自慢をされて嬉しい人はいませんよね。その自慢を、想像力を使って”魅力”あるものに変えていく。
中島信也さんが作った有名な日清カップヌードルのCM。「hungry?」というキャッチコピーで、人や動物の食欲をコミカルかつシンプルに描いたCMですが、確かに「面白い、好きだなあ」と感じる魅力がありますよね。
「下水道局の今までの広報活動も、どちらかというと下水道の魅力を伝えようとするばかりで、「想像心」を持てていなかった」と、東京都下水道局の広報の方も実感していました。
下水道も同じなのですね。情報を受け取る側を想像し、魅力をどのように演出すれば良いのかを考える。それができれば、今回のプロジェクトのゴールである「若者に下水道の魅力を伝える」ということを達成できる気がします。
それだけでなく、今流れているCMを見てみると、「いかに短く魅力を出せるのか」という工夫がなされていることがわかります。auの三太郎のCMなんかも、広告を見せられているという感覚よりも、ちょっとしたドラマを見ているような感覚になれますよね。
各社のCMは、自慢だけでは効果が無いことをわかっているので、魅力を追求している。そうすることで、CMそれ自体がエンターテイメントとして成立しているのだと、僕は感じました。
参加学生はみんな食い入るように聞き、必死にメモを取るなどして、中島信也さんのCMに対する姿勢に感銘を受けていました。
最後は、中島信也さんの代表作を見せて頂き、笑いあり、感動ありの講演が終了しました。
ここで、今回の中島信也さんの講演の重要な部分をおさらいします!
・CMができることは、見た人の気持ちを「ほんの少しプラスに動かす」程度。
・「ほんの少しのプラスを積み重ねて」、初めてお気に入りや贔屓に繋がる。
・「喜んでもらイズム」を達成するには「想像心」を働かせる。
・自慢する人は嫌われる。だからこそ、「魅力的な自慢」にする。
今回の講演は、クリエイターにとって本当に大切なのは、「人に好きと思ってもらえるもの・体験」をつくる事だと、教えてくれました。
それは、次世代を担うクリエイターに、「本質的なことを忘れないでほしい」というメッセージなのだと、わたくし桐生は感じました。
講演参加学生の作品に活かされることは、間違い無いですね!
講演後は個人ワークへ
中島信也さんの講演の後は、30分の個人ワーク。参加学生は30秒の動画の具体案を出し合いました。
それぞれが出したアイデアをプレゼンテーションしました。
その中から、私が気になった案を、少しだけ紹介します!
① 地下アイドル、下水道
「下水道局の取り組みを歌に乗せ全力なアイドルと、それを全力でサポートするファン。“縁の下の力持ち”として、少し不憫に描かれる下水道アイドル。果たして彼女達は無事に地下アイドルを抜け出せるのか。」
下水道局は表舞台になかなか現れません。ですが、いつも全力で頑張っています。
これって地下アイドルも同じですよね。そこに着目して、下水道を擬人化したアイドルに、全力で歌って踊ってもらい、それを全力で応援するファンたち(下水道局の職員さん)のオタ芸を描写するのです。
アイドルが踊っていて下水道について歌っていたら、「なんだこれ?」となりますよね!この映像が実現したら、私も思わず応援したくなってしまいそうです笑
② アースくん、暴走。
「東京都下水道局の公式キャラクター“アースくん”が、下水道を日々支えているのに、あまりにも若者に認めてもらえないので、巨大化し暴走。機能しなくなった下水道。その被害はついに、都市へも影響を及ぼしてしまう。」
下水道って見えないし、日常の中で考えることってあまりないですよね。でも、下水道がなかったら私たちは安心して水を使えないし、トイレも使えない。
あまり意識されませんが、命に関わる大切なインフラなんです。まさに縁の下の力持ち。
この映像ではアースくんが暴走することによって下水道の機能が停止すると、どんな不祥事が起こるのかを、コミカルに描きます。
実際に街が大変なことになっていく映像を見たら、私達も下水道のありがたさをもっとイメージできるようになると良いですね。
紹介はこの辺まで!
このように、30人以上の参加者がいる中それぞれ全く違った切り口で、下水道の魅力を伝えようと試行錯誤していました。主催者である東京都下水道局さんも「私たちでは到底思いつかないアイデアばかりです!今回のプロジェクトにとても期待しています。」と言ってくれました!
まだまだブレストの段階ですが、どんな作品ができていくのかとても楽しみです!
今回はこの辺で失礼しようと思うのですが、その前に!
最後に少し、告知と昨年の活動について紹介いたします!
〈告知〉
なんと、あのライゾマティクスの齋藤精一さん、「東京防災」を手がけたNOSIGNERの太刀川英輔さんによる公開講義+公開ブレストが10月17日に首都大学東京で開催されます!
今回のプロジェクトに関連して、「都市のインフラ×クリエイティブ」の可能性について熱く語ってくれるみたいです!
そしてなんと、東京地下ラボに参加している学生でなくても参加できます!
先着200名様限定招待みたいなので、クリエイティブや都市のインフラ、もちろん下水道に興味のある方などは、この機会に申し込んではいかがでしょうか?
申し込みはコチラから↓↓
〈 東京地下ラボの昨年の活動について 〉
実は、昨年の東京地下ラボでは動画ではなくZINEを作成しました!
一応桐生の作品も受賞しているので、気になった方は見つけてみてくださいね!笑
記事はコチラからどうぞ!↓↓
最後までお読みいただきありがとうございました!
以上、二郎系ラーメンを愛する広報チームの明治大学2年生、桐生でした!
次回の記事は、このワークショップの翌週に行われたフィールドワークについてです、またお会いしましょう!