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小田亮 著「利他学」

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#利他

マルチレベル淘汰

「利他学」より  集団内への利己的な個体の侵入を防ぎ、利他的な集団の方が利己的な集団よりも全体としての適応度を上げることになれば、利他的行動が進化し得るとではないかという考え。進化生物学者デイヴィッド・スローン・ウィルソン提唱。  閉鎖的な集団を考える。集団同士の交流はほぼなく、厳しい環境に置かれているとすると、お互いに助け合う集団では全体的に適応度が高いが、利己的な個体ばかりで、足を引っ張り合っている集団ではそれに比べて適応度が低くなる。  このような場合には、集団の

利他学2

「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P19-21から要約 「仕組み」と「機能」の関係「仕組み」についての問いと「機能」についての問いは別々のものだと述べたが、実はこの二つは無関係なものではない。  道具を例にとって考えてみよう。例えばハサミだ。一般的なハサミがどういう「仕組み」になっているかというと、二つの刃が交叉するように固定されていて、反対側には穴があけられている。なぜこんな形ちかといえば、穴の部分に指を入れて刃を操作し、紙などを二つの刃で挟み込んで切断するためで

利他学1

「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P16-18から要約 四つの「なぜ」 なぜ、人間は他人に対して親切にするのだろうか。人間に限らず、動物一般の行動について、「なぜ」そんなことをするのだろう、ということを考えるときには、四つの異なる考え方がある。これは、動物行動学の創始者の一人であり、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞したニコ・ティンバーゲンが提唱したものだ。  四つの「なぜ」とは ①その行動が起こる仕組みは何なのだろうか。 ②その行動にはどんな機能があるのだろ