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李下に冠を正さず

こんにちは。弁護士の大城聡です。
“#検察庁法改正案に抗議します”がわずか3日で470万ツイートを越えて、話題になっています。

毎日新聞の「余録 凡人も賢者も1人1票の平等を分かちあう民主政治は…」(2020年5月13日)では、巣ごもり民主主義として紹介されています。

小さな声をあげる大切さ

”巣ごもり民主主義”の発端となった女性は「自分から発信した初めてのオンラインデモでした」としています。この方が書かれた「#検察庁法改正案に抗議します デモで知った小さな声を上げることの大切さ」は、どのような気持ちで始めようと思い、どのように言葉を選んで言ったのかがわかり、とても良かったです。


だから燃えるような怒りというより、静かな意思を感じられる表現にしました。それはデモビギナーの自分にとっても、自分らしく気負いなく言えるワードだったなと思います。ドラマなどの例えは、まだ知らない人にも分かりやすく伝わるようにと心がけました。独りぼっちで寂しかったので、バニーの絵文字を入れて行進してるっぽく見せました。             (#検察庁法改正案に抗議します デモで知った小さな声を上げることの大切さ(2020年5月11日)より引用)



三権分立の基盤を揺るがす問題

検察庁法改正が強引に行われれば、検察の独立を損ない、三権分立の基盤を揺るがすことになると私も強く危惧しています。日本弁護士連合会は会長声明でも指摘されているように、閣議決定で法解釈を変更して東京高検検事長の勤務延長を決めたことが問題です。まずこの閣議決定を撤回すべきです。

人生100年時代ですから、定年延長を議論することは賛成ですし、そもそも「定年制」自体が今後の社会にふさわしいかも議論してほしいと思っています。しかし、検察庁法改正を国家公務員法改正とセットにしたために、内閣委員会での審理となり、法務委員会での審理がない点は大いに疑問です。もし国家公務員法の改正を急ぐのであれば、検察庁法改正は切り離して、十分に時間をかけて審理すべきです。


改めて検察庁法の一部改正に反対する会長声明(日本弁護士連合会 2020年5月11日)
検事長の勤務延長に関する閣議決定の撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案に反対する会長声明(日本弁護士連合会 2020年4月6日)
全国38弁護士会が反対声明ー検察官定年延長を巡り(2020年5月13日付「共同通信」)


李下に冠を正さず

”李下に冠を正さず”とは、他人から疑いをかけられるような行為は避けるべきであるという故事です。今、政府与党は、疑いがかけられている検察庁法改正をあえて急いで進めようとしているように見えます。

新型コロナウイルス感染拡大で多くの人たちが困難な状況にある今、本当にこの検察庁法改正を急いで行う必要があるのでしょうか。

政府与党は圧倒的な議席数を持っていますから、強引に検察庁法改正を実現することは可能です。しかし、いま必要なことは、李下に冠を正さずという言葉のように自制的、抑制的な姿勢です。

ひとりの主権者として、政府与党に対して、自制した対応をとるように求めたいと思います。

                               以上
(本稿は2020年5月14日時点の情報に基づく記事です)
                       文責 弁護士 大城聡