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買ってほしいな、でも無理しなくていいよって思ってる/谷中店 横山

私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。

連載第4回目は谷中店の横山さん。怒られてばかりで自転車にも全く興味のなかった入社当初から、自転車のカスタムにこだわるようになった今に至るまでを聞きました。

谷中店 横山さん
大学2年生のときにアルバイトとしてトーキョーバイクに入社。セールススタッフとして谷中店に勤務。普段は美術大学に通い、製作に勤しむ日々。

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こんなに続くとは思っていなかったアルバイト

ーートーキョーバイクで働き始めて、もう3年目になりますね。

ほんとですか!?一番長く続いているバイトだ・・・。

ーーこんなに続くとは思っていませんでした?

最初の1年目は全然ダメダメで、めっちゃ怒られてました。同じ時期に入社したアルバイトの久保さんとも距離感があって、最初は仲良くなれるとは思わなかった。今は姉妹のような感じですけど。

ーーどんなことで怒られていたんですか?

お客さまの前でそれ言っちゃダメでしょ、みたいなことです。例えばトーキョーバイクの直営店ではスニーカーも販売していますよね。

トーキョーバイクの直営店では、自転車以外にもスニーカーやバッグなど暮らしを楽しく心地よく過ごすためのアパレルや雑貨も販売している

私はそれまでのアルバイトで靴を販売したことがなかったんですね。それでお客さまに「このスニーカー、ゴムの匂いが少し気になるんですけど、どうですか。」と聞かれて。その時に「まぁ、馴染みますから。足の臭いに変わるんで大丈夫ですよ。」って答えたりとか。

ーー斬新な返答ですね・・・。

ちょっと非常識なことが多かったので、その場では怒られないけど、後でこういうところは直したほうがいいよっていつも指摘されていました。

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ーー最初はそういう時期が続いたんですね。

お客さまとのコミュニケーションが上手くできなくて、最初は合わないなーって感じでした。辞めようかなーって。だけど他のスタッフが面白い人が多いし、とりあえずやってみて、もう無理だと思ったら辞めようと思っていました。

それまでのアルバイトでは、お客さまとお話しするのは売り場案内の時くらいで、粗が出るほど会話することがなかった。だからそんな風に指摘されることもなくて。

ーー最近はどうですか?

気づいたらあまり言われなくなっていましたし、これは自分がいろいろ直す時だなと途中から思って色々直し始めたんです。

注意されても不機嫌にならないようにしようとか、指摘されたらちゃんと受け止めてすみませんって言えるようになろうとか。最初は心の中で、なんだよ!細けーなー!みたいな感じでしたけど、確かにそうだなって思って。

そうしたら他のアルバイトの子とも仲良くなったり、みんなでご飯も行くようになって。一緒にいるのが楽しくなって。
自分が素直な丸い心になったら、みんなの良いところを見つけられるようになった。2年間かけて。優しくなりました。

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バイトの人、イコールあんまり好きじゃないってイメージがあったんで、連絡先を交換するのもそれまでしたことがなくて。職場の人といちいち気を遣って休日に会うのも面倒くさいし、「聞いて〜新しくこれ買った!」なんてLINEをしたりも絶対なかった。

私としては、今までじゃありえない感じの珍しいバイト先ですね。

買い物好きだけど、接客されるのは苦手。だから意識していること

ーートーキョーバイクには接客マニュアルがないですよね。どんなことを意識していますか?

私は自分が買い物に行く時に、店員さんに声をかけないでほしい!と逃げまくるタイプなんです。だから仕事でお客さまに声をかけるのに、結構考える時はあります。ちょっと見たいだけなのにぐいぐい接客されたら、お店に居づらいじゃないですか。

ーーお客さまが自転車のモデルや色で悩んだ時はどうしていますか?

いてもいいんですよ、という雰囲気を醸し出します。

私はお客さまに「こっちの方が似合ってるので、いいんじゃないですか」と言って、後からやっぱり違う方にしておけばよかった・・と思われるのが怖いんです。だからアドバイスで誘導したりはしないですね。

かといって声をかけないでいると、お客さまも早く決めなきゃいけないのかなとか、こんなにお店に長居してもいいのかなとか、考えちゃうと思うんですね。だからお店に居てもらうのはウェルカムです!!という雰囲気を出して、そういうことをあまり感じさせないようにするしかできないなって。

悩んでいるお客さまには「ここで写真だけ撮って、家に帰ってイメージを膨らませてから来てもいいんですよ」とか、「お家の洋服と照らし合わせたほうがいいんじゃないですか」と伝えて、お帰りいただいちゃうこともあります。

もちろん買ってもらいたいけど、自分がやられたら嫌な接客はやらないです。買ってほしいな、でも無理しなくていいよって思ってる。だから私が接客するお客さまは、検討で一度帰られて後日買いにいらしてくださる方が多いですね。

私みたいな年代のお客さまも多いですが、思い切りで買える金額じゃないと思うので。今日は買わないけど買うまでにイメージを膨らませればいいって思ったら、ワクワクして帰れるじゃないですか。

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絶対買わないと決めていたトーキョーバイクをついに購入

ーー最近横山さん自身もトーキョーバイクを買いましたよね。

そもそもトーキョーバイクに入社する前は、自転車は家と駅の間だけで使うただの移動手段でした。アルバイトに応募したのも、自転車自体に興味はあまりなかったけど、学校に近くて時給が高いからだったんです。

ーー応募理由が正直ですね。

トーキョーバイクに入ってから初めて自転車で出かけるようになったんです・・・。それでも入社した時は、絶対自分はトーキョーバイクを買わない、他のスタッフはみんな買っているけど私は騙されない!って思ってました。

注)トーキョーバイクでは、入社したスタッフが必ず自転車を買わなければいけないというルールはありません。日常的に自社の自転車に乗ってお遣いに行ったり、周辺を散策したりして、モデルの違いや特徴を体感するようにしています。

ーーそれが2年経って、自分のトーキョーバイクを買ったんですね。特に学生にとってはかなり大きな額の買い物ですよね。どんな風に買うところまで気持ちが育ったんですか?

アルバイトで仲良くなった久保さんがトーキョーバイクを買って楽しそうだったり、お店のみんなと谷中から日本橋まで自転車でピザを食べに行ったりして、そういう時にいいなって思いました。自分の自転車があれば、みんなとそのまま自転車で遊びに行けるんだ、そういうことをもっとしたいって。

他にも会社の自転車を借りて、谷中・駒込・上野周辺のギャラリーを巡ったりするようになって便利だなと。あることのメリットの方が多いな、とだんだん思ってきたんです。

ーー買うと決めてから、モデルや色はすんなり決まったんですか?

それが決めてから1ヶ月悩みました。毎晩お風呂でカスタムも考えて。
そういう風に時間がかかったので、お客さまにもじっくり考えても大丈夫ですよと伝えていますね。

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好きなものと好きな時間

ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?

廃盤モデルなんですけど、自分が乗っているTOKYOBIKE SSです。

(注)TOKYOBIKE SSはシングルスピード(変速機がついていない)のシンプルなモデル。そのコンセプトは同じくシングルスピードの「シンプルでちょうどよい」TOKYOBIKE MONOに現在は引き継がれている。

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私は美大に通っていて、作品制作のための自分のアトリエがあるんですが、それが2階なんですね。変速機がついていないシングルギアのモデルを選んだのは、アトリエに自転車を運び入れる時に軽いほうがいいからです。あとは変速機がカチカチなるのが嫌だったので。

ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?

これも自分の自転車につけているもので、英国の老舗サドルメーカーBROOKSのオリーブ色の革サドル(現在は廃盤)です。このサドルを初めて見た時にかっこいい、これが欲しいと思いました。

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このサドルに合うように自転車をカスタムしました。グリップも同じメーカーで揃えようと思ったらなかったので、問屋街を周って同じ色の革を見つけてきました!それを切って、最後は同僚に縫ってもらって作りました。タイヤやブレーキも色を合わせるために変えたりして、このサドルのために自転車を作りあげました。

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ーーそんなにカスタムしたんですね。絶対買わないと決めていた人とは思えませんね。

入社した時だったら、ありえないですね・・・。

だから自転車のスペックが別にわからなくても、色が可愛いとかあの籐籠をつけた自転車に乗りたいっていうのがスタートでもいいなって思うんです。靴が可愛いから、それにあわせて今日の洋服を決めよう!みたいな感覚で自転車を選ぶ方法もあるよって。

ーーここからは少しプライベートな質問です。1日の中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?

友達とLINEをしている時ですね。楽しすぎて、LINEが来ていない時も振り返って、あのくだり好きだったなぁって思い出しています。それが一番楽しいですね。基本友達は少ないので、2人くらいとしかしないんですけど。

ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?

いつもの通学路です。電車で通うのと自転車で通るのだと全然景色が違ったり、駅から離れているところにおいしそうなお店があったりしてワクワクします。


取材・文/小西
写真/橋原