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自信をもって、お客さまのための提案をする/谷中店店長 本多

私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまでに関わっているスタッフを一人ずつご紹介します。

連載第1回目は今年の春から谷中店店長となった本多さん。昨年10周年をむかえた谷中店はトーキョーバイクの最初の直営店です。店長就任直後のチームスタッフとのコミュニケーションや、お客さまとの関係のつくり方について語ってくれました。

本多 翔(ほんだ かける)
東京サイクルデザイン専門学校在学中にトーキョーバイクでアルバイトをはじめ、高円寺店勤務、中目黒店副店長を経て2020年から谷中店店長。

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アルバイトから店長になるまで

ーー今の仕事とこれまでについて教えてください。

今僕は店舗での接客・メカニック・マネジメントの3つの業務をおこなっています。
最初は学校に通いつつ、アルバイトとしてメカニック修行からスタートしました。トーキョーバイクの組立をまずは学ぶんですが、仮組といって自転車をざっくり形にするという作業だけをずっとやっていました。

(注)トーキョーバイクの自転車は工場で7部組とよばれる状態で梱包され、各店舗に運ばれる。その後、自転車を乗れる形に組み上げる仮組と気持ち良く乗れるよう細かい部品の精度を調整する本組の二つの工程を経て、お客様に納車する。

しばらく取り組んだ後に社内で試験を受けて、それからようやく本組の修行に。その後再び社内の試験を経て、組立をまかされるようになりました。
だいたい1年はかかっていますね。

それからはお店の営業日にはお客さまの接客をして、定休日には自転車の組立をひたすらするという繰り返しの日々でした。その頃は目の前にある仕事をこなし、お店をまわすということに集中していました。

この春店長になってからは、お店としてお客さまに楽しんでもらいたいし、まずは働く僕らが楽しくなきゃと思うようになりました。
そのために働くスタッフみんなが楽しめる環境をつくろうと努力するようにしています。僕もそうですが、誰であっても「はぁ、今日も仕事だ・・・」よりは「よし、今日も仕事だ!」という職場の方が、いい接客ができると思うので。

ーー店長になって、半年たちましたね。具体的には日々どんなことを意識しているんですか?

谷中店に店長として異動になったとき、ほとんどのスタッフと初めましてだったんですよ。お互いに言いづらくてもやもやするのは嫌だったので、まずはコミュニケーションをなるべくとるというのを意識しました。
たわいもない話をしたり、他のスタッフがこれからやりたいと思っている夢の話を聞いたり、僕が住み込んでいる銭湯に遊びに来てもらったりとか。

(注)本多は銭湯好きが高じて、駒込にある殿上湯という銭湯に住み込んでいる。他の銭湯住み込みメンバーと一緒に担当する掃除や番台担当のほか、SNS発信用の写真撮影も担当しているとのこと。

最初は緊張したんですよ、だからやっと慣れてきたって感じですね。

お客さまとはできるだけ信頼関係をつくりたい

ーーお店とお客さまの関係では何か意識していることはありますか?

お店に来るお客さまには、新しく自転車の購入を検討されている方と既にトーキョーバイクに乗っていてそれを修理に持ってきてくださる方とがいます。

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どちらの場合でもお客さまと信頼関係を築けるといいなと思いながらお話ししています。きちんとそれができると、お客さまが悩んだときにしっかり提案ができるので。

ーー確かに接客していると、お客さまが悩まれる時ってありますよね。そういう時はどうしているんですか?

(注)トーキョーバイクで新規に自転車を購入するお客様の場合、自転車のモデルや色、オプションパーツなどを選ぶのに平均30分〜1時間程度かかる。特にフレームカラーは色数が多いため、そこで悩まれるお客さまは多い。

僕は自分を押し付けるわけではないのですが、その方の雰囲気を見たうえで、「こっちじゃなくて、そっちの方がいいと思います」と伝えることはありますね。もちろんお客さまに最後は選択してもらいたいんですけど、僕としてはおすすめですという言い方はします。

ただ、言う時はめちゃめちゃ自信を持って言ってます。

ーー言う時は、自信を持って言うんですね。
はい。接客しているときに、ちゃんとお客さまに寄り添えていると、お客さまが悩んだ時に自分が素直に感じたことを伝えられる関係が築ける気がします。

ーーどんな風に信頼関係を築くんですか?

お客さまにとって自転車を買うにあたって必要な情報って限られているんですね。自転車のモデル・色・オプションパーツをそれぞれ説明して、その後実際に乗ってもらう。買うまでのステップは、それだけです。

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それを聞くだけでもいいのかもしれないけど、「生活の中でどういう使い方をするんですか?」という一言から、自転車選びの話ではなく普段の生活の話になっていくんですね。そうするとスタッフとお客さまではあるんですけど、ただの人と人とのコミュニケーションにちょっと近くなるというか。

他にもお店では実際に試乗をしてもらうんですが、そのときに「適当にこの辺を10分くらい走ってきてもらって大丈夫です」と言ってポーンと送り出すよりも、「そこの角を曲がっていくと走りやすい道にでるので、気持ちいですよ。そこを抜けると谷中のお寺がたくさんあって・・・」といった感じで+αでお話するようにしています。

ただ踏み込み過ぎてはいけないとも思っているので、塩梅はその方によるんですけど。ドライな感じの接客の方がいい方もいますし、そのお客さまにとって心地よいコミュニケーションを考えています。
それは新規で自転車を購入される方も、修理に持ち込まれる方も同じです。

ーー修理もですか?

そうです。自転車を修理するってマイナスをゼロにする作業なんですね。だから修理でお店に来るというのは、お客さまにとってはいい来店理由ではないんです。
でも帰る時に来てよかったなって思えてもらったら、すごく嬉しいなって。なるべくそう思ってもらえるような対応を心がけています。

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ーー修理で来店されるお客さまの自転車を見て、お客さまが思っていなかった部品も交換したほうがいいことってありますよね。例えばパンクの修理に来て、他もチェックしたら・・・というような。そういう時はどんな風に内容をご提案するんですか?

確かに思っていなかった部分も修理をするというのは、お客さまにとって余計にお金がかかる感覚になると思います。だけど、ベストな状態で渡すことはお客様の満足にもつながると思っています。

「ちょっとこの部品壊れかけてるんだけど、まだ乗れるんで耐え忍んでください・・・」と渡すよりは、「もうばっちりなので、これでがしがし安心して乗ってください!」とお渡しできた方が、確かにちょっとお金はかかりますけど、お客さまにも満足してもらえるんですよ。
ちゃんと伝えると。

ーーちゃんと伝えると・・・ですか。それは体感があるんですね。

体感があるんですよ。体感でしかないんですけど。
お店としての使命だなって、最近は思っているんです。
お客さまに満足していただける提案ができて、そこに対してきちんとお金をいただける。それってすごくいい関係だなと思って。
なんかまだまだですけど、そこは絶対そうだなと思ってやっています。

ーーそういう風に本多さんが思うようになったきっかけはあるんですか?

これはその、自分がよくやったんです!って言いたいわけじゃないんですけど・・・・最近ちょこちょこ本多指名が入るんですよ、昨日と一昨日も。

ーーえ、指名が入るんですか?そんなことあるんですね。

お一方は以前に僕が修理で対応した人なんですけど「本多さんいらっしゃいますか?」って来てくれました。
もうお一方は外国人の方で、実は僕ぜんぜん英語がわからないんですけど、わからないなりに必死にやりとりしてたら「あなた本多さんですよね?この前もタイヤを修理してくれましたよね。また次回もお願いしたいです」って言ってくれて。

まだ数はそんな多くないですけど、すごく嬉しくて。信頼してくれて、僕がその人にとってこれがいいと思った提案に対して「それでじゃあお願いします」って快くオーケーを出してくれる感じが、すごく嬉しくて。

お客さまの満足度というか、その辺は数字としては見えないところだなとは思っているんですけど・・・。

でも一番大切なのは、来てくれたお客さまに対してできる限りの提案を、その人にとってよい提案をすることかなと思っています。

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好きなものと好きな時間

ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?

今はもう廃盤になってしまっているモデルですが、僕が乗っているTOKYOBIKE SSですね。
必要最低限のパーツしかついていない見た目がとても好きです。
すっきりとしていて、とてもかっこいい。見た目も、大切な機能の一つだと思うので。

変速機がないからこそ、何も考えずに好きなスピードでペダルを回す。
その乗り心地もお気に入りです。

(注)TOKYOBIKE SSはシングルスピード(変速機がついていない)でシンプルなモデル。そのコンセプトは同じくシングルスピードの「シンプルでちょうどよい」TOKYOBIKE MONOに現在は引き継がれている。

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ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?

バスケットです。僕が自分の自転車につけてるバスケットは、コンパクトなんですけど、背中も空けられるし、普段使う自転車としてカゴがついていると幅が広がるなっていうのは感じています。ネットを使えば野菜とかそのまま入れられるんですよ。僕はカゴに直接ぽーんって入れちゃいます。

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ーーここからは少しプライベートな質問です。1日の中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?

のんびりすることですね。写真を撮ることもそうだし、銭湯のお湯につかることもそうだし、布団の中に入る瞬間もそうだし。僕の人生のテーマです。のんびり生きること。

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ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?

今はもう銭湯に住んじゃっているんですけど、その前から銭湯にはよく通っていたんですね。銭湯あがりの家に帰るまでの自転車は最高ですね。

あとは僕はテントを積んで自転車で旅をしたりするのが好きなんですが、両サイド田んぼみたいな田舎道を走るのが好きです。本当最高です。


取材・文/小西
人物写真/橋原
好きなものと好きな時間 写真/本多