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陸・海・空を活用した最先端テクノロジーをリアルに体感! 「2050年の東京」をポジティブにする技術が集結SusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラム<中編>

エンターテインメントとテクノロジーの合わせ技で
難しそうな技術に親しみやすく

SusHi Tech Tokyo 2024ショーケースプログラムが開催された「海の森エリア」では、東京ベイeSGプロジェクトにおける「先行プロジェクト」で社会実装に向けて研究開発が進められている最先端のテクノロジーを紹介

東京2020オリンピック・パラリンピックでボートやカヌーの競技場となった海の森水上競技場に面した「海の森エリア」の広大なフィールドを活用し、「環境改善・資源循環」「最先端再生可能エネルギー」「次世代モビリティ」の3つのテーマの展示や実演、コンテンツの紹介などが行われました。 

そして「海の森エリア」の会場アンバサダーを務めたのが、週刊少年ジャンプで連載中の『僕とロボコ』で描かれているキャラクターの「ロボコ」です。
SusHi Tech Tokyo2024ショーケースプログラムでは、より多くの人たちが、最先端技術や次世代テクノロジーを身近に感じられるよう、漫画や食といったエンターテインメントと様々な技術がコラボレーションしました。

海の森エリアでは、ロボコを入口に、小さな子どもたちでも抵抗感なく技術に興味を持てるよう、“リアル”ロボコを投入するなどして会場を盛り上げました。

海の森エリアの会場でお出迎えしてくれた
アンバサダーの“リアル”ロボコ
(©宮崎周平/集英社・僕とロボコ製作委員会)

また、世界初の水素混焼エンジンを搭載した旅客船「ハイドロびんご」が、有明客船ターミナル、青海客船ターミナルと海の森船着場を結んで就航。現在使われている船の多くは化石燃料で動くため、CO2を排出しない、環境にやさしい水素をエネルギー源として走る船舶の開発が完了し製品化が実現していることをアピールしました。

水素混焼エンジンを搭載した旅客船「ハイドロびんご」
(写真提供/ジャパンハイドロ株式会社)


さまざまなアイデアを用いたり、
得意分野を研鑽することで
今ある社会課題をクリアにする最先端技術が勢揃い

「環境改善・資源循環」のテーマでは、水上のルンバ!?のような掃除ロボットを発見! 自動化技術を駆使して多くの水上ドローンや水中カメラを開発する炎(ほむら)重工及び海床ロボットコンソーシアムの「海ゴミ清掃ロボット・高機能桟橋」です。水上の浮遊ゴミを回収し、充電ステーションに戻ってくるまで全自動で動きます。

水上に浮かぶゴミのなかでもプラスチックゴミは長らく滞留し、水生生物が餌と間違えて食べてしまったり、マイクロプラスチックが生態系に悪影響を及ぼすことなどが懸念されており、「2050年の海は、魚よりもゴミの量の方が多くなるのでは」とまで言われ、海洋ごみ問題は深刻化しています。

海上のゴミ清掃に人手が不足している中、活躍するのがこの「海ゴミ清掃ロボット・高機能桟橋」。3m×3mと比較的小柄なサイズ感ながら、バッテリーが続く限り自動で海上のゴミを集めることができ、充電ステーションは太陽光発電で蓄電しています。

「海ゴミ清掃ロボット・高機能桟橋」。
ポートとなる桟橋に停留している様子

「実は東京都には運河がたくさん走っていて水辺も多くあり、それだけにあまり綺麗ではない水面を目にする機会も多くあります。生活圏の水辺ですから、やはり水面は綺麗な方がいいですし、海洋プラスチックも元を辿れば浮遊ゴミに起因することも多々あるので、このロボットが活躍する場も多いのではないかと思います」と炎重工株式会社事業開発部の白坂智之さん。

人の生活圏から発生する浮遊ゴミを発生源に近いところで回収することで、海まで流れ出てしまう海洋ゴミを減少させ、美しい水辺の環境を守ります。2050年の未来の東京の海が、魚の数よりもゴミの量の方が多くならないよう、活躍が期待されます。

炎重工株式会社の白坂さん

「最先端再生可能エネルギー」においては、風力発電や太陽光発電といった自然エネルギーの技術が多く集まりました。その中で、風力発電はCO2を排出しないため、環境への負荷が少なく、資源の枯渇も考慮する必要のない発電として重要視されています。現在、風力発電に多く使われている風車型の発電機は、設置する場所が限られるほか、風が吹いていない場合や、暴風時のような風が強すぎる場合も発電できず、さらには躯体の破損やその修理などに課題がありました。

しかし、三鷹光器株式会社が開発した「垂直軸型風力発電」なら、弱風でも強風でも発電し、複数のモジュールを積層することができ、最上部には太陽光発電を併置することができます。また従来型に比べて省スペースなので、店舗や工場などの屋上や、空きスペースを活用した風力発電が可能となっており、今すぐにでも活用できる技術として注目されました。

垂直軸型風力発電(写真奥)で発電された電気が、
コンテナ内(写真手前)に送られている


テクノロジーがもたらす未来の東京に
期待を寄せたくなるプログラム

最先端の技術が集まる海の森エリアでは、食事もハイテク。
日本科学未来館の会場でも展示した、微弱な電流を流すことで減塩食でも塩味を引き出す食器「エレキソルト」を使った食事体験が話題を呼びました。

通常、塩味のもととなるナトリウムイオンは口内で分散され、舌で味として知覚されないものもあります。しかしエレキソルトを使えば、分散しているナトリウムイオンを微弱な電流によって舌の方に引き寄せ、塩味が強くなったように錯覚を起こさせてくれるのです。

感じ方は、食べる料理や個人によっても差があるようですが、塩味を強く感じることで料理のコクが増して美味しさも増強されるのだそう。これなら、食生活をより豊かにしながら、ストレスなく健康管理を行うことが期待できます。

減塩フードでも塩味をちゃんと感じることができる食器「エレキソルト」。
※イベント時は実験機での体験を提供。

ほかにも大豆やこんにゃく芋を使ったサステナブルな次世代食材のハンバーガーやサラダなどのほか、大豆ミートを、水素などのクリーンエネルギーを使用したグリラーで調理したバーベキューといった料理も提供されました。

サステナブルな次世代食材などを使ったハンバーガー


SusHi Tech Tokyo 2024ショーケースプログラムは、“未来をポジティブにしたい”と頑張っている企業の技術が集積し、お披露目されました。

現状の社会課題は山積していますが、私たち一人ひとりの選択が未来をどのようにも変えることができるのだということ、未来をより良くしようとする企業を応援することが、明るい未来につながるのかもしれないということを、胸に刻むことができる海の森エリアのプログラムでした。

(文・柳澤美帆)