南北相法(前編/巻ノ四)
水野南北居士 著
門人 平山南嶽・水野八氣 校
《額を論ず》
一 額は貴人・目上の官を司る。また、運の吉凶を観る。
一 額が狭く、肉が薄い者は目上と意見が合わず、運が悪く、苦労が多い。また、狭くとも肉が厚い者は相応の福分がある。
一 額が広く、豊かな者は、目上からの恵みがあり、運が強い。
△ 額が広く、肉が厚くとも、凸凹な者は目上と意見が合わない。
□ 額が削げていたり、歪んでいたり、とにかく醜い額の者は運が悪い。また、目上と意見が合わず、苦労が多い。
△ 額に傷があったり、凸凹している者は目上と意見が合わない。武士は、主人や上役と意見が合わず、浪人になる事がある。天の恵みは自然と少ない。
□ 額が四角に観える者は発展が遅い。一度大きな苦労をする事がある。しかし、学識が高いことがある。目上に背けば運が悪くなる。この事はよく考えなさい。
□ 額が狭い者は弟(妹)である。長男(長女)に生まれる者のほとんどは、額が広い。
△ 額が狭くても、官禄(額中央)の肉付きがムックリとある者は、弟であっても長男の位になり、身内の上に立つ事がある。
□ 額が広くても官禄の肉が薄い者は、長男であっても親の家を継がず、弟の位になる(弟に劣る)。とにかく、運が悪く、苦労が多い。
□ 額が出ている者は目上と意見が合わない。また、家庭を崩壊させたり、破産する事がある。苦労が多い。
○ 額の皮が厚い者は、貧相があったとしても、必ず貧しいというわけでは無い。相応の福分があり、必ず運が強い。
問う
額が貴人や目上を司る、というのは何故でしょうか。
答える
額は「がく」とも読む。額は、天帝の意味がある「顎(がく)」に通じるので、貴人・目上の官を司る、と言うのである。
*原文には質問者の名前が記載されていない。
快常房が問う
額が広い者は長男(長女)と観るのは何故でしょうか?
答える
額は天に応じる。天は豊かである事を常とする。また、長男(長女)というのは父母の血脈の第一子(初めて授かる子)であり、父母の先祖を生ずるに等しい。ゆえに、その家庭の貴賤(経済状況など)に関わらず、長男(長女)が生まれれば、父母は大いに喜び、愛情を尽くす。つまり、長男(長女)に生まれる者は、生まれた時から父母の心を穏やかにする。ゆえに、天は自然と豊かであり、それに対応する額も自然と広く、豊かになるのである。
西寳寺芥山(さいほうじかいざん)が問う
額が四角い者は発展が遅い(大器晩成)である、と言うのは何故でしょうか。
答える
額は天に応じ、天は円く(穏やかで)、豊かなのを常とする。つまり、額に角がある時は天の形に応じず、天を得る事が出来ない。天を得る事が出来なければ、運が巡り難いので、発展が遅い。額は目上の官であり、広く、穏やかであるからこそ、目上の官と言えるのであり、天を得た、とも言えるのである。額が円(まる)いのは天の形に応じ、四角いのは地の形に応ずる。よって、額が穏やかで四角い時は、天に地の形を得たに等しい。これは「天地陰陽を面上にいただく」の意味があるので、学才もあると言う。ゆえに、学問を積めば発展は早い。
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