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医学界の最先端研究Line-1,line-1についてのまとめ
はじめに
近年、最新の研究でLine-1といういわゆる「がらくた遺伝子」にその役割が段々と判明してきており、医学界を騒がせ始めています。
今回の記事ではそのLine-1についてまとめを書いていきたいと思いますので、宜しくお願い申し上げます。
Line-1とは?
Line-1は人の遺伝子の中で意味を持たない、機能が特定されていない遺伝子と言われている「がらくたDNA」「ジャンク遺伝子」の一種であり、自らのDNA配列を自発的に移動させている遺伝子のことです。
人に限らず、生物のDNA配列の中には「がらくたDNA」「ジャンクDNA」とも呼ばれる、まだ存在意義のよくわからない遺伝子配列が多く存在しています。
しかし、近年の最新研究により、がらくた遺伝子、特にLine-1には潜在的に細胞の老化や、炎症性疾患、老化性の疾患へのかかりやすさなど、今後の医学において根本的な原因究明につながるさまざまな重要な要素を含んでいると考えられています。
初めてLine-1の転移現象が確認されたのは2009年
2001年に終了した「ヒトゲノムプロジェクト」により、人間の遺伝子のおよそ半分が一見無意味な反復配列であることが判明しました。ヒトゲノムの約6分の1、約17%ほどを占める主な反復配列がLINE-1です。
LINE-1は、ゲノムDNAがRNAに転写された後、逆転写により再びDNAとなり、ゲノムのほかの部分を壊して入り込む、レトロトランスポゾンと呼ばれる転移因子です。
LINE-1がヒトゲノムの多くを占めるのは進化の結果であり、これが実際に転移することはほとんどないと考えられていましたが、2009年に米国のグループが、ヒトの脳が発達する過程において神経前駆細胞でこのLINE-1が活性化し、ゲノムのほかの領域に転移する現象が初めて確認されました。
Line-1が様々な病気や疾病を起こすメカニズムは?
神経難病、炎症系疾患、老化系疾患、癌の原因!?Line-1は万病のもと!?
Ⅰ 神経難病について
神経難病の原因がLine-1であるとする研究が発表されていますので、引用まとめと解説を行いました。
神経細胞を障害し炎症を誘導するリンパ球「エオメス陽性ヘルパーT細胞」が神経細胞を傷害するグランザイムBを出すという研究
=以下引用=
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の山村隆特任研究部長を中心とする研究チームは、神経細胞を障害し炎症を誘導するリンパ球エオメス陽性ヘルパーT細胞を2015年に発見してから (Raveney et al. Nature Comm 2015)、同細胞と神経変性の関係を研究してきました。このたび、神経変性疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)とアルツハイマー病(AD)患者の血液でエオメス陽性ヘルパーT細胞が増加・活性化し、神経細胞を障害するグランザイムBを分泌していることを明らかにしました。また、エオメス陽性ヘルパーT細胞は、主にケモカイン受容体CCR5とCX3CR1を発現していることから、中枢神経炎症病巣へ移行する性質を有していると考えられました。ALSでは発症から5年以内の症例でエオメス陽性ヘルパーT細胞が増加し、ADでは認知機能の低下に伴って増加する傾向を認めました。これらの結果より、神経細胞障害活性を持つエオメス陽性ヘルパーT細胞がALSやADの病態増悪において重要な役割を果たすことが示唆され、病勢を評価するバイオマーカーとしての活用や、同細胞を標的とする治療の開発に向けた取り組みが期待されます。
そして、このエオメス陽性ヘルパーT細胞が活性化される原因が神経細胞におけるLine-1の活性化によるものという研究が進んでいるのです。
=以下引用=
実は、神経細胞におけるL1の活性化は、神経変性疾患に共通する特徴的な反応として良く知られていましたが、その意義はよくわかっていませんでした。神経細胞のL1活性化により発現したORF1タンパク質が、エオメス陽性ヘルパーT細胞を活性化するのであれば、結果的にグランザイムBが放出されて、神経細胞が死ぬ可能性が考えられます。そこでSPMSモデルマウス、mSOD1マウスと5xFADマウスの3種類のモデルマウスの神経細胞で、L1の活性化によるORF1タンパク質が増えているのか、について調べたところ、いずれのモデルマウスでも、神経細胞のL1活性化によりORF1タンパク質の量が増えていることがわかりました(図3)。興味深いことに、L1活性化のメカニズムはマウスごとに異なっており、SPMSモデルマウスではエピジェネティックな変化と、芳香属炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor, AhR)の活性化が関わっていました。一方、mSOD1マウスでは、神経細胞の細胞周期が部分的に進むことで、L1活性化が生じることがわかりました。」
ということで
Line1活性化→ORFたんぱく質増→エオメス陽性ヘルパーT細胞活性化→グランザイムB放出→神経障害、炎症
という構図が上記の2つの論文から導き出されるのが分かると思います。
これまで神経難病の根本的な原因はわかっていませんでしたが、Line-1の活性化が神経難病の根本的な原因の一つである可能性があります。
Ⅱ 癌について
Line-1は癌についても重要な役割を担う可能性が示唆されており、様々な癌との関りが複数の論文により示されています
=以下引用=
LINE-1のレトロ転位は、ゲノムの欠失などゲノム不安定性を誘導することが実験的に示されていることから、LINE-1の活性化はゲノム不安定性を惹起して、がんの発生・進展に重要な役割を担うことが推定される
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://npo-jsct.sakura.ne.jp/wwaves/WWAVES Vol.17_p044.pdf
①食道がん
=引用抜粋=
200例以上の食道扁平上皮癌のLINE-1メチル化レベルを解析し、LINE-1低メチル化症例は予後不良であることを明らかにした。
遺伝子のメチル化とは
DNAのメチル化とは、DNAを構成する塩基(A、T、G、C)のシトシン(C)にメチル基(CH3)が付加されることで、遺伝子の働きが制御されることです。遺伝子配列は変えずに後天的に施される化学修飾で、メチル化されたDNAはクロマチンの構造変換を誘導して転写を抑制します。
Line-1の低メチル化とは
Line-1のメチル化が低い状況。Line-1の動きが制御されておらず、無制御な転写が行われている状態。Line-1の活性状態のこと。
この論文を分かりやすくまとめると、Line-1が活性化している状態の場合予後が悪い=病状が悪化したという研究結果となっています。
②大腸がん
=以下引用=
LINE-1 メチル化レベルの平均は大腸癌(53.0土6.2%)、大腸線腫(55.4土5.8%)、大腸鋸歯状病変(55.7土3.3%)であり、大腸癌で有意にその
メチル化レベルの低下が認められた(p<0.01)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmtmr/28/0/28_62/_pdf/-char/ja
③肺がん
④前立腺がん
⑤胃がん
⑥卵巣がん
=以下引用=
LINE-1は多くのがん種で低メチル化していることが示されている。また、大腸がんや肺がん、前立腺がんなど多くのがんでLINE-1の低メチル化が予 後と関連することが疫学的に示されている。ヒトの がんにおいてLINE-1が実際にレトロ転位をおこし てLINE-1が増加しているかどうかは不明であった が、最近、ヒトの肺がんにおいて高頻度にLINE-1 のレトロ転位がみられることが報告されている1) 。 大腸癌では、LINE-1の低メチル化が18q LOH(loss of heterozygosity)と関連することが報告されてい る2) 。前立腺がんにおいてはLINE-1の低メチル化 が8番染色体上の欠失あるいは過剰と相関することが報告されている
=以下引用=
胃がんや大腸がん、卵巣がんなど一部のがんにおいて前がん病変、前がん状態でゲノムワイドなシトシンの低メチル化あるいはLINE-1の低メチル化が 報告されている。大腸においては、大腸腺腫や、大腸がん患者の非がん部粘膜でLINE-1の低メチル化がみられないとする報告もあり、未だ議論のあるところである。胃においては、萎縮性胃炎や腸上皮化 生胃粘膜においてゲノムワイドなシトシンの低メチル化およびLINE-1の低メチル化が報告されている。われわれは、H el i cob acter pyl ori 胃炎の中でも胃がんのハイリスク群と考えられる皺襞肥大型胃炎患者の胃粘膜において、がん関連遺伝子プロモーターの過剰メチル化と関連してLINE-1が低メチル化していることを報告している5)胃炎粘膜からの胃がん 発生にLINE-1の低メチル化が関与している可能性が示唆される。
https://npo-jsct.sakura.ne.jp/wwaves/WWAVES%20Vol.17_p044.pdf
Ⅲ 老化について
そして最も興味深いのがLine-1と老化との関りについてです。
=以下引用=
若年性疾患の治療のための新たな標的が特定される
科学者らは、特定のRNAが早老症患者に蓄積しており、そのRNAを阻害すると老化の兆候が逆転し、マウスの寿命が延びることを発見した。
【ラホーヤ】サウジアラビアのソーク研究所とキング・アブドラ科学技術大学(KAUST)の科学者らは、ヒトゲノム上を飛び回る一連のDNAが早期老化障害に関与していることを発見した。 早期老化、つまり早老症の人では、この可動性 DNA によってコードされた RNA が細胞内に蓄積します。 さらに、科学者たちは、この RNA をブロックするとマウスの病気が好転することを発見しました。
ということでLine-1が早期老化障害に関わり、ブロックをするとマウスの病気が好転することが明らかになりました。
=以下引用=
レトロトランスポゾンと呼ばれるDNA塩基配列は、自身のコピーをゲノムの別の部位に再び組み込むことができるが、これはDNA損傷につながることがある。今回、この過程を阻害することで加齢に伴う健康の衰えを防げる可能性があることが、マウスでの研究で示された。
ということで、様々な疾患や老化に関わっている可能性のあるLine-1について今回はまとめさせていただきました。
様々な刺激に反応するLine-1は人類の進化を促すと共に、そのLine-1特有のウィルスに似た様な動きをすることが原因で、炎症が起こったりや遺伝子を傷付けることにより多くの病気と関わっている可能性があり、非常に興味深い世界最先端の領域となっています。
Line-1は知れば知るほど深いので、皆さんもLine-1についてぜひ調べてみてください。
次回の記事では、そのLine-1疾患を治療するための試みについてまとめていきたいと思います。