老舗とはどうあるべきなのか(日本橋髙島屋新館の配信を終えて)
日本橋高島屋の新館を見ていると、100年近くこの街を見てきた本館へのリスペクトが伺える。
地上31階もの高さを誇る新館だが、専門店部分は本館と高さを揃え、中央通りに面する側の角っこは本館同様丸みを帯びている。中に入ってみるとどうか。本館はやはり荘厳だ。大理石を存分に使用した天井、創業当時のエレベーター。いつ訪れても美術館を訪れたときのような感動を覚える。新館に移れば、行列のできるパン屋にスターバックス。どれをとってもこれまで本館では体験出来なかったものばかりだ。このように今回の新館開発は、これまでの財産を守っていき、来たる変化へ対応していく意志をうまく表しているように見える。
そういえば、三井グループが提唱する日本橋エリアの開発スローガンは、「残しながら、蘇らせながら、創っていく。」であった。街づくりにおいてこの中で最も難しいのは、「残していく」ことではないかと、私は思う。一度壊したものも今の技術を持ってすれば、(完全に同じものに戻すことはできないにしても)元通りに蘇らせることもできだろうし、他の地域を見れば創っていくことはさほど難しくないことは明白だろう。しかし、残していくには、それが支持されなければいけないし、時代に対応していかなければいけない。
日本橋も江戸時代には商業の街として、江戸の街の経済を動かしてきた。けれども、銀座の急成長により、にぎわいも薄れ、今日本橋を商業の街と呼ぶ人はそれほど多くないだろう。しかし、番組の中でも述べた通り、新館を通して日本橋を見てみると、今なお多くの老舗や歴史ある建物が私たちを手招きしていることに気がつく。まだまだ、残していきたいと思えるものがたくさんあるのだ。
古いものを残しながらも、発展していくには、それを守っていく意志と変化に対応していく柔軟性が必要だということ。今回の新館開発から、そんな大切な教訓を学んだように思う。(T.Y)
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