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【シンガポール】改革指導者の矜持
マリーナベイはコンベンションセンター、カジノ、ショッピング、ジム、ホテル、ガーデン、サイエンスミュージアム等を並外れたデザイン力で集積させたMICE(マイス/ビジネス見本市や学会をメインとした複合施設)の成功例。ビジネスだけではなく一般観光まで十分に包含している。
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マリーナベイのコンベンションセンターで開催された旅行業界のカンファレンス(WiT Singapore)にもパッと辿り着ける。顔を出し、お世話になった方々にお礼をお伝えする(かなりフィーチャーしてくださっていて驚く)。
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マリーナベイは設計思想が素晴らしい。程よい距離感にすべて収め、移動が容易。よくあるExpoセンターが広過ぎて疲弊するなんてことはない。合間にちょっとレストラン、ちょっと買い物、もとことんスムーズ。そしてシンボリックで有機的な景観。お堅い見本市や学会のイメージではなく、美的感覚と遊び心が十分にある。
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日本人には苦手な発想かもしれない。私たちは真面目ゆえにビジネスならビジネスだけでとことん追求して集積してしまう。シンガポールは敢えてフォトジェニックなデザインにして、カジノや買い物といった人間らしい欲もマッチすると計算してまとめ上げる。グローバルでの誘致・コンペや資金調達に優れているので、ザハ・ハディットが国立競技場を設計したらこの国は確実に建設しているかもしれないなあ、とぼんやり思う。
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ビリヤードがあり、窓からはスーパーツリーが見える
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このMICEは人工的に造った埋立地。土地が狭小ゆえにコンパクトにせざるを得なかったともいえるが、そのデメリットを逆手にとって余計な空間を造らず、地震がなかったり埋め立てゆえに先住者がいないメリットを最大限生かしているように思う。
ここに立っていると、リー・クアンユーが逆境における強靭かつハイパー有能なリーダーだったことを肌身で感じる。
ずば抜けて聡明であったのはもちろん、国造りをしてシンガポールを生き延びさせるという確固とした信念を持ち、強引かつ剛腕で、自身の私欲を抑える(むしろ持たない)達観性と精神成熟性があった。
他方で、大衆の本質、つまりは安きに流れやすい生態や理性ではなく好き嫌いでの事象判断、日和見な態度や気分の変動、先見性の浅さ、自身との俯瞰視座との圧倒的な落差も、よく分かっていたはずだ。その民主主義の弱点を、客観的に最も合理的な決断ができる自身に長期権力を保持させることで解決した。
それでも、国とは人が基本、と信じていた。民族・宗教のバックボーンを問わず、努力をした者が報われる社会を提唱し、徹底し、機会を提供した。
シンガポールのお札の裏には、文化や偉人・自然ではなく勉強する子どもたちが描かれているのが印象深い。
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シンガポールの地元の学校に通うと、11歳前後で全国試験があり、その成績で一生が決まると言われている。分厚い眼鏡をかけたローカルの子どもたちをよく見かける。
モラトリアム的時間の提供による人間的深みや文化素養の醸成ではなく、国に必要だから、そうしている。
とはいえ、人間性や文化教養は各自で育てられるように政府として仕掛けもしている。極小の国土への郷愁も相まっているだろうが、自然、特に水と森への礼賛を惜しげもなく打ち出す。美術館や博物館を揃え、優れたアートに触れられるようにする。
場の提供に留めたのは、感性の領域として個人差や適性差が大きいことも分かっていたからだろう。
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あくまで自分の人生を懸けたミッションは世界趨勢と大国の中で生き残れる国造りである、それ以上でも以下でもない、という明確な定義がリー・クアンユーの矜持だろう。
自分の立場は政府、つまり社会の構造組成であると自覚し徹底する。
そこに人間洞察に基づく理知的な戦略性とずば抜けた実行力を以て実現されたのが今のシンガポールだ。
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(この後、陸路で国境を越え、マレーシアに向かいます^^)
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