
【シンガポール】アジアで匂いがしない国
この国のエネルギーは日本における福岡市に少し近いかもしれない。
ただ、これほど都市計画が明確になされた合理的かつエンタテインメントに寄せたビジネス都市を他に知らない。

フライト7時間超、到着したチャンギ空港から宿泊するチャイナタウンまではMRT(地下鉄)で約45分。
空港に着いて驚いた。アジア特有の匂いがまったくしない。あの湿った土と埃と汗のにおいが。
MRTで少し雨の匂いがするくらい。
日本の方がほんのり醤油の香りがするほどだ。ドバイやカタールだとシトラス系の香料が漂う。シンガポールは無臭だ。
初めてのシンガポールに期待を持ちながら、ああ久しぶりに旅人に還ってきたなあと高揚感が湧いてくる。
MRTの車内の壁に「No Durian」と書いてあって一人笑う。
この国ではチューインガムを食べてはいけない。罰金対象だ。

沿岸部からほど近いチャイナタウンは、スマートフォンのBluetoothスマートキーで入室する真新しい個室カプセルホテルで1泊10,000円ほどと物価は高い。


マレーシアと異なり、中国系が圧倒的多数で74%、マレー系15%、インド系9%。チャイナタウンの仏教系寺院から数ブロック行くとヒンドゥー教寺院がある。


日本を発つ前夜、海南鶏飯食堂(シンガポールチキンライスが名物)の創業者が最近始めた音楽Barで、前職で顧問をお願いしていた中西さんと飲んでいた。ほぼ満席の中でオーナーは忙しくしながらも、屋台街=ホーカーズを楽しむのに一番重要なのは、頻繁に人気順位が入れ替わるので最新の情報を手に入れること、と教えてくれた。
カプセルホテルから一番近いMaxwellのホーカーズへ行ってみて、その清潔さ、管理の行き届きぶりに驚く。これがアジアの屋台街…?

屋根が作られ、天井にはファンが回り、どの通路でも清掃員がいる。食後のトレイ返却コーナーからは定期的に食器が集められ、まとめて洗浄され、各屋台に送り届けられる。油の匂い、スパイスの匂い、鶏肉の匂い、エビなどの海鮮の匂いはする。ただ、強烈さはない。屋台の看板にはすべて番号が振られていて目当てが見つけやすい。全ての屋台に「Cleannessはシンガポールの基準をクリアしています」とシールで明記されている。そして屋台のおじちゃんおばちゃん自体が小まめに拭いたり整頓したりしている。屋台ではない、これは日本のフードコート。
1965年まで貧民窟だった小領土。ここまで匂いも空気も変えられる。
清潔を教育した強固な意志と管理に俄然興味が湧いた。
Maxwellに加えて金融街ど真ん中にあるLau Pa Sat(ラオパサ)や広い建物の2階に広がるChinatown Complexといったホーカーズ、有名店のチェーンが軒を連ねるいわゆるフードコートにも行き、あれこれ食べ、調べて、結局ミシュラン ビブグルマンの最新2024の情報が信用できるとの結論。
偏りありつつ、自分が食べて美味しかったものベスト3は以下。全てChinatown Complex。
第3位 FRIED K WAY TEOW(屋台番号:#02-173)
平麺のショートパスタ風。香辛料の効いたソースが絶妙。
お父さんが特大中華鍋にずっとリズミカルにおたまを当てて炒めている。



第2位 五十年代(#02-048)
トラディショナルなコーヒー店。CoffeeではなくKopiと呼ぶ。カップを湯で温め、独特なコーヒーポッドで注ぎ、缶詰の練乳やミルクを加えて最後にお湯で割る。甘うま。



第1位 Ann Chin Handmade Popiah (#02-112)
薄餅巻。皮のモチモチが堪らない。天かすの歯応えに、シャキシャキ感ある茹でた大根ともやし、レタスを合わせてある。
揚げ春巻は皮パリパリで、春雨に肉と、5mm角の里芋が包んである。里芋が油を吸って皮がしんなりせず、熱さもキープ。
おっちゃんは丸めた生地を鉄板で押し広げながら焼いていく。見知ったクレープの作り方と全く違っていて驚く。


No Durianをものともせず、ドリアン屋のおっちゃんは陽気だった。

いいなと思ったら応援しよう!
