なぜ子供が「うつ」になるのか、高校生と話してみた
先日、「うつ」を経験した高校生と話す機会がありました。その話を聞いて、子供がうつになる背景には、単純な家庭環境や学校の問題だけでなく、もっと深い心理的・社会的要因が絡み合っていることを感じました。ここでは、その高校生の体験談をもとに、なぜ子供がうつになってしまうのかを考えてみたいと思います。
親の優しさが生むプレッシャー
その高校生によると、両親はとても優しく、自分のやりたいことは基本的に何でもさせてくれる環境で育ったそうです。しかし、そんな理想的にも思える環境が、かえって彼を苦しめることになったといいます。
「好きなことをさせてもらえるからこそ、親の期待に応えなければいけないと思うようになりました。」
この言葉に象徴されるように、自由な環境は一見するとストレスフリーのように思えますが、それが逆に子供にとっての心理的な負担となる場合もあるのです。彼は、自分で自分を縛り付けるような思考に陥り、次第に自分の感情や意欲を見失っていったそうです。
さらに、将来への漠然とした不安が重なり、「何を目標にして生きていけばいいのか分からない」という状態に陥りました。その結果、夜も眠れず、外を歩いているだけで涙が止まらなくなるほどの悲観的な感情に支配されるようになったそうです。
社会と人間関係のプレッシャー
彼はまた、社会のあり方にも問題があると感じていると言います。
「他人と違う道を歩むのが怖くて、自分を押し殺してしまう。逆に、他人が自分と違うことをすると、それを批判してしまう場面も見てきました。」
このような言葉からは、日本社会に根強く存在する同調圧力の影響がうかがえます。他人と違うことを恐れ、人間関係の中で自分を偽ることで、心が次第に疲弊していったのです。また、その結果として人間関係に対する不信感も募り、孤独感が増していきました。
さらに、学校制度についても彼は不満を抱いていました。
「今の学校は、自分たちがのびのびと学べる環境ではない。競争と管理ばかりで、自由に意見を言ったり、自分のペースで成長したりする余地が少ないです。」
このような指摘から、学校が子供にとって息苦しい場所になっている現状が浮き彫りになります。
親との価値観のギャップ
「親はやりたいことをさせてくれるけれど、根本的に教育に対する価値観が古い。」
彼は、親が自分のことを大切に思っているのは分かるけれども、相談相手にはなれないと感じていました。それは、親が持つ固定観念や価値観が、彼自身の考え方や感じ方と大きく乖離しているからだと言います。
例えば、「努力すれば報われる」「いい大学に行けば幸せになれる」といった旧来の価値観が、現代の多様化した社会にはそぐわなくなっていることに、親が気づいていないケースが多いようです。この価値観のギャップが、親子間のコミュニケーションを阻害し、結果として子供の孤独感を深める要因になっているのです。
子供の声に耳を傾ける大切さ
この高校生の話を通じて、改めて感じたのは、子供が何を感じ、何に苦しんでいるのかを大人が正しく理解することの重要性です。
親が優しさを持って接していても、それだけでは十分ではありません。子供の心理的な負担を軽減するには、以下のような取り組みが必要だと思います:
期待の押し付けではなく、子供自身のペースを尊重すること
同調圧力から解放されるような環境作り
学校や社会のあり方を変えるための意識改革
親子間のコミュニケーションを深め、価値観のアップデートを図ること
この高校生が感じたことは、決して一人だけの問題ではありません。現代社会の中で、同じような悩みを抱えている子供たちは少なくないはずです。私たち大人がまず子供たちの声に耳を傾け、一緒に考え、行動していくことが求められています。