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「カメラを止めるな!」の恩返しから考える、不要不急のエンタメ業界が今できること

ゴールデンウィークあらためステイホーム週間に突入していますが、そんな中、1本の新作映画がネット上で公開されたのをご存じでしょうか。

その映画の名は「カメラを止めるな!リモート大作戦!」。
そう、あの映画「カメラを止めるな!」のスピンオフで、27分の短編ですが濱津隆之さんや、しゅはまはるみさんをはじめ、映画カメ止めの出演者が勢揃いして制作された完全な新作です。

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この映画は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて4月3日から企画され、4月13日に制作が発表されました。

4月3日と言えば、日本でも緊急事態宣言が出ることが確実視されていたタイミングで、もはや出勤自粛どころか、映画やドラマ撮影も自粛に追い込まれていたタイミングです。

そんなタイミングで、映画の撮影してるなんて不謹慎な!と驚く方もおられるかもしれません。
しかし、そんな心配は全く不要。
なんと、このリモート大作戦、タイトル画像にあるように完全リモートで撮影、スタッフとキャストが1度も会わずに1本の映画を作ってしまったのです。

スタッフとキャストが1度も会わずに映画なんか作れるの?と思われる方は、とにかくまずは1度リモート大作戦本編をご覧頂ければと思います。

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最近日本でも流行語になりつつあるZoomを思わせる画面構成で、カメ止めファンなら思わずニヤリとするお約束のシーンはもちろん、ビデオ会議あるあるなシーンも満載。
さらには、リモート撮影を一瞬忘れさせるような演者同士が対話しているシーンも作り上げています。

カメ止めからミニシアターへの恩返し

なお、個人的に今回のこの映画の企画に感動したのは、この映画が完全リモートという、非常に画期的な手法で作られているだけでなく、実はこの映画に、カメ止めの上田慎一郎監督や出演者からミニシアターへの恩返しという背景があることです。

映画「カメラを止めるな!」と言えば、2018年から2019年にかけて日本で大きな話題になった作品ですが、その始まりはたった2館のミニシアターでの上映でした。

実はそのミニシアターも、今、未曾有の閉館の危機に立たされています。

もちろん、苦境に立たされている産業は映画だけではありませんが、飲食店がデリバリー、小売業がECなど、オンラインに事業の一部をシフトできるのに対して、映画館は映画自体は映画会社の事業のため、閉館すると収入が一切入ってこないことになります。

特にミニシアターは大きな資本の入っているシネコンと比べると、規模が小さく、数ヶ月の休館により閉館に追い込まれてしまう可能性が高い場所も少なくないそうです。

そこで、全国のみにシアターの運営継続を支援するために、「ミニシアター・エイド基金」という基金がクラウドファンディングで立ち上がっています。

今回の「リモート大作戦」は、このクラウドファンディングのリターンに特定映像を提供する前提で企画されているのです。

すでに、このクラウドファンディングには、この記事を執筆時点で2万人を超える支援者から2億円を超える資金が集まっており、これは日本の文化芸術関連では日本初の快挙だそうです。


カメ止めファンも巻き込んだ参加型企画

さらに「リモート大作戦」撮影にあたっては、上田監督がエキストラ代わりにツイッター上で映像提供を呼びかけ、実際に作品に使用するという視聴者参加型の映像制作にも取り組んでいました。

「リモート大作戦」のエンドロールには、今回の映画のために制作されたダンス動画が掲載され、大勢のカメ止めファンの方々が、出演者と一緒にダンスをするという非常に印象的な映像も見ることができます。

おそらく、ミニシアターと、そしてカメ止めファンによって成し遂げたカメ止めの成功の恩返しとして、上田監督は今回の映画を企画され、映画の中にも、「誰かの気分を少しでも明るくしたい」というメッセージを込めているのでしょう。


不要不急の産業だからこそ今できること

私たちが、この上田監督と出演者の方々による恩返しから学べることはたくさんあるはずです。

映画やドラマの撮影が自粛に追い込まれ、俳優の方々や、映画やドラマの関係者の方々にはリモートで途方にくれている方も多いと思います、
でも、この映画は、リモート撮影でもここまで私たちに勇気をくれる作品が作れることを証明してくれました。

新型コロナウイルスも、私たちの創作の火を消すことはできないのです。

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「不要不急」や「三密」が流行語になり、そうした不要不急や三密の産業自体が不要かのように受け止めてしまっている業界関係者の方は少なくないと思います。

ただ、一見、不要不急に見えるエンターテインメントや娯楽こそが、私たちの日々の生活を豊かにし、苦難を乗り越えるためのエネルギーになっていることを、この映画から私たちは学ぶことできると思います。

それができるのは、映画だけではありません。
前述の2億円を集めているクラウドファンディングのきっかけの1つとなったのは、映画情報誌の取材・編集をされている山口さんの1本の記事だったそうです。


1本の映画、1本の記事、1本の動画、1枚の写真、1つの言葉。
不要不急の産業だからこそ、不要不急の仕事だからこそ、今この自粛期間にもできることが、きっとどんな産業にも、どんな人にもあるはずです。

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カメ止めメンバーの方々からの恩返しのバトンを、私たちがちゃんと受け取め、またそのバトンを誰かに渡すことができれば。

きっと、恩返しのバトンリレーが続いて、少し日本に笑顔を増やして、少し日本を明るくできるはず。

この映画から、そんなメッセージを受け取ったのは、きっと私だけではないはずです。

この記事は2020年5月1日のYahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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徳力基彦(tokuriki)
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