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6年勤めたNTTを退職しましたけど、一時は死ぬほど後悔しました (昭和世代の文系社員編)

ここ数年、大企業の退職エントリーが話題になることが多くなってる気がします。
3月末には富士通の退職エントリーが非常に話題になりましたし。

昨年11月にはNTTの退職エントリーが話題になり、大喜利大会のような連鎖になりました。

何を隠そう私もNTTを6年で退職した人間なので、正直、去年にこのタイトル見た時、自分のことかと思ってしまいました(苦笑)

その時に、NTT時代にお世話になった先輩から、そろそろ徳力が何か書くターンじゃないのか、と背中を押されてたんですが。
なんとなく記事を途中まで書いて放置してしまったのをゴールデンウィークの下書き大掃除で発見したので、令和になったことですし、思い切って公開してみます。

前述の記事はバリバリの研究者の方ですし、私が辞めたのは17年以上前のことですから、世代を考えたら私の話なんぞ参考になる人は少ないと思いますし。

実際にはNTTグループって再編成されてから、ドコモとか、NTTコミュニケーションズとか、東西会社に分離してるので、こうやって明確にNTTって書く人って、もはや持株会社と研究所の人だけだったりするんですが。

実は私自身は、タイトルに書いた通り、NTTを辞めてしばらくしてから、死ぬほど後悔する羽目になった人間です。
たまに講演の機会を頂いた時にはよく話してるのですが、当時の自分にアドバイスするとしたら、「絶対やめるな」とアドバイスすると公言してます。

会社としても個人としても、今もNTTグループの人達には、様々にお世話になってる人間ですから、そういうバイアスは間違いなく入ってますし。
この一連の大企業バッシングの流れだから、NTT擁護だろ、とか思われるの嫌で、記事書こうかどうか迷ってたのはあるんですが(笑)

ネット上の投稿だけ見てると、NTTのような大企業の中には、辞めるべきだった人とか、辞めてせいせいしてる人しかいないように見えて、今、グループの中で悩んでる人が勘違いしちゃいそうだな、と思ったりするので、あえて反対の話を書いておきます。


私がNTTに勤めてたのは、もう20年近く前の話になります。
就職氷河期真っ只中ではありましたし、大学で遊びすぎて会社入りたくない病にかかっていた私は、運良く尊敬する先輩が入っていたNTTに内定をもらいます。

大学が名古屋だったので、名古屋拠点の東海支社採用。
同期は全国で3000人。
東海支社だけでも300人いました。

そんな中で、私は実家が山口県で、中国支社に異動になりそうなのを人事の方々に必死でお願いして東海支社に残してもらったこともあり、東海支社の同期の飲み会の幹事とか、名簿づくりとかをやってたんですよね。

同期会を頻繁に企画したり。同期のメーリングリストを作ってみたりもしましたし。

今振り返っても、300人の同期の中で一番NTTを愛していた自信があります(笑)


ただ、三年経ってから東京本社の株式担当に転勤させてもらい、そのまま再編成で持株会社になった後に、まわりに同期や後輩がほとんどいない職場になって、大きな壁にぶつかるんですよね。

そんなこんなで、自腹でグロービスに通ってみたこともあって、外の世界が見えるようになり、自分が性格的に大企業よりもベンチャーの方が向いてそうというのが分かったこともあり、思い切って転職するわけですが。

(↑こんな本で、実名でサンプルとして取り上げてもらったりもしました)

今振り返ると、あきらかに私の転職は壁にぶつかって心が折れた転職でした。
愛が強すぎた故に、それが片思いだと分かってしまった時の喪失感が大きすぎたと言うかなんと言うか。

このタイミングでは、明確に転職してやりたいことがあったわけでもないんですよね。
外に自分がやりたいことを見つけて転職したとかなら、カッコイイんですけど。私の場合は明らかに違います。

その結果、
なんとなく内定を頂けたPWCコンサルティングに転職させてもらい、
なんとなく1年でコンサルに向いてないことに気がついてしまい、
なんとなく1年でベンチャー会社のアリエル・ネットワークに転職し。

コンサル出身というゲタを履いた勢いで、今までやったこともないマーケティングマネージャーの仕事を担当させてもらうわけですが。
当然ながらソフトウェア業界もマーケティングも未経験の私が、そんな大役こなせるわけもなく。

やることなすこと上手くいかず、結果的に自分の上司が採用されて、自分のクビが切られてもおかしくない状態までいってしまったわけです。

あの頃は完全に自暴自棄になって、オンラインゲーム廃人になってましたからねー。

平日は毎日のように21時とか22時から午前3時とかまでやってましたし。
3連休とか、3日分のお弁当をコンビニで買い込んで、家から一歩も出ずに、ほぼ72時間完全にスターウォーズの世界に行って浸ってました。

英語でプレイしてたのもあり、プレイしてるときは完全に仕事とか、現実を忘れられるんですよね。
ある意味ゲームの世界の方が、自分にとって大事な世界になってて、ホントやばかったです。
楽しかったけど。

あの頃のゲーム廃人の私の首を切らずに残してくれた、アリエルネットワークの小松さんや井上さんはじめとした皆さんには、本当に感謝しかありません。

最終的には、妻のおかげでゲーム廃人を卒業することになり、そのゲームにかけてたエネルギーをブログとSNSにぶつけたところ、視野やネットワークが拡がって、いろんな出会いがあり、今の会社の設立にも携わらせてもらい、アジャイルメディア・ネットワークの社長もさせていただくという希有な体験をしたわけなので。
当然、今は後悔してはいないんですが。

私は運が良かっただけなんですよね。

もしも、あの時にネトゲ廃人を辞められてなかったら。

あのタイミングでブログを始めてなかったら。
ブログブームが来てなかったら。
まぁ、間違いなく、あのままネトゲ廃人として現実逃避したまま、無駄に短期間の転職を繰り返していたのが容易に想像できるわけです。

当時は、表向きは強がっていても、心の底は不安でいっぱいで。
正直、NTTを退職したことを後悔することも良くありましたし、今でも当時のことを夢に見ることがあったりします。

まぁ、私自身がNTTを愛しすぎていたので、普通の人より後悔が残っていたというのはあると思いますが。
やっぱり大きな会社でしかできないことってあると思うんですよね。
自分が辞めてから、いかにNTTが巨大な会社なのか、NTTグループからの仕事で生計を立てている企業が、いかにたくさんあるか、というのに初めて気がついたわけで。

実際にうちの会社も、何度も危ないところをNTT時代の先輩方に救ってもらう結果になってますし。

今も、同期と久しぶりに飲んだりすると、自分がNTTに残ってたら何をしたかっただろうなぁ、とか考えてしまう自分がいたりします。


もちろん、私みたいな組織行動が苦手なタイプは、明らかに大企業は向いてなくて、ベンチャーに転職したこと自体は正解だったと、今では素直に思えますが。

明らかに自分が転職するときは、その覚悟があって転職したわけではなく。

NTTが再編成されてしまったので、せっかく東京に来れたのに自分の次の転勤は大阪かもしれないとか、自分の人事ラインは新規事業とかではなく総務部人事部労働部系らしいとか、MBAにいきたかったのにあっさり落ちちゃった、とか。
そういう自分の思い通りにいかなかったことが起こってしまったから、心が折れて転職しちゃったんですよね。

そんなネガティブな転職だったので、もしあのまま1年で転職を繰り返す人生を歩んでいたら、間違いなく後悔しても後悔しきれない人生になっていたと思います。

そういう意味で、ここ半年間の退職エントリーをいろいろ読んでいて、20年前に似たように大企業を転職したオジサンから今やめようか悩んでいる方々に個人的にお伝えしたいな、と思っているのは「どうせ辞めるなら、やれることをやりきってから辞めた方が良い」ということです。

今、皆さんが勤めてる会社って、なんだかんだ自分で選んだ会社だと思うんですよ。
もちろん、いろんな運不運や、誤解とか勘違いとかもあるとは思いますけど。

就職って恋愛と同じで、長く付き合うと、第一印象とは違って悪いところもたくさん見えてはくると思うんですけど。
ちょっと思い通りにいかなかったとか、嫌いなところが増えたとかで、やりたいこと、やるべきことをやりきらずに辞めると、絶対後で後悔すると思うんですよね。
(労働基準法的に明らかにアウトなブラック企業は別として)

会社を辞めるのって、実は簡単なんですけど。
同じ会社で頑張り続ける選択って、辞めてしまうと難しくなるんですよね。

今いる会社で自分がやりたかったことを全力でやろうとしてみて、目に見える会社の問題点を変える努力をできる限りやってみて、それで自分の中で燃え尽きるなり、納得して自分には合わない会社だと分かってしまったなら。


それなら、素直に辞めるという選択をすれば良いと思います。

それからでも絶対遅くないし、そこまで納得してから辞めたなら、辞めてから壁にぶつかっても、そこで次も逃げずにぶつかれると思います。


一部で、たまにかたられる、会社なんか辞めてブログ書けとかオンラインサロン入れ、みたいな議論には、間違っても絶対に騙されないで下さい。
ブログもオンラインサロンも今の会社にいながら始められるし、普通の会社にいる人の方が、そういう新しいサービスを使うメリットは明らかに大きいんです。
他の人がやってないから。

そんなわけで、もはや令和時代になってしまいましたが、昭和世代の現場からは以上です。


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徳力基彦(tokuriki)
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。