マーケティングの父、コトラー教授が語る、企業が「コモングッド」を重視する未来
ワールドマーケティングサミット2019のオープニングをかざったコトラー教授の基調講演のメモをまとめてみましたのでシェアしておきます。
今年もワールドマーケティングサミットのアンバサダーとして、プレス扱いで参加させて頂いたのですが。
コトラー教授の基調講演は、25分という短い時間の中で、20枚以上の英語のスライドで、後半は特にハイペースでスライドがめくられたプレゼンでした。
(こちらとヘッダーの写真共に、H&Kグローバル・コネクションズ提供)
今回は、プレス以外は写真撮影禁止というポリシーがありましたので、おそらく多くの参加者の方々が、キャッチアップできなかったんではないかなと思い、あえて講演メモを、ほぼスライド写真込みのメモで書いてみました。
多くのポイントが、詳細は書籍につながる内容だったので、おそらくコトラー教授にもゆるしていただけるかと信じてアップします(汗)
今回のワールドマーケティングサミットでは基調講演だけでなく、例年以上に強く、株主のみを重視するのではなく、従業員や社会など様々なステークホルダーに利益を還元する事業を行うべきだという話を強調されていたように思います。
ある意味、日本企業の三方良しからすると、原点に戻った感じもありますが、米国を中心に、環境問題も含め、経済のみを重視した企業運営が明らかに行き過ぎて、効率性に寄りすぎた狭い意味での「マーケティング」が批判の対象になっていることも影響しているように感じました。
それにしても、コトラー教授は本当にたくさんの著書を出されてるんですよね。日本では残念ながらマーケティング4.0とイノベーションマーケティングぐらいしか出版されてないんですが。
コトラーアワードでも、コトラー教授は、世の中の変化が激しいから2~3年に1度は本を書き直しているとおっしゃってましたが、納得です。
「What's next? The future of Business and Marketing」
フィリップ・コトラー教授(ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院)
・資本主義には2種類ある
・古い資本主義は変えなければいけない
・新しい資本主義(北欧型の資本主義)
■古い資本主義には問題がある
・15%もの国民が貧困にあえいでいるのに、たくさんの億万長者がいる
・薬価の高騰により医療請求で破産する人が多数いる
・ほとんどの退職者が貯金がない
■GDPだけで評価をするのは間違っている
・GDPではモノ(Goods)しか評価しない
・社会的に悪いインパクトをもたらすものが売れてもGDPは上がってしまう
・GDPの上昇は、気候や人体の健康を傷つけていることもある(Paul Polman)
・単純にGDPを成長させるだけでなく、人々の人生をいかに豊かにするかを考えないといけない
■民主主義は機能しているのか?
・80%のアメリカ国民は銃規制を求めている
・にもかかわらず議会では何も行われない
・NRAが議員の当否を握っている
・差別主義者や白人至上主義者が台頭してきている
・独裁的なルールがたいしたチェックもされずに実施されている
■3つの指標
GDPのような利益指標を軸として経済成長を目指すだけでなく、人々の幸せや生活が良くなっているかという人々の指標や、地球の環境や自然が良くなっているかという地球の指標を見るようにするべきではないか
■Common Goodを前進させるべし
・Jeremy Bentham ”Greatest Good fot the Greatest Number”
・社会運動のような活動を前進させていくべき
・労働者の権利
・女性の権利
・消費者の権利
・偉大な革命家や活動家が非常に重要
・マーティン・ルーサーキング
黒人の社会的位置づけを変えた
・エレノア・ルーズベルト
女性の社会的位置づけを変えた
・ビル・ゲイツ、The Giving Pledge
インドで多数の子どもの命が失われていることに対して行動し、結果を出している
・お金持ちは、彼らのように良い結果を生み出すために資産や影響力を使うべき
■いくつかの解決策
・政府はお金が必要になるとお札を刷り借金を増やし、インフレを招く
・富裕層に税金を課すべし
現在は富裕層は、貧困層や普通の層に比べて相対的に低い税金しか払っていない
・最高税率を引き上げる
・Wealth Taxを通過させるべし
(Thomas Piketty,Elizabeth Warren,Bernie Sanders)
・最高のシステムはCircular Systemである
富裕層は地域に工場を建てて経済に貢献していると言うが、それは本質的ではない。
従業員にしかるべき給料を払わなければ、消費者が購買を行えない。
循環をさせることが大事。
■ビジネスは社会を助けなければいけない
・古いビジネスモデル
・利益を株主のために最大化するのを目的とする
・新しいビジネスモデルが必要とされている
・全てのステークホルダーに利益を還元することを目標とすべし
■新しいビジネスモデル
・定型化されたチャリティに寄付するだけでは十分ではない
・ミレニアル世代、社会の問題に立ち向かう姿勢を求めている
■ブランドは立ち上がらなければならない
・スターバックスはプラスチックストローを無くすための取り組みに動き出しているし、ユニリーバやナイキなども以前からそうした活動を継続している。
■あなたの会社は、CSRやブランドアクティビズムに適応しているか?
・ブランドアクティビズム
従来はウォルマートは価格が安く、アップルは最先端の端末を作っている、で良かった。
今はそれでは十分ではない。
ブランドがどのように行動するかを消費者は見ているし、期待に添った行動が消費者から求められている
■様々な変化が起こっている
ただこれらは企業にとってリスクになるだけではなくチャンスでもある
■未来のマーケティングとは
・マーケティングにはメジャーアップデートが必要か?
当然。デジタルやソーシャルメディア、AIに対する対応が必要
・なぜか?
・消費者が変わってしまった。彼らがコントロールする時代になっている
・流通やチャネルも大きく変わった
・技術も劇的に変わった
・市場環境も大きく変わっている
・競合環境も大きく変わった
■これからの新しいマーケティングにおける重要なポイントとは
・AI(ソーシャル/デジタルメディア、アルゴリズム)
・マーケティングオートメーション
・カスタマージャーニー
・データサイエンティスト、1to1マーケティング
・ペルソナの構築
・コンテンツマーケティング
・オムニチャネルマーケティング
・ニューメトリックス
・プレディクティブアナリティクス
・リーンマーケティング
・インフルエンサーマーケティング
■誰が企業のマーケティングを管理するべきか?
・営業責任者に任せるべきではない。
営業は重要だがマーケティングではない
■マーケティング部隊と営業部隊の関係はどうなるべきか?
■マーケティングと開発チームの関係はどうなるべきか?
開発者は自分達が完璧な製品を開発したと思い込みがち。
マーケティングはそれが顧客にとって必要かどうかを真剣に考える必要がある
■リテイルマーケティングには何が起こっているのか?
■世界を変えようとしているイノベーションの数々
■何が起こるのか
情報時代において、消費者はベストなブランドを広告や営業担当者に頼らずに選ぶようになっている。
マーケティングの成功の多くは「スマートプライシング」と「強力なチャネルポジションの所有」が生み出すようになるだろう。
■おわりに
もしあなたが5年後も今とまったく同じビジネスをやっているつもりでいるなら、あなたの会社は倒産の危機を迎えるだろう
ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございます。 このブログはブレストのための公開メモみたいなものですが、何かの参考になりましたら、是非ツイッター等でシェアしていただければ幸いです。