パブリッシャーからの出資金はきちんと返さないといけない(インディーゲーム開発者が遭遇する色々なトラブルの話その4)
個人や少人数でのインディーゲーム開発では色々なトラブルに遭遇する事になります。
大手や中小ゲームメーカー勤務なら会社がトラブルを解消してくれる事もありますが、インディーゲーム開発の場合は自分達で解消するしかありません。
中には致命的なトラブルもあり、そういうのを回避するためにも「どういうトラブルに遭いそうか?」というのを紹介していきたいと思います。
今回はシリーズの四回目となります。
一回目はこちら。
<開発支援金制度について>
最近は色々なパブリッシャーが個人開発者やチームでの開発者達、インディーゲーム開発会社などの一部に開発支援金みたいなのを出す場合があります。
インディーゲームはリリースされて初めて収益を得る事になりますが、開発途中は個人や会社の蓄えで各々の開発者が食べていくしかありません。
本業が別にあり、副業として開発している人はともかく。
これを支援するために一定期間分の開発資金をパブリッシャーが出してくれる事があります。
パブリッシャー側としても、売れそうなソフトを作っているところに出資する事で、他のパブリッシャーにそのソフトの販売権を取られるのを予防する事ができます。
しかしこのパブリッシャーが出す開発支援金は必ず何らかの形で返さないといけません。
これでトラブルになって、本来インディーゲーム開発でお金を稼ぐはずが、「結構な額の借金を背負う事になった」という恐ろしい事態に陥る事もあるのです。
<開発支援金の返金方法色々>
パブリッシャーからいただいた開発支援金は通常はゲームをきちんとリリースし、その売り上げから返金していく事になります。
でも、もしゲームがきちんとリリースできなかったらどうなるでしょう?
インディーゲーム開発では「途中で開発が止まってしまった」とか「結局完成しなかった」というのはわりとあるのです。
ゲームメーカーが作っていたゲームも発売に至らなかったソフトがかなりの数あります。
パブリッシャーはそれなりの額を支援金として渡しているので、「ゲームがリリースできなかった時は開発支援金は返金しなくても良い」とは絶対に言いません。
当たり前ですが色々な手段でその金を回収してこようとします。
インディーゲーム開発会社に支援金を出す場合はきちんとした担保を必要とさせたり。
個人や少人数開発の場合は、その個人や少人数で借用書的な物を契約時にきちんと結ばせたり。
少人数の場合は開発者のいずれかが雲隠れした場合も考え、開発者達を連帯保証人として契約させ、残りの人間に開発支援金を返させようとしてくるでしょう。
パブリッシャー側がきちんと貸した金を返させようとするのは会社としてごく当たり前の事です。
しかしそれが元でインディーゲーム開発者がそれなりの額の借金を背負う場合があるのです。
<少人数開発というのがトラブルになりやすい>
個人でゲーム開発をし、何らかの理由でゲームが完成に至らなかった場合はパブリッシャーからもらった開発支援金は借金となり、それを返金していくしかないです。
少人数開発の場合は結構曲者で、「開発支援金を一括で預かっていた人間が勝手に使い込んだり、とんずらして音信不通になった」みたいな事が起きる事もあります。
その場合は元々少ない人数で作っていたのでゲーム開発は止まるし、持ち逃げされた金は残りの人間達が連帯保証人として借金を返していくしかなくなります。
また、「最初から開発支援金を各々のスタッフに分けて与えておく」という場合も、いずれかの人間が何らかの理由で音信不通になってしまうと、その人間の分の借金を残りの人間達が連帯保証人のせいで支払わされる事になってしまいます。
<開発支援金は一度ではなく分割して払ってもらった方がまだ被害が少なくなる>
パブリッシャー側も開発支援金を一括で与えると色々なトラブルになりやすいという事で、一括ではなく分割という形で支払っていくという事をするところもあります。
この場合は途中で誰かが雲隠れしても、被害額をまだ減らせるという事になります。
個人ではなく少人数開発の場合はゲームをきちんと完成させるために人間関係が悪化しないよう気を付けるのはもちろん、金を預かっている人間が勝手に使い込んだり、一部の人間が雲隠れしてしまうのにも気を付けないといけないというわけです。
ちなみにゲームがきちんと完成してもそのゲームの出来が悪く売れ行き不審となり、パブリッシャーが出した開発支援金を一向に返せそうにない場合も、契約書の内容によりますが結局借金という形になり、残りの分は別の方法で稼いで返していくしかなくなります。
インディーゲーム開発は「お金を稼げる」というイメージが強いですが、きちんとゲームを完成できなかったり、ゲームを完成できても内容がいまいちで売れ行きが良くなかった場合は借金をかぶる事になってしまう場合があるのです。
そのため安易な気持ちでインディーゲーム開発の世界に飛び込むのは止めた方が良いと思います。
一番良いのは個人開発で本業が何か別にあり、副業的にインディーゲーム開発をするという形となります。
この場合はパブリッシャーから開発支援金を出してもらう必要が無くなります。
個人ではなくチーム開発の場合でも各々がそれぞれきちんと本業があり、パブリッシャーの出資は一切受けずに副業的に開発していく場合も、完成するかどうかはともかく余計な借金を背負うという事もなくなり安心と言えるでしょう。
第5回はこちらです。