波の音も、潮の匂いも、なんだか懐かしい感じがする。帰ってきた。特に海に対して強い思い出があるわけじゃないのに、そんな風に思うのは、人間の本能なのかな。
砂浜に打ち上げられた鯨の中身は、人が捨てた大量のゴミ。水族館で綺麗に展示されている魚を見て目を輝かせるくせにね、それこそ飼い猫と、野良猫の違いと一緒だ。大事にするのは、自分の為に生きてくれている命だけ、あとは全部軽い、簡単に流されてしまうくらいに。
帰るべき場所があるのは幸せなことだね、もし命の最果てが海だとすれば、最終的に孤独からは救われる。誰かが汚しても、綺麗だと言ってくれる人、綺麗にしたいと思ってくれる人が必ずどこかにいるから大丈夫。おかえりなさい。海の中で、生きていけたらよかった。