夜明け
最後の話をしよう。
君は知っていますか?
君の色をした空があること。
そしてそこで泳ぐ鳥が、とても幸せそうだったこと。
海で魚が溺れたこと。
夢を叶えた人が、必ずしも幸せにはなれないということを。
人は弱い生き物だ。
だから知らないことがあると不安になって、勝手に想像して、勝手に決めつける。
名前に意味はないのかもしれない。
言葉に意味はないのかもしれない。
でも、僕は君の名前が好きだ。
君が嫌いと言った、君の名前が好きだ。
思い通りになんて最初からなるわけがなかったんだ。
何もかもが間違いで、きっと何もかも間違いじゃなかったから、僕は今、こうして君と話をしている。
光は綺麗だ、光だけが綺麗だ。
何も見えなければ、色も、海も、空も、星も、水も、人も、全部夜の闇と同じだ。
朝が来る幸せを、まだ僕らは知らない。
さて、そろそろ時間だ、もう行かなくちゃね。
聞いてくれてありがとう。
でも、僕の言葉は忘れていい。
僕の言葉は、君の中から消えてもいい。
伝えたかったのはそういうことじゃなくて、君の中にも君の言葉が、君だけの言葉があるということ。
それは光。
とても綺麗で、優しい光。
ほら、また夜明けが来た。