子どもたちの目線で/『こんにちは、アンリくん』/文:編集部 小島範子
『こんにちは、アンリくん』は、フランスに住む男の子、アンリくんとねこのミシェルくんの3つのお話が入った一冊。
冒頭はアンリくんの紹介からはじまります。アンリくんには、家族がおおぜいいます。とうさん、かあさん、おばあちゃんが2人、にいさん3人…こうして自然に「数」について学んでいくことができる1話目の「アンリくん」。ひとしきりアンリくんの家族が何人いるかを紹介すると、つぎに登場するのは、ねこのミシェルくん。アンリくんと同じように、フランスに住んでいて、家族がたくさんいます。かあさん、とうさんに、おじいちゃんが2ひき…。
アンリくんとミシェルくんは、それぞれかあさんに頼まれて、市場へ魚を買いに行きます。一番大きな魚をとりあうことになりますが、二人はいいことを思いつきます。「こんなに大きな魚なんだから、わけあえばいいんだ!」こうして二家族はいっしょに魚を食べました。そのうえ、ミシェルくんの家族は、アンリくんのところへひっこしてくることに。
2話目「かさ」では、雨の日に、アンリくんが自分の赤いかさをさがしています。家じゅうをさがしても見つかりません。かあさんにきくと「それならわたしのあおいかさをつかったら?」「ありがとう、でももうちょっとさがしてみるよ」つぎに、おじさんにきくと、「わたしのくろいのならあるけれど」にいさんは、「ぼくのみどりのをつかっていいよ」…なんといっても大家族、さまざまな色のかさがあります。こうして、「色」の名前が紹介されます。
3話目は「なんようび」。曜日という概念は、小さい子にはなかなか難しいものです。
さて、今日が何曜日かわからないアンリくんに、ミシェルくんが教えるのですが、毎回ひとつ先の曜日をいいます。周囲の人たちに「きょうは◯ようびですよね?」と確認すると、みな、そう思い込んでしまいあわてはじめる…。
本書は、絵本作家カールとフランス語教師も務めたヴァシュロンとの共作。アメリカでは英語版と同時にフランス語版も刊行され、フランス語の教科書としても使われたそう。図書館学を学び、司書として勤務していた二人が、子どもたちの目線に立って、どうやって楽しく「ことば」を伝えようか、相談しながら物語を組み立てていったようすが想像されます。
思わず笑ってしまう物語の楽しさはもちろん、本書のもうひとつの魅力は、イラストです! いまならば「へたうま」といわれてしまいそうなカールの絵は、シンプルで味わい深く、読者に安心感を与えてくれます。続刊『アンリくん、どうぶつだいすき』も刊行しました。合わせてお楽しみください。
また、カールの絵が気に入ったという方は、ぜひ絵本『侯爵夫人のふわふわケーキ』(平凡社)や『とびらのむこうに、ドラゴンなんびき?』
『このねこ、うちのねこ!』(徳間書店)なども読んでみてください。どれも突拍子もないストーリー展開の、ユーモアあふれる絵本です。
文:編集部 小島範子
(徳間書店児童書編集部「子どもの本だより」2024年5月/6月号より)