本を薦める
最近、小学1年から4年の途中まで暮らした家の近くへ行く機会がありました。数十年ぶりでしたが、近所にある大学を目印に歩いていくうちに家の番地を思い出し、たどり着くことができました。自分の目の高さがまったく違ううえに、近所の家々も、当時住んでいた家も建て替えられていたため、「覚えてる!」という景色に出合えなかったのは残念でしたが、それでも懐かしさにひたりました。
思いおこせば、そこに住んでいたのは本のおもしろさを知り始めた時期。駅前の文庫で薦めてもらった本、兄の塾の先生に教えてもらった本…その頃読んだ本には、それらの本を薦めてくれた大人がいたことを思い出しました。
自分で選ぶ本は漫画ばかりだった私に、「これ、おもしろいよ」「この本がおもしろかったなら、次はこれを読んでごらん」と教えてくれる大人たちがいたおかげで、自分からは見えなかった本の世界の扉を開くことができたのです。子どもたちの年齢や興味にあった良い本を薦める大人の存在が大切だということを改めて実感しているところです。
文:編集部 小島 範子
(徳間書店児童書編集部「子どもの本だより」2024年9月/10月号より)