屋根裏部屋の古い本
「子どもの本を作る人になりたい」と思ったのは、中学生の頃でした。児童文学の新刊を読んでもおもしろく感じられなくなり、大人の本にはまだあまりなじめず楽しめる本がなく(当時はYAというジャンルはまだありませんでした)、「それなら自分でおもしろい子どもの本を作ればいいんだ!」と、勝手に決めたのです。
その頃は、誰にも必ず訪れる死というものについて、真剣に考えた時期でもありました。自分が死んだ後には何が残るだろう?と考えた時に、ふわっと頭に浮かんだ一つのイメージがありました。「いつかわからない未来、屋根裏部屋で一人の女の子が古い本を見つけ、夢中になって読んでいる」場面です。その古い本が、自分がいなくなった後も残った「自分の作った本」だったら…自分の存在も、まったくの無になるわけではないのかも、と感じられました。
10代前半のそんな夢を幸運にも実現し、送り出してきたたくさんの本。その中に、本当に、一人の人間の命より永い命を得て、未来の子どもたちと出会ってくれる本が何冊かでもあれば、本望!という気がしています。
文:編集部 上村 令
(徳間書店児童書編集部「子どもの本だより」2024年7月/8月号より)