子どもの頃を忘れない大人に/ 『飛ぶ教室』/文:石川素子
『飛ぶ教室』は、エーリヒ・ケストナーが1933年に発表した児童文学です。舞台は10歳から18歳の少年たちの通うギムナジウム(大学進学をめざす中高一貫校)の寄宿学校。「飛ぶ教室」というのは、主人公たち5年生が練習しているクリスマス劇の題名です。父親が失業中でクリスマス休暇に帰省する費用もままならないマルティン、親に捨てられ天涯孤独なジョニー、勇気のないことを悩む貴族の出のウーリ、腕っぷしが強くいつも腹ペコのマティアス、皮肉屋で冷静なゼバスティアンの、境遇の異なる仲良し五人と、舎