第8号:顧客開発を通じてビジネスモデルの仮説検証(2021年10月29日配信)
トクイテンの共同創業者の豊吉です。トクイテンメルマガの第8号をお届けします。前回の続きで会社設立前のお話をします。ロボット開発と同時並行で進めていた顧客開発の話です。
2021年3月ごろの日報を振り返ると顧客開発をしていたという記述が何度も見つかります。顧客開発というのは私の理解で一言でいうと「誰が、いくらで、本当に買うか?」という仮説を検証する作業です。
ラーメン屋を始めようとしているときで例えると
顧客開発ではない
おいしいラーメンを研究する
かっこいい店をデザインする
チラシを配布する
顧客開発である
別の場所で良いので屋台で販売してみる(味は美味しいか?本当に買う人はいるか?)
試食会を開催する(商圏にラーメンに興味ある人はいるのか?美味しいか?)
商圏の人に個別インタビューをする(地域にラーメン屋は必要とされているか?)
という感じです。店を出す前にこういう活動をすることが大事です。顧客開発を事前にしておくことで
欲しいと言う人はいたけど、本当に買う人はいなかった
といった失敗を事前に防ぐことができます。要するに先に売れるかどうかを確認して、売れるなら作る、売れないなら方向転換するという作戦が取れるようになります。参考書籍としては「リーン顧客開発」がお勧めです。
私はこの顧客開発という手法に2011年に出会い衝撃を受けました。こんな方法で事業を作ってみたいと思って始めたのがMisocaでした。
Misocaでは事前登録サイトを作ったり、知り合いの20人ぐらいに電話や対面でインタビューをするということをしました。この取り組みによって事前登録で100人以上の登録、インタビューでも3〜4人が「そんなのがあれば絶対にお金を払う」と言ってくれたので開発を進めました。
前置きが長くなりましたが、今回のトクイテンでもさまざまな仮説を検証して却下してきました。当時は収穫ロボットを作れば売れるという仮説で動いていました。
これまで検証した仮説
どれも人に聞けば「あるといいね」「欲しいよ」とは言ってくれるものなのですが「今すぐ欲しい、頭金を払うよ」とまで言ってもらえるものはありませんでした。
この頃はとにかくインタビューにいき、話をたくさん聞きました
大小さまざまな規模の生産者10以上
農業大学校関係者
耕作放棄地に悩む行政
アグリテックのスタートアップ
などです。私はこの頃は農業関係者の知り合いが多かったわけではないので、知り合いに聞いたり、Twitterで知らない人に声をかけたり、インタビューに対応してくれたりした人にさらに紹介をお願いしたりしていました。みなさん本当に親切にしてくれる人が多く、今でもこの頃のことを思い出すと温かい気持ちになります。
こういった相手に明確なメリットのないお願いをするのは私は苦手なのですが、ここは使命感というか、どうせロボットを作ったりしてしまったら、こういう人たちに売り込みに行かないといけないので「前か後かどちらの方が話が聞きやすいと思う?」と自問しながら一歩ずつ進めて行きました。
この顧客開発をやってみて印象的だったのは、農家・生産者といってもさまざまな人たちがいるということでした。特に現状維持でよい人が多く、一方で拡大志向の人や法人は増えていると感じました。これにより農業人口はXX万人だから1%に売れればY円の売り上げになるというような一括りにする考えは危険だとわかりました。
また、栽培施設にもいろいろあるということでした。地面が土のところがあればコンクリートのところがある。段差があるとこがあればレールが敷いてあるようなところもあるといった具合です。これではロボットを作ってもそのままどこでも動くようにするのは難しそうです。
結論として出たのは、収穫ロボットなどは作れるが、それだけを売るには買い手が少なすぎ、売れたとしてもカスタマイズやその後のメンテナンスが大変だということでした。
活動としては得るものはありませんでしたが、よくわからないけど収穫ロボットを作り始めるということは避けることができました。これだけでも数百万、数千万円の得だったと思います。(作れば売れたという未来も当然あったと思いますが)
この活動の結果から「そもそも今の施設や栽培方法に合わせてロボットを作るという考えは間違っているのでは?」という疑問が生まれ、それについて深掘りしていくことになったのでした。
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