ハワイの恋が終わり苦しみの先に、悟りへの道が開けた 51
第七章 51 起ることが起っただけ
起こった問題に理由はいらない。起こってしまった事柄を対処する、始末する、自分が悪かったら謝る、終わらせる。時間が戻せないのに停滞している理由は無い。
私の場合は感情に巻き込まれて、考えに乗っ取られて自分では本質を見ることができなくなった。同調してくれる友人がいたから、吐き出した時には安らぎが少し訪れる。が、間もなく苦しみが、心の傷の痛みが、彼を悪者にした分、自分にそれがおし寄せた。それを何十人も繰り返したから、その感情が増幅していく、その負のエネルギーが大きくなっていく。
すぐに、できるだけ早く彼も彼が起こした失敗も忘れるべきだった。許すというのは綺麗事、そんなことは無理。後で知ったテクニックの、感情を味わうなんてできなかった。執着が私を惑わし狂わせた。
例えばこういう経過だ
ひろ子さん、明日ランチ行かない?
「ごめーん、明日は行けないのよ。」
「そうなのね、また今度ね」
と言う会話があったとする。
頭の中で考えが湧き出てくる。
あれ、この前も断ってきたな。私のこと、何か怒っているのかな?
それとも。。。
そういえば、この前帰ってきた時に、私だけお土産をくれなかったみたい。ここのところ私を大事にしていないなあ。行けない理由も言わないな。
私に魅力が無いのかな?私のことを軽んじている。もう誘うのをやめよう。
と、ひろ子さんを疑ったり、自分を卑下したり様々な事実では無い負の考えが生まれる。それは、今まで生きてきた過去の経験や記憶からだったり、もっと深くのDNAに入り込んだ人類が生き抜くための叡智だったり凡智だったり。
過去の出来事の中から、ひとかけらのストーリーを繋ぎ合わせて、思い出す。それがいらない行為。起こった事実だけを認識して、その出来事に対しての処理をする。
この場合、他の友人に声をかけてみれば良いし、ランチを友人と食べると言う行為を変更しても良い。 大好きなドラマを見ながらのテイクアウトランチも楽しいのだ。
私は誕生日の朝に、クリスが花屋で頼んでくれた大きな花束が家に届く。ありがとうの気持ちを込めた、最後のプレゼントを口ずさみながら家にある一番大きな花瓶に生ける。立派な花束の理由は、私がクリスにしてあげた3年半のお世話と、楽しい思い出のお礼だ。
これが私が描いていたストーリーだった。
前日の夜に、スーパーマーケットで買ったバラの花束と、25ドルのギフトサティフィケートをよこした。そこで、りさの価値はこんなものだと思っているのか、と心を傷つけられた。
実際は、それほど深い意味で、それらをクリスが選んだわけではない。
(あー、りさの誕生日が来てしまう。時子もいるのに、やらなきゃいけない。花束が欲しいと言っていた、買わなくちゃ。時間が無い。スーパーに行けばあるだろう。あれ、この花束じゃあ少し足りないかな?商品券もつけておこう。25ドルで良いかな)
クリスは新しい彼女が日本から来ていた上に、教会の行事も重なって、すごく忙しい時にりさの誕生日があった。
私はそれを受け取った後に、
けっ、なんてちゃちな花束なの!そのうえ25ドルの商品券とかあり得ない。ウケるー!あー価値観の違うやつと別れて、本当に良かったよかった!おわり!終わり!!
このように笑って終わらせておけば良かった。その事実は、それ以上でも以下でもない。
その時は確かにそうだった。悪夢は後で膨らんでいった。友人に話しているうちに、ますますクリスの行為が許せなくなっていったのだ。すると、憎しみに巻き込まれていった。
楽に生きるには、起こったことだけを受け止めて、対処する。それに理由付けはいらない。
小鳥が、明日のえさの分まで心配しないように。お腹が空いたら食べる。お腹がいっぱいになったら、食べるのをやめる。ただそれだけ。