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のさりごと

あとひと月と半分で
もう今年が終わるそうだ。
毎年稲刈りあとの
息つく間もない疾走感が増している気がする。
天体の関係もあるかもしれないけれど、
ジャネーの法則?
ああ、これはもしかしたら老いのせいかもしれない。
と、ようやっと思い当たった。

40代前半から加速度が増している気がするし、
もはや稲刈りから師走がはじまっている気がするし、
疲労困憊のまま
なんだか迂遠極まる日々を、
田に集まって下さるみなさんに
尻を叩かれている感じ。
鷹揚とした人になりたい。

11月が終わってしまう前に
すこしだけ
今年の振り返りをするならば、
わたしは昨年のわたしとは
完全に違っている、
と実感するところがある。
老いももちろんあるのだが、
(ええ、ええ。肯定)

植物を愛でて
癒されるということを
覚えた。

歳を重ねることは
退嬰的なことばかりではないのだ。
と、なにか一筋の光が差した感じ。


畑仕事は好きで
野菜を育てるのは
20年程前の東京時代からやってはいたのだけれど、
たべるものにしか興味がなかった。
更にいうと当時同居していた友人が、
花時間というお花の雑誌をメインに
活躍されているカメラマンの
アシスタントをしていたということもあって、
自宅には撮影で使われた
珍しい花や美しい花が
活けられていたのだけれど、
当時は全く食指が動かなかったのである。

13年前の移住後すぐ、
集落の人に伴われて
ローズガーデンに行った時は、
「おばちゃんって薔薇すきだよね」
(めっちゃ失礼)
とか思っていたのに、
今年の初夏にはローズガーデンに
ひとりで行った。
待ちきれずに行った。
更にいうと田植え前の忙しい時期に、
夫に内緒で行った。

40代も半ばを過ぎたので、
(あ、そういうこと?)と一瞬思ったのだが、
いやだって、お花好きな人は
老若男女いるわけだし。
わたしになかった、
しかも絶対ないと思っていた
新しい一面が
ここにきて立ち現れてきたのだ。

美しい薔薇たちに
うっとりとして、
何度も何度も
ローズガーデンを周り、
華やかで大きな薔薇は
わたしのような初心者には
手に負えない、
それならばと
オールドローズと
初心者におすすめだという
モッコウバラを購入した。
来年開花するだろうか。
楽しみすぎる。

それを皮切りに、
観葉植物に手を出し始めた。
里山で暮らしているので、
家の周りには
季節の移り変わりを知らせてくれる
草花があり、
更にいうと
以前ここに住んでいたおばあちゃんが
愛しんだであろう庭木や果樹がある。

だから
大地から切り離した植木を
家の中に買うのってどうなん
って思っていたし、
ましてや
温暖な気候の他の国から来た植物を
家の中で育てるってどうなん
って思っていた。

ところが、
ホームセンターに農業の資材を見に行くと
園芸コーナーが気になる。
観葉植物コーナーが気になる。
1時間とかいれてしまう。

福岡の田主丸や朝倉のあたりは
苗木屋さんが多いそうだ。
行橋にも種類が豊富な園芸屋さんがあるのだとか。
情報として知ってはいたが、
でも自分には縁のない場所だと思っていた。
ところが。
些末なことに追われる日々の合間に、
気がつくと1時間以上かけて
そこここへ向かっている。
そして恐ろしいことに
3時間も時間が経っているのだ。
ええ〜〜〜!楽しい!


ホクホクして苗木を持ち帰る。
夫には事後報告で、滔々とそれらの素晴らしさを語り、
ついには夫も伴って個人経営の園芸店に向かうようになり、
(夫は、なんでこんなに苦いのだと顔をしかめる程の
実がなるジューンベリーを買った。なぜだ)
晴れて夫公認の
園芸ラヴァーとなったのである。

とはいえ、本当に初心者も初心者。
ミクロフィアとエアプランツは
早速死なせてしまったし(ごめんなさい)
ぐんぐん育っている
ドラセナコンシンネと
エバーフレッシュ、フレボディウムと
ユーフォルビアホワイトゴーストには
一喜一憂している。
なんて愛しいのだろう!
冬を越せるだろうか。


球根ものにも手を出して、
チューリップは
アイスクリームとバルディビアという
豪華な品種を植えた。
来年会いたい。何卒お願いします。

なんだろう。
この変化は。
わたしが知らない
わたしの伸び代があった。

この家の花々がその美しさを教えてくれたのは
言うまでもない。
野菜の種を採る際に
花を咲かせているのだけれど、
その花々の美しさと力強さも
まちがいなく一役を買っている。
蜂たちの働きもそこに目を向けさせてくれた。


時間をかけてゆっくりと、
様々な種がわたしの中でも芽吹き、
いつしか花を咲かせ
わたしだけの森が育っていく。


理屈や頭で考えていることを
軽やかに飛び越えていく
この感じは、
おしなべて
のさりごとではないだろうか。



収穫祭が終わったら、
カフェを営む友人に
分けてもらった
ハーブの苗木を植えよう。


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