ロバート秋山のものまねTシャツ特許の弱点 ~Tシャツ特許ではYシャツは保護できない!?~
前の記事で、芸人・発明者のロバート秋山さんのものまねTシャツ特許(特許6366202)の概要を説明しました。
ところで、Tシャツで本人も実際の商品も実施していますが、ちなみにYシャツだとダメなのか気になりませんか?
別に、
TシャツでもYシャツでも、裏地に顔を仕込んでおけば、同じことはできそう
な気がしますよね。
特許の請求項(権利範囲)を改めて確認しましょうか。
冒頭に「プルオーバー型の上衣の前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像」という構成が出てきます。
プルオーバー型とは、なんぞや。ですが。
ファッション誌のOggiの記事に定義が書いてありました、
「プルオーバーとは、頭からすっぽりかぶるタイプの服のことです。前が開かないタイプの服ならどんな素材でもプルオーバーと呼ばれています。」とのことです。
そうすると、
前が何かしらの仕掛けて開く服は、プルオーバーではないと言えるでしょう。
即ち、Yシャツのようなボタンで前を開け閉め可能な服は、プルオーバー型にならず、おそらく特許の権利範囲外になります。
同様に、ジッパーで開閉可能なジャージとかも権利範囲外であることが濃厚でしょう。
私が、「おそらく」や「濃厚」という表現で断定的に権利範囲外としていないのは、まだ権利範囲内にある可能性があるからです。
最終的には、権利範囲は裁判の判定によりますが、特許の明細書中に特別に「プルオーバー型とは、○○も含む。」という一般の定義から異なる定義で用語を再定義していることがあります。
そうなると、その意味が参酌され、権利範囲が変化します。
特許出願の実施例で「プルオーバー型」に関する記載を確認すると、
Tシャツ以外にも「スウェット、セーター、タンクトップ」は明確に記載として出ますが、「Yシャツ」は出てこないですね。
ただし、「~等」で言葉が終わっているので、この「等」にYシャツがもしかしたら、含まれるのかもしれません。
※図も、ボタンとかジッパー形式の上衣の例がないです。
その辺りの明確に請求項の言葉に現れていないが、権利範囲を拡張して含んでいると解釈することを「均等論」という考え方で、まとめられています。
均等論を議論すると、長くなるので割愛しますが、今回のケースで言うと、限りなく権利範囲外のような気がします。
ぎりぎりの解釈で権利範囲に含まれるようにするのではなく、
「請求項の文言」、「実施例の説明」できっちり表現する
ことが大事です。
秋山さんが身近にいたら、アドバイスしたいですね!
正直、この特許の請求項の「プルオーバー型」という限定は無くても、特許査定になる気がします。こういう無駄な文言を的確に見破るためにも、特許スキルというものは色んな人が身に着ける必要があるのかなと思います。
折角の画期的なコントネタからの事業化なので、こういうのを保護して特許の可能性をより広くしたいと思う次第です!
※読んでいたら連絡を!もしくは、知人の方が、連絡して頂ければと!